液体石鹸
ブックマークして下さった方がお一人様いらっしゃいました!
ありがとうございます!
これでブックマーク6つですね〜。
いよいよお待ちかねの石鹸だ!自然界で手に入る素朴な材料だけの、正真正銘の手作り石鹸だ!
ただね、この先の手順を見て本当にやってみようなんて無謀な挑戦はやめて欲しい。
はっきり言っておく。この先は、一応は俺が納得した手順になっていて、それなりの根拠もある。但し俺自身が実験した事は無い。やるなとは言わんが、やった時に何が起こるかはわからん!何が起きても自分で対処できるだけの実力を身に付けてから試してくれ。
ああ、出来るつもりになっただけっていう中二病患者は論外だぞ。十代の少年少女は迷わず大人に相談してくれ。学校の理科の先生に相談したら喜んでくれるんじゃないかな。
一体何がそんなにヤバイのか?油はその辺のフツーの奴なんだけどさ、そこに混ぜるのは劇薬だ。1滴でも目に入ったら失明する。肌に付いたら皮膚が溶ける。うぎゃ~!冗談でも誇張でもなくてね、メーカーが発行してる注意書きに明記されてるんだよ。本職の薬剤師なんかが参照するヤツ。いやマジで。
もっと穏やかな薬品、例えば重曹なんかで作れないか?俺も探してみたよ。でもね、やっと見つけたと思った記事は既に削除されていた。おいおい… 化学反応の線から調べるとね、重曹でも出来なくはないけど油の方に前処理が必要で、その方法がわからない。こりゃ諦めた方がいいな、というのが俺の結論である。
仕方がない。その劇薬を使おう。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムだ。通称は苛性曹達と苛性加里。水酸化ナトリウムの方はお馴染だよね。中学化学から繰り返し出てきたアレ。色~んな化学反応に顔を出してくる、極めて基本的だが応用範囲も広い薬品だ。水酸化カリウムも性質は似たようなもんだ。
現代日本で石鹸を手作りしようと思ったら、普通はその水酸化ナトリウムを買う所から始める。しかし石鹸の無い文明レベルの異世界では、こんな薬品は薬種問屋でも扱ってないだろう。転移者が石鹸を発明したくなったら、水酸化ナトリウムを作る所から始めなきゃならない。
実はね、やり方はあるんだ。灰を使う。あれ?前回、灰は駄目って言ってなかった?という突っ込みが聞こえてきそうだけどね、まぁもうちょっと待ってくれ。
化学薬品の名前が並んで、もう目を白黒させてるかな?こんなもんは序の口だよ。ここからが化学の授業だ。
通常、草や木の灰はカリウムを多く含む。ナトリウムじゃないのが残念だけどな。そこんとこは次回って事にして、まずは草木灰から水酸化カリウムを取り出す事を考えよう。
草木灰は、その重さの10%~30%程度がカリウムらしい。これを水に溶かして、燃え残りの炭などの浮遊物を除き、沈殿物も除いた上澄液が灰汁だ。その主成分は炭酸カリウムである。
そう、普通の草木灰に含まれるのは炭酸カリウムだ。残念ながら水酸化カリウムじゃない。このままではアルカリの強さが足りない。
そこでだ、その炭酸カリウムを水酸化カリウムにしたい。その為に石灰水を混ぜる。石灰水は水酸化カルシウムの水溶液だから、灰汁の中の炭酸イオンが石灰水のカルシウムイオンと結び付いて炭酸カルシウムとなる。炭酸カルシウムは水に溶けないので沈殿する。このとき水に溶けているのが水酸化カリウムだ。
ここから沈殿物を濾過すれば水酸化カリウム水溶液を得る。濾過するには濾紙が必要で、これは紙が無いと作れないなあ。羊皮紙しか無い異世界で濾過は難しいかな。仕方ない、静かに置いて底に沈めてから上澄液を取って煮詰めるかな。あんまり煮詰めたくないんだがなぁ、沸騰した拍子に飛沫が飛びそうだから。
これで水酸化カリウムが手に入る。不純物については目を瞑ろう。
次の課題は、その石灰水か。石灰水は酸化カルシウムを水に溶かせばいい。酸化カルシウムの通称は生石灰だ。生石灰の作り方は2つある。石灰岩を砕いて焼くか、貝殻を焼くか。
突然だけど鍾乳洞を知ってるよね。鍾乳洞ってのは石灰岩が雨や地下水で溶けて洞窟になったものだ。鍾乳洞なんか世界中にある。つまり石灰岩というのはありふれてる。異世界でも石灰岩が見つかる可能性は高い。そしたら掘り出すだけで大量に入手できる。石灰岩というのは炭酸カルシウムの塊だ。
生物素材に拘るなら、貝殻や卵の殻でいい。珊瑚でもいいんだけどさ、勿体無いもんな。こういった素材の主成分が炭酸カルシウムだ。実際、貝殻を焼いて作った奴は貝殻石灰と言う名前で売られている。
炭酸カルシウムは高温で熱分解する。炭酸ガスが抜けて、酸化カルシウムが残るんだ。その為の温度は最低でも900℃くらい。
そんな高温を作るには、炎の中に空気を送り込む。小規模にやるなら火吹竹とか鞴とかを使う。鞴は古今東西どこにでも類似技術があったみたいだから、異世界にもきっとあるだろう。
大規模にやるなら窯を築いて構造を工夫し、自動的に空気を吸い込むようにする。こういう、石灰を焼くための窯を石灰窯と言う。
ところで、炭酸カルシウムが熱分解するなら炭酸カリウムも熱分解するんじゃないか、と思うでしょ?俺もそう思ったさ。調べてみた。溶けるほど高温にしても、炭酸カリウムは炭酸カリウムなんだそうだ。残念。
さて、やっと水酸化カリウムが出来たな。ここから先の手順は基本的な石鹸の作り方と一緒だ。要するに油脂と強アルカリ、今回は水酸化カリウムを混ぜて加熱する。ただ、細かいノウハウもあるからね、そこんとこは調べてくれ。
しかしこれはねぇ… 絵面を考えるとかなりヤバい。大鍋に怪しげな薬を入れて火に掛け、大きなしゃもじで何時間も混ぜ続ける。油脂として安い獣脂でも使おうものなら、とんでもない臭いが立ち込める。まさに魔女の秘薬作りだ。
という訳で、草木の灰と、石や貝殻の灰。灰と灰を混ぜた物を使うんだから、一応、灰を使うんだと言っても嘘ではないよね。油と灰を混ぜて作るっていう古文書の記述とは矛盾しないな。うん。昔の人もこうやって作ったのだろうか。
ちなみに油脂が石鹸になる化学反応を鹸化と呼ぶ。それと、油と脂の違いはわかるかな?常温で液体なのが油で、固体なのが脂だ。
こうして作った石鹸はカリ石鹸と呼ばれる。カリウムを使ってるからカリ石鹸なんだけど、カリ石鹸は水分との親和性が高過ぎるとかで、水分を分離させるのが難しいんだ。だからこのまま使う。液体石鹸だな。
しかしこの液体石鹸はちょっと問題がある。不純物がそのまま残ってしまうんだ。石鹸の主な不純物は未反応の油脂と水酸化カリウム、そして副産物のグリセリンになるかな。
グリセリンは保湿剤として有名なアレだ。無害で、口に入れても大丈夫。仄かに甘い。甘味料として使われる事もある。
油脂と水酸化カリウムは… どうしようもないな。時間が解決する事を祈ろう。そのまま放置、いや熟成と言った方がカッコいいよね。およそ数週間くらいで鹸化が完了するようだ。
未反応の水酸化カリウムについては神経質になってくれ。最初に書いた通り、これは劇薬だ。こんなものが残ってる石鹸で手なんか洗ってみろ、最悪、手の皮が溶ける。水酸化カリウムが肌に付いたら多量の石鹸と水で洗い流せ、という指示がメーカーの注意書きだ。うん、その石鹸が危ないんだってば!困ったもんだ…
2020/09/30
> 草木灰から水酸化カリウムを取り出す
石灰を混ぜないで草木灰のままでも、石鹸を作れそうです。複数のテレビ番組で実際に作って見せていました。
感想欄でも御指摘をいただきました。ありがとうございました!
詳細は別ページを参照↓
異世界化学工業・石鹸はチートの夢を見るか
https://ncode.syosetu.com/n1755ei/28/
それともう一つ。
次話の固形石鹸の話も合わせて、強アルカリの危険性を不自然なほど強調しています。
これはなろう系の主な読者層を考慮した結果です。
ヤバい事件を起こした変な奴の趣味がマンガやアニメだったってんでマスコミが集中砲火を浴びせた結果、マンガ文化が存続の危機に陥るという事例が過去に複数回ありまして。
いやマジで、冗談や誇張じゃないんですよ…
興味のある方は調べてみて下さい。
という訳で、万が一にもそんな事件が起きないよう、あるいは予防線を張る為に、バカみたいに危険性を強調しています。
御理解をお願いします。




