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【番外編】“社交界の魔性の女”と呼ばれた令嬢  作者: かがみゆえ


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【番外編】8.“社交界の魔性の女”と呼ばれた令嬢

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「……無い。無いわ……」


 授業が終わり、エククレム子爵邸に帰ってきたアナベルはあるものを探していた。


「どうしたんです、アナベル様?」


「……ちょっとね」


「良ければ、お手伝いしますよ」


 探し物をしているアナベルに声を掛けるメイド。


「ありがとう。それじゃあ、この中にハネスト男爵家からの求婚状がないか探してくれる?」


「分かりました! ………って、えぇっ!? あ、アナベル様、あんなに嫌がっていたのに遂に婚約者を探す気になったんですね……」


 メイドは驚きながらも涙目になった。


「そうなのよ。それでハネスト男爵家からの求婚状を探してるんだけど……」


「あ、お相手は既に決まってるんですね。てっきり条件を絞っているのかと。そうだ、求婚状リストがありますがご覧になりますか?」


「求婚状リスト! 盲点だったわ」


「求婚状リストは旦那様の執務室に保管してあるので、今すぐご覧になれるのは私が個人的にメモしたものになるんですけど……」


「構わないわ。見せてくれる?」


「こちらです」


 メイドから求婚状のメモを受け取り、確認するアナベル。


「………」


 求婚状の中にハネスト男爵家の名前はなかった。


 つまり、マルクはアナベルへ求婚状を送っていないということになる。


「………」


「……大丈夫ですか、アナベル様?」


 アナベルを心配し、声を掛けるメイド。


「……私とは結婚したくないのかしら」


「え?」


「こうしちゃいられないわ! お父様! お父様ーっ!」


「アナベル様!?」


 貴族の娘ということも忘れて、エククレム子爵邸内を走るアナベルだった。





「……アナベル。今、なんと言った?」


「ですから! 結婚したい相手が見付かりました!」


「………」


 執務室で書類に目を通していたエククレム子爵にアナベルは許可も得ずに話を切り出した。


 興奮してかアナベルは早口で喋るので、エククレム子爵は殆ど内容が聞き取れなかった。


「待て待て。勢いだけで語るんじゃない。分かりやすく話しなさい」


「アナベルはハネスト男爵家のマルク様と結婚したいです」


「うむ、分かりやすいな」


 書類から顔を上げ、アナベルの話を聞くことにしたエククレム子爵。


「お前が結婚したい相手を見つけてくれて嬉しいぞ。しかし、よりによってハネスト男爵家か……」


「……ダメですか?」


 難色を示すエククレム子爵に、不安になるアナベル。


「ダメじゃないさ。ハネスト男爵家は古い歴史を持つ。人柄も評判も良い。だが……」


「なんです?」


「……こんなことを言いたくないが、ハネスト男爵家は容姿に恵まれない一族だ。嫡男のマルクはハネスト男爵が40を過ぎてやっと授かった一人息子だ」


「それが何か?」


 子どもを授かる年齢は誰にも分からない。


 様々な理由で貴族の晩婚だって珍しいことじゃない。


「私がハネスト男爵家について話すのは簡単だが、自分が嫁ぎたい家について自分でも調べなさい」


「分かりました」


「アナベル。一つ確認なんだが……」


「なんでしょう?」


「マルク殿のことをその……慕っているのか?」


「はい!」


 笑顔で肯定するアナベル。


「そうか」


 そんなアナベルを見て、微笑むエククレム子爵。


 エククレム子爵は容姿が整い過ぎたせいで令息たちから下心を向けられ、婚約者を作ることを嫌がっていたアナベルを知っているので喜ばしい変化だった。


「お父様! 私がハネスト男爵家についてちゃんと調べて、それでもマルク様と結婚したいと思ったらお願いがあります!」


「なんだ?」


 アナベルはエククレム子爵にあるお願いをするのだった。


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