【番外編】10.“社交界の魔性の女”と呼ばれた令嬢
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“社交界の魔性の女”、アナベル・エククレムが婚約したというのは学園だけではなく社交界で瞬く間に広まった。
美しい容姿で令息を選び放題の中、アナベルの婚約者になったのは男爵令息で醜男となれば、話題にならないはずがなかった。
「あ、あの……え、エククレム子爵令嬢……」
アナベルからの求婚を受け入れまいと頑張ったマルクだが、結局アナベルの猛アタックに抗えずに婚約することになった。
マルクはアナベルのことを憧れだと言っていたが実際は惚れていて、お互いの父親が許可しているので何の障害もなく、婚約が成立するのは時間の問題だったのだ。
マルクの婚約が成立したことをハネスト男爵は泣いて喜び、エククレム子爵夫人も『アナベルが選んだ方なら大丈夫ね!』と祝福してくれた。
マルクとの婚約を公表すると、アナベルは学園の何処にいてもマルクの側から離れず一緒にいた。
「………」
「え、エククレム子爵令嬢……?」
聞こえてるはずなのに返事をしないアナベル。
分かりやすく、ぷいっと顔を背けていた。
「……あ、アナベル様……」
「様はいらない」
「あ、ああっ、あなっ、アナベべ、アナベルっ」
「なぁに、マルク?」
「ちち、近いですっ」
「あら、良いじゃない」
「ぎゃっ」
マルクに近いと言われると、更に距離を詰めるアナベル。
アナベルは顔を真っ赤にして慌てるマルクを見て楽しんでいた。
「「「………」」」
二人の様子を見ていた生徒たちは“一体何を見せられているんだ”状態だった。
「アナベル嬢、どうしてまん丸なんかと……」
「俺の方が顔も家柄も良いのに……」
「それなら俺だって……!」
納得がいかず悔しがる令息たち。
ずっと見下して、扱き使っていたマルクがアナベルと婚約したのだから無理もない。
「まさか本当にハネスト男爵令息と婚約するなんて……」
「こういうのはどうなるか分からないものですわね~」
「カムグロス侯爵令息とはどうなりますの?」
「それは私も気になったのですが、エククレム子爵令嬢が求婚状を送ったって話ですし」
「ああ、なるほど」
令嬢たちはアナベルがマルクと婚約したことよりも、アナベルへ求婚し続けていたカムグロス侯爵令息との関係が気になるようだ。
カムグロス侯爵令息とひと悶着あるかと思われたが、それはマルクが求婚状を送った場合の話だ。
今回はアナベルからマルクへ求婚状を送ったことにより、カムグロス侯爵令息だけではなくアナベルへ求婚状を送った他の令息たちも太刀打ち出来ずに抑止力になっていた。
令息たちからの『返品不可』とされていた高価な贈り物も、アナベルが婚約を理由にすべて返品したことで諦めるしかなかったのだ。
「フフフ」
「あ、アナベルさ……アナベル?」
アナベルは自分で婚約者を見付け成立させたことと、自室に溜まっていき邪魔だった高価な贈り物を清算できて清々しい気分だった。
「誰よりも幸せにするからね、マルク!」
「そ、それ、僕のセリフ!」
学園を卒業後、すぐに結婚したアナベルとマルク。
アナベルの誕生日パーティーと同様、子爵令嬢と男爵令息の結婚式では招待出来る人数は限られており、招待出来なかった家から顰蹙を買うのは目に見えていたので身内のみのこじんまりとした式になった。
「おめでとう、アナベル」
「しっかりやるんだぞ、マルク」
「おめでとうございまーす」
参列者はエククレム子爵夫妻、ハネスト男爵、エククレム子爵家の使用人たちという慎ましい結婚式だったが、アナベルとマルクは幸せでいっぱいだった。
豪華絢爛なウェディングドレスではなく、一般のウェディングドレスに身を包んだアナベルだったが幸せそうに笑う姿は誰よりも美しかった。
それから数ヶ月後。
「マルクマルク!」
「危ないっ。ど、どうしたの、アナベル!?」
父親から爵位を継承し、新たなハネスト男爵となり忙しい毎日を送るマルクに抱き付くアナベル。
「出来ちゃった」
「え、何が?」
「赤ちゃん」
「っ!?!?!!」
アナベルの妊娠が発覚するのだった。
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