【番外編】“社交界の魔性の女”と呼ばれた令嬢
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平凡な容姿をしたエククレム子爵夫婦に美しい容姿をした娘が産まれた。
娘はアナベルと名付けられ、大切に育てられた。
似てない子どもが産まれると庶子と疑われるところだが、アナベルは両親の顔のパーツの良いとこ取りをしたようで見比べたらどちらにも似ているのが分かり、疑われることはなかった。
政略結婚で公認愛人を作ることが多い貴族の中で、アナベルの両親の仲は良く、そんな両親の元で育ったアナベルはいつか自分も嫁いだら夫と仲睦まじい関係を築けたら良いなと思っていた。
「アナベル嬢! 俺と踊ってください!」
「いやいや、俺と踊ろう!」
「………」
幼い頃から異性に声を掛けられることが多く、成長するにつれアナベルの周りには色んな令息が集まるようになった。
アナベルの美貌に酔いしれ、婚約者でもないのに高価な贈り物をする令息たち。
「贈り物は止めてちょうだい」
アナベルは宝石もドレスも興味がなく、高価な贈り物には『返品不可』と手紙が添えられている。
『返品不可』なので、高価な贈り物は自室にどんどん溜まっていく。
「なんなのよ、もう!」
周りは美しいアナベルを放っておいてくれない。
アナベルが安息出来るのは、実家のエククレム子爵邸だけだった。
しかし、
「またなの……」
アナベルが学園へ通うようになってからは直接婚約を申し込まれるだけではなく、エククレム子爵家へ求婚状が届く数が倍増した。
中でも、カムグロス侯爵令息は婚約を断っても何度も求婚してきた。
「一夜を共にすればオレの素晴らしさが分かるさ!」
しまいには身体の関係を迫ってくる勢いで、アナベルは上手く回避する。
(いくら顔が良くて爵位が高い令息でも絶対に結婚なんて嫌!)
アナベルはカムグロス侯爵を嫌悪していた。
「アナベル。今までお前の好きにさせてきたが、これではもう婚約者を作るしかないぞ」
「分かってます。でも、この中から選ぶのは嫌です」
エククレム子爵夫妻はアナベルに政略結婚を望まなかった。
アナベルが慕う令息を見付けたら、エククレム子爵は動こうとしていたが、アナベルが美しく育ち過ぎて求婚状の数がありえない量になったので悠長にしていられなくなってしまったのだ。
エククレム子爵に婚約者を作るように促されるが、アナベルの美貌にしか興味がない令息ばかりでアナベルはうんざりしていた。
「アナベル。最近、お前の悪評が広まっているんだ」
「知ってます。私は男をとっかえひっかえしてるんでしょう? “社交界の魔性の女”だなんて……ふふっ、随分な呼び名をつけますね」
「笑ってる場合じゃないだろう……」
“社交界の魔性の女”と不名誉な呼び名をつけられたにも関わらず、おかしそうに笑うアナベルに呆れるエククレム子爵。
「あら、私は訂正せずにこのままで良いですよ?」
「なに?」
「だって、その呼び名を知ったら寄ってくる令息が減るでしょう?」
「お前って子は……」
アナベルは自分の平穏のために、“社交界の魔性の女”でいようと考える。
男をとっかえひっかえしてる。
一度寝た男とは二度と寝ない。
貰った贈り物で気に入らないものは踏み潰す。
アナベルには全く覚えがない状況が、アナベルの評判になっていく。
誰もアナベル・エククレム子爵令嬢という人柄を見ていない。
その事実に、アナベルはショックを受けることなく楽しむのだった。
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