【番外編】2.“社交界の魔性の女”と呼ばれた令嬢
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誕生日。それは人が生まれた日で、毎年巡ってくる記念日である。
「うわぁ……」
本日はアナベルの誕生日だった。
爵位が低い貴族では子どもの誕生日パーティーを開く家は少なく、エククレム子爵家もアナベルの誕生日パーティーを開くことはなかった。
エククレム夫妻としては愛娘であるアナベルの誕生日パーティーを開きたかったが、小規模で招待出来る人数は限られており、招待出来なかった家から顰蹙を買うのは目に見えていたので断念したのだ。
そのため、毎年アナベルの誕生日当日にはアナベルの実家であるエククレム子爵邸に令息たちから高級な誕生日プレゼントが大量に届くのだが、それは学園でも変わらなかった。
アナベルの机の上には山積みになった誕生日プレゼントがあった。
「これじゃあ、授業が受けられないわ」
アナベルは登校したばかりだが、エククレム子爵邸へ帰りたくなった。
「見てよ、あれ」
「なぁに、自慢かしら?」
アナベルが山積みの誕生日プレゼントをどうしようかと考えていると、クスクスと笑う令嬢たち。
「アナベル嬢! 誕生日おめでとう! これ、受け取ってくれ!」
「エククレム子爵令嬢! これはうちの山で採取した原石をネックレスにしたんだ!」
アナベルを見付けると、誕生日プレゼントを片手に声を掛けてくる令息たち。
「………」
アナベルへ直接渡しに来る令息も現れたので、誕生日プレゼントの数は増える一方だ。
「よいしょ」
「アナベル嬢?」
山積みの誕生日プレゼントが乗ったまま、机を持ち上げるアナベル。
何をするのかと見守る生徒たち。
アナベルは教室の端に机を運んだ。
そして、
ザーッ!
「「「!?」」」
机を傾けて山積みのプレゼントを全て床へ落とすアナベル。
「アナベル嬢!?」
「ちょっと! 一体何をしているの!?」
「非常識よ!」
アナベルの行動を非難する令嬢たち。
「何故?」
「えっ?」
「誕生日プレゼントならエククレム子爵邸へ届ければ良いでしょう? こうやって机の上に置かれたら授業を受けられないし、持ち帰るのが大変だというのがどうして分からないのかしら?」
「だからって落とすことないでしょう!」
「そうよそうよ!」
「聞こえなかったかしら? このままでは授業の妨げになるの。何故、配慮しない方が贈った誕生日プレゼントを私が丁重に扱う必要があるの?」
「っ」
「プレゼントの送り主はあなたをお祝いしたくて贈ったのよ!?」
「それを無下にするなんて最低よ!」
「ご忠告ありがとう」
令嬢たちへアナベルは微笑む。
ここで『欲しいならあげるわよ』や『女の嫉妬は醜いわよ』とでも返せれば、悪評通りなのだがアナベルの頭にはなかった。
床の上へ落とした時に誕生日プレゼントの中に割れ物などが無いことは音で分かった。
割れ物が無いのが分かれば、あとで破片を踏んで怪我をしたなどの難癖をつけられることはない。
山積みの誕生日プレゼントはアナベルに贈られた物だからアナベルがどう扱っても自由だ。
(こうしておけば、学園で誕生日プレゼントを渡して来る方はいないでしょう)
誕生日プレゼントを雑に扱われるのが嫌ならエククレム子爵邸へ届ければ良い話なのだ。
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