【番外編】6.“社交界の魔性の女”と呼ばれた令嬢
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その日の夜。
エククレム子爵邸で両親と使用人たちから祝ってもらい、素敵な誕生日を過ごしたアナベル。
学園から持ち帰った誕生日プレゼントにプラスして、朝と比べてエククレム子爵邸へ届けられた誕生日プレゼントの数は増えていた。
誕生日プレゼントの量を見て、アナベルはエククレム子爵が誕生日パーティーを企てなくて良かったと安堵した。
「アナベル様ってヒマワリ、お好きでしたっけ?」
「花は好きよ。このヒマワリは枯らしたくないの」
「なら、私に任せてください。持ち込んだ花をドライフラワーにしてくれるお店があるんです」
「ほんと?」
「はい。明日、お店に行ってみますね!」
「お願いね」
自室でメイドとの会話により、マルクから貰ったヒマワリはドライフラワーにすることが決まった。
「明日、お礼を言わないとね」
花瓶に飾られたヒマワリを見て、アナベルは微笑むのだった。
翌日。
「………」
朝、登校したらマルクにお礼を言おうとしていたアナベルだったが、マルクは見当たらなかった。
クラスメートなので流石に授業中は姿を見たが、休み時間になるとマルクは教室からいなくなっていた。
(何処にいるのかしら?)
昼休みになり、マルクを探すアナベル。
マルクはアナベルが思っていたよりも早く見付かった。
「おい、まん丸。これ、運んでおけよ」
「掃除もなー」
令息たちに何かを押し付けられるマルク。
「分かりました」
マルクは嫌な顔せずに承諾した。
「ふー」
令息たちの姿が見えなくなると、マルクは一息つく。
「それはなにかしら?」
「っ!?」
ひょっこりと現れたアナベルにびくつくマルク。
「え、エククレム子爵令嬢っ!?」
「ごきげんよう。それ、クラスの提出物よね? ハネスト男爵令息の仕事ではなかったはずだけど。それに掃除って一体何処の?」
「み、見てたんですか。お、お恥ずかしい……」
「質問に答えてくれる?」
「え、エククレム子爵令嬢の言う通り、これは提出物です。しょ、職員室まで運ぶように頼まれました。そ、掃除もです」
「押し付けられたってわけね」
「いつものことなので」
「はぁ?」
さらりととんでもないことを言うマルク。
「いつものこと? ハネスト男爵令息がいつも教室にいないのって……」
「あ、僕は良かれと思ってやってることなので……」
「立場が弱い男爵令息だからって言われたことを全部引き受けなくて良いのよ。あと、まん丸って?」
「えーと……その、僕の名前がマルクなので……」
困った顔をして答えるマルク。
マルクを変なあだ名で呼ぶ令息たちに呆れてしまうアナベル。
「……誰かがやらなくちゃいけないなら僕で良いんです」
「え?」
「こ、こう見えて身体を動かすのは好きなんです。こ、こうやって頼まれ事をしてると、学園のことを色々と知れるので……」
マルクは仕事を押し付けられるのを嫌だとは思っていないようだ。
「変わってるわね」
「あはは……。あ、それより、え、エククレム子爵令嬢はどうしてこんなところにいるんですか?」
「ハネスト男爵令息に昨日のお礼が言いたくて」
「へ?」
「昨日は素敵なヒマワリをありがとう。メイドと相談して、ドライフラワーにすることにしたわ」
「……えぇっ!?」
何故か驚くマルク。
「ど、ドライフラワーってあのヒマワリ、保存するんですか!?」
「えぇ。ダメだった?」
「だっ、ダメじゃないです!」
「それなら良かった。そのことを伝えたくてあなたを探してたの。時間を取らせてごめんなさいね」
「いえっ、滅相もありません!」
「今日中に伝えられて良かった。あ、良かったら一緒に運びましょうか?」
「だ、大丈夫ですっ。お気持ちだけ受け取っておきます」
「そう? それではまた教室で」
「はい!」
マルクとの会話を終えたアナベルはその場を去ったのだった。
それからというもの、アナベルはマルクを目で追うようになった。
マルクが教室にいないので、アナベルは以前より校内を歩く頻度が増えた。
マルクを見掛けると忙しそうに何かをしていて、主に荷物運びが多かった。
アナベルがマルクのことで分かったのは、性格は控えめで超がつくほどお人好しということ。
自分とは関係ない仕事を押し付けられるはずなのに、やはり嫌な顔をさせずにこなすマルク。
マルクは損得で行動していなかった。
アナベルが声を掛けると、毎回顔を真っ赤にして驚くマルク。
相変わらず吃りながら話すが、マルクは少しずつ吃らずにアナベルと会話出来るようになった。
関わりが増えてもマルクからは下心を感じず、アナベルには居心地が良かった。
アナベルが学園で過ごす中で、たった数分の平穏。
しかし、その平穏が崩れてしまう日がやって来るのだった。
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