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果ての畑でメシイモを  作者: 鰤金団
見紛うほどのイモの茎
7/8

誘う修道女 私も一緒に連れ出すの?

(そろそろ現実を見ましょう)

「うっさい、馬鹿。人でなしっ」

(はい、チートですので)

「そういう事じゃないわっ」

(あなたがチートを手に入れたという事は、チートはあなたの一部です。なので、チートを人でなしと罵る事は、結果として自身を人でなしと見なすという事になります)

 このチート、更に追い打ちをかけてきた。慈悲も無しとはこの事だ。

 私はあの後、部屋に逃げ帰り、のたうち回っていた。

 それが昨日の話。で、今は朝になって目が覚めた所でもう一回再発している最中。

 だってそうでしょう。周りが何にも言わないから、他の人にも見えているものだと思っていたし、聞こえているものだと思っていたのに、その実、私が一人で独り言で対話しているようにしか見られていなかっただなんて……。

「あーむり。もーむり。明日からと言わず、今日から外出ない。もう畑仕事もしないっ」

 私は全てを投げ出していた。

(それは止めるべきです)

「あん? なんでよ」

(やさぐれないでください。今、あなたが畑を投げ出すという事は、父親の寿命を縮める結果になりますよ)

「なんで父さんに迷惑がかかるのよ」

(この国の法に触れます。畑の隠匿、または収穫物の隠匿は農家に乗っての脱税と見なされます。加えて自身の体力以上の畑作業により、腰が限界を迎え、動けなくなります。食料を得られず、投獄されますね)

「ず、ずいぶんと嫌な未来を言うじゃない」

(特に、あの畑の場所から、特に悪質と見なされ、厳罰に処されるでしょう。この家の名義があなたの父親ですから)

「つまりは、父さんが私に指示して、隠れた場所に畑を作らせていたって思われるのね?」

「そうです。あの場所は、目的が無い者が訪れるような場所ではありませんから」

 そういえばその通りだ。はっ、まさか、百科事典はこの事態を見ていた!?

「は、図ったな、百科事典」

(いえ、あくまでメシイモが育つためにより良い場所を探した結果です。妙な勘繰りは止めてください。チートで身を滅ぼしますよ)

 今も人生変えられている感があるんだよなぁ……。良い悪いは分からないけれど。

「う~。あ~。ああっ」

 ガバッと起き上がる。色んな葛藤の末に私は決断したんだ。

(決めましたね)

「やっぱり良いように運ばれてる感じがするけど、父さんに迷惑はかけられないもの」

(続ける選択をした事は素晴らしいです。この決断は良い未来への一歩となりますよ)

「最初からそうなるって分かってたんじゃないの?」

(何度も繰り返しますが、現時点で存在している全てから無数の未来を見ているに過ぎません。先ほどの決断も、あなたの意思が諦めに土一粒でも多ければ未来は変わっていたのです。その土の一粒というのも、決めるあなたの加減次第です。結果、チートの言葉に従っているように感じているかもしれませんが、その過程で何度も抗う意思を見せています。それはつまり、あなたがチートに身を任せていないという事になります。これがあなた自身で未来を選んでいる決定的な証拠です)

 随分と念を押してくる。まあ、百科事典の言い分は何となく理解できる。

 私が水を飲みたいと思っても、体を動かさなければ飲めない。そんな感じで、体を、決定を下せるのは、チートでは無く私自身だという事だろう。

 周囲や百科事典の言葉は、最終的な決断をするための材料でしかないという事だ。

(理解してもらえましたか。では、今日も畑に向かいましょう)

「はいはい。でも、その前に食事ね」

 頭を掻きつつ、私は部屋を出た。

 食事を終え、畑に向かおうと家を出ると、何かが近づく音が。

 振り向いて確認する間も無く、私はそれに自由を奪われた。

「早まってはいけません」

 何の事か分からず、私に抱き着いてきた存在を確認する。二ルネッガ教の服だった。

「えっと、メイティアだったっけ?」

「はい。チートに悩める老若男女に救いの手を差し伸べる、二ルネッガ教のメイティアです」

「自己紹介が長い」

「では、あ~なたのともだちぃ~。メイティアですっ☆」

 なんか、村の子どもがやらない愛嬌のふりまき方をしだしたよ。

 村の外は未知の世界だわぁ~っと、逆に冷静になった。

 そんな落ち着いた眼差しで見つめていたからかな。彼女の顔が面白いくらい紅くなっていく。

「な、何か言ってください。いえ、好意的な誉め言葉以外は要りません。いえ、やっぱり触れないでーー」

彼女が話している途中だけど、じゃあどうすればいいの? と考えてすらいないけど、疑問に思った。

「えっと、じゃあ、畑行く?」

「はた……け?」

 予想外の言葉だったのだろう。キョトンとした表情で見上げる彼女が居た。

「それは、この世とお別れした後に行く場所をこの村風にした言い方ですか?」

「違う違う。なんで死んだら畑に行かないといけないのよ。私らは種なの?」

「え?」

 理解してもらえていない反応。和ますためにとぼけてみたのに、これは酷い。

「えっと、生前が農家なので、死後もその仕事で貢献するという事ではないのですか?」

「お堅いわね。でも、そっか。二ルネッガ教の死後感ってそんな感じだったわね。死後にチートを与えてくださった感謝を生前の仕事で返す、みたいなの」

「一般的にはそうですね。こちらでチートを活用出来なかった方は、あちらで存分に使って恩返しをするのです。死後にチートを使ってはいけないという事ではありませんよ」

「そこは気にしてないけどね。でも、ちょっと扱いに難のあるチートを貰う人も居るものね。その人は死後に救われる感じね」

「はい。死後に救われるというのは、二ルネッガ教の不徳の致すところではあるのですが……」

 現世でチートに悩んでいる人を救うために手を差し伸べる宗教だものね。

「で、話を戻すけど、本当に私の畑だから。隠語とか隠喩とかじゃないから」

「でもでも、そちらに家は無いですよね?」

「そうよ。あるのは、私が開墾した畑だけ。まあ、見た方が早いわ」

 ここで色々言っていてもしょうがないからと、追いかけてきなさいとばかりに一人で歩き出した。

「あ、あ、待ってくださ~い」

 疑ってはいるだろうけど、彼女は見送る事はせず、後を追いかけてきた。

 少し歩いて畑が見えてくると、背後から彼女の驚く声が聞こえてきた。

「わわ、本当に畑がありましたよ。怪しいですよ。おかしいですよ」

「おかしくないから。私が頑張って拓いたの。褒めていいわよ」

 結構一人で畑を作った事を自慢したかったりする。だって、本当に大変だったから。

 でも悲しいかな、現在の村での認識は廃棄場に足繫く通い、持ち帰る独り言強めの女。

 同世代もほとんどが村の外へ出稼ぎに行っているし、残っているのも仕事をしている。そこに行って「私、一人で開墾したんだ」などと言ってみようものなら、村社会でどんな立場になるか……。

 そんな事情もあって、こういう機会はちょっと嬉しい。

「凄いですねぇ。これ、何を育てているんですか?」

「何って、メシイモよ。今は新しい育て方を試している所なの」

「新しい? 今までとはどのような違いがあるんですか?」

「そりゃあ肥料を……って、教えちゃ駄目ね」

 彼女が自身の成果だと教会に言うような事は無いだろうけど、結果もまだなものの全てを明かしてはいけない。

 ニルネッカ教は、派遣された土地でのチート持ちの情報を収集し、本部に知らせる活動をしている。それは王国の方でも共有しているとかなんとか。

 各地域の状況を王国側が知る手段でもあるため、私の事が少しでも話題になり、有用そうだと思われたら全てを持っていかれるかもしれない。だから、つい話してしまいそうになったけれど、口を抑える必要があった。

「そうですね。まだ明かしてはもらえませんよね。技術の秘匿性がどれほど重要なのかは、チートを崇拝している組織の一員として十分理解しています」

 お友達だと思っていたのに酷い……。などと言われなくてよかった。いや、昨日の今日だし、出会った時の事があるから、私はまだ警戒しているんだけどね。

「あのあの、何か盛り上がってますよ」

 私が考え事をしている間に畑を覘いた彼女が驚いた様子で知らせてきた。

「それ、メシイモ。土から出てたら被せないといけないから、見回りが大切なんだよね」

「それが新しい育て方のコツなんですね」

「いや、それは普通のでも同じ。植えた後は陽の光は避けないと駄目だからね」

「では、最初から多めに土をかぶせておけば良いのでは?」

「それだと重さで育ちが悪くなるのよ」

「そういうものなんですね。植物は土の中に居て、水さえあれば大丈夫なんだと思っていましたよ」

「普段作っているメシイモは適当な土の中に入れておけば勝手に収穫出来るんだけどね。後で父さんの畑を見てみたら分かると思うけど」

「それは、とても成長が速くなっているという事ですか?」

「う~ん。そうなのかも。収穫出来る頃にはどれだけ育ってるのかも分からないわ」

 実際、自分が経験していた段階と違いすぎて、百科事典の言葉通りにやっているけれど、毎日、日に数回土をかける作業が必要になる状況の深さで良いのだろうかと疑問だ。

「そんな訳だから、あなたが止めるほど悲観してないのよ」

「確かに、ここまで頑張っているというのに、結果を見ずにいる訳はありませんよね」

 分かってくれたみたいで何よりだ。

「では話題を変えますが、ルイシアさんは何時頃お仕事を終わらせるんですか?」

 この修道女、私の仕事終わりを聞いて何するつもりだ?

 ここでうっかり早い時間を言ったりしたら「じゃあ、神様を知るために二ルネッガ教の教えを一から学びなおしましょう。そうしましょう」なんて事になったりするんじゃないでしょうね。

 軽はずみで物を言えないと、私は悩んだ。百科事典も、こんな時は勝手に何かしらの助言をすればいいものを、出てこない。

「は、畑仕事に終わりは無いのよ。朝の陽が出た時から陽が沈むまで、私達は日夜鍬を振り続けているのよ」

 こう言えば何かを目論んでいても引き下がるだろうと思った。

「農家の方はそれほど汗を流しているのですね」

 なんか、彼女が私を尊敬の眼差しで見始めた。止めて。収穫時期じゃなかったら、お昼の腹ごなしでちょっと畑を見たら、夕方まで昼寝する私をそんな目で見ないでっ。

 因みに、夕方にも畑の様子を確認するだけの簡単な仕事をやるだけだ。

「せっかくなので、明るい時間が空いていたら、村を一緒に歩きたいと思っていたのですが……」

 とても分かりやすく落ち込む様子を見せるメイティア。

 なんか、実は時間に余裕がありますよー。とか言いたくなる雰囲気だけど、善良な心を頑張って抑えた。

「あ、ですが、今は鍬を持ってないですよね?」

 思い出したように細かい所を突きだすメイティア。

「そんなの、言葉のあやよ。あや。植え終わっても鍬仕事してるとか無いし。他の仕事してるし」

 例をだそうとしたけれど、無意識に焦っていたのかすぐに出てこない。

「ほらほら、私は何の問題も無いから。さあ、あなただって役目があるんでしょ? 油売ってないで」

 私にかまってないで仕事しなさいと、楽をするために頑張る自分が言う。

 口元がにやけていないかちょっと心配だ。

「うう、そうですね。あ、お昼時は開いていますか?」

「まあ、休憩してる頃だからね」

「では、また来ます。絶対っ」

 これは約束になっているのだろうか? 私の空き時間を知って表情を明るくさせた彼女の目的は何なのか……。

 この日以降、何故か朝とかお昼に彼女は顔を出すようになった。

 そして話すのは、村での事や、自分の事。まるで自分を知ってもらいたいとばかりに話をしてくる。これに対して私は、共感出来る所は共感し、明かしても問題なさそうな過去を話して時間を過ごした。

 メイティアは、何時だって別れ際には名残り惜しそうな表情で帰って行った。

 そんな関係が二週間ほど続いたある日。

 いつも以上に上機嫌でやって来たメイティアが言う。

「ルイシアさん、お出かけしましょう。町に」

「町? 私達が?」

 急に何を提案するのか。町と言っても、徒歩ならどれほど歩くか。

 馬を歩かせて二、三時間。その距離を私達だけでとか、絶対に暗い夜道で一晩明かすことになる。私は宿賃なんて持ってないからね。

 なので、彼女の提案は私にとっては正気を疑うほどのものだった。

「そうです。お出かけと言っても、遊びに行くだけじゃないんですよ。ちゃんとお役目もあるんですから」

「いや、私には無いんだけど。だから、私が一緒に行っても邪魔じゃない?」

「そんな事ありませんっ!!」

 すっごく接近してくるなぁ。圧が凄い。

「お、おおぅ」

「それに、町までは村長さんも一緒に来てくれます。むしろ、村長さんの用事で行きます」

「村長の用事? あ~、町村会議かな」

 その内容は分からないけれど、村長は隣町の町長と月一くらいで会合を開いている。

 村の人間は、そのついでに村長におつかいを頼んでいる。おつかいと言っても、メシイモ買ってきてとか、そういうのじゃなくて、釘が欲しいとか、木材がどれだけ必要だとかの村の職人が使う素材や、忘れた頃にやってくる商人を待っていられないと、必要な食材の調達や運送の依頼を出しに行くんだ。

 それもこれも、町には組合という組織の支部があるから。

 組合とは、配達、採集、狩りという目的の分かれた三つの組織からなっている。

 配達は物を運ぶための役割を担っている。首都や町、村へと物から物を運ぶ重要な組織。

 商人が商品を運んだり、騎士団が護衛や護送したりするのとは違い、依頼をすれば手紙や贈り物をその土地まで運んでくれる存在だ。

 採集は生き物や植物の他に鉱石などのあらゆる物を取りに行く組織。

 他にも生息域に関する情報を集めたりもしている。

 狩りは、私達の暮らしの中で一番関わりが深い。騎士団は国に届け出を出した後にもなんやかんやがあって頼っても平気で数日経つらしいのだけど、ここは依頼を出したらすぐに人を出してくれる。自分達では対処出来ない危険な野生動物や犯罪者を捕まえる存在だ。

 腕っぷしの強さが重要になってくるため、この組織に所属している人の事を私達は荒くれと呼んでいる。

 王都じゃ、独立した拠点を持っているらしいけれど、地方じゃそんな土地も建物も用意できないため、一つに纏まっているそうだ。

 どこの窓口でも受け付けてくれて、適切な組合の窓口に通してくれるらしい。

 全て聞いた話で、私は頼った事が無いからこれ位しか知らない。

「村長のついでって言うのは分かったけど、メイティアは何をしに町に行くの?」

「私は、町の教会にお手紙を届けに行きます」

「直接届けに行くんだ。まあ、組合が村に無いから当然か」

「いえいえ。首都にある教会へのお手紙を町の教会に届けるんです。土地の情報を総括する教会がありまして、そこに地方教会の情報をまとめて首都の教会本部に送るんです。そうすると運送料金が節約出来るんです」

 国教なのにせこい事してるなぁ。いや、人から集めたお金を無駄無く使っているから賢いのか。

「じゃあ、二人ともちゃんとした役目がある訳ね。私が行ってもやる事無くて暇になるんだけど」

「そこは大丈夫ですよ。渡す物を渡したら後は自由です」

「いやいや。なんか、支部同士での話し合いとかがあるんじゃないの? 村長みたいに」

「あるとしても次に来る日の確認くらいですよ。おつかいで来た相手に重要な話なんてする訳無いじゃないですかぁ」

 本人が気にしないなら良いけど、言ってて何か引っかかったりしないんだろうか。

「そ、そうなのね。でも町かぁ。自分から行く事は無かったなぁ」

 私は父さんの腰が心配だったし、特に憧れとかも無かったから村から出る事が無かった。

 それに、村と違って町になるとお金が必要になる。物々交換をしなくなるので、お金を持っていない自分では侘しい思いしかしないと思っていた。

「じゃあ、これをきっかけに町に行ってみましょうよ。大丈夫です。私、教会からのお小遣いを今まで一度も使ってこなかったんで、お金の事なら心配ありませんよ」

 なんか今、要らない情報が入ってきた気がする。

(二ルネッガ教では、立場が上がると活動費が貰えます。その活動費の中には月に一度、修道女や見習い達に支給するお小遣いも含まれています。お金の使い方を学ぶだけではなく、自身の消費を学ぶためという名目ですね)

「消費を学ぶ、ねぇ……」

 聞いてもいないのに百科事典が詳細を教えてくれた。

「ああ、神様からのお言葉ですね。お小遣いはチートに悩む者を救うために使いなさいと教わりました。ある者は信頼されるためにと自身の身なりを整えるのに使います。またある者は相談者のために自身が出来る施しのために使いますね。皆、貰った月の間に使い切るよう努めますが、私は何かある時のために貯めていました」

「そうだったの。てっきり、独りぼっちだったのかとばかり」

「いえ、一人でしたよ。私が誘っても皆拒否するんです。休みの日はチートへの理解を深め、感謝の祈りを捧げなければならないって」

「まあ、そういう宗教だから、不思議じゃないわね。むしろなんであなたはそうしなかったの?」

「チート図鑑を読んで知識を増やしても、実際に与えられた人から話を聞いた方が早いじゃないですか。実際、どのようなチートがあるのかは授業で教えられているんです。後は人との交流ですよ」

 人付き合いの無い私はこの話を聞いて、耳に蓋をする物がないかと視線を走らせた。

 こんな人にグイグイ行けるような性格の人とは分かり合えない気がする。

「でも、実際にやろうとしてもうまくいかないんですよ。だって、本当にチートに悩みを抱えている人なんて、すぐに見つかるような行動はしないんですから。多くの人の悩みを解決しようとするほど、私は他の見習いとは違う行動をしていくので、自然と距離を置かれるようになっていたんです」

「そうなんだ。悩んだら教会へってやってるから、その違いかもね」

 彼女がぼっちな理由は分かった。いじめられていたとかの暗くて重い話だったらどうしようかと思っていたけれど、考え方の相違の結果であって、そういう闇っぽいのじゃなくて良かった。

「なので、友達と一緒にお出かけするのが夢なんです。一緒に行ってください」

 そう言われると断りづらい。でも、先立つものを持っていない。畑もほっとく訳にはいかないし……。

 困っていると、父さんがこっちに歩いていた。

「父さん、どうしたの? 腰やった?」

 歩いているからそれは無いだろうと思いつつ、聞いてみた。

「体は大丈夫だよ。それよりも、村長に頼まれごとをしてね。ルイシアに」

「え、私に?」

「そう、ルイシアに。まあ、メイティアさんから既に話は聞いていそうだけどね」

「それって、町に行くって話? 村長とメイティアが用事で出かけるから一緒に来てッていうのは聞いたよ」

「そうかい。じゃあ、そこにルイシアに市場調査も加えておくれ」

「しじょうちょうさ? それって何? 何するの?」

「町で評判のメシイモ料理を調べて欲しいそうだ。今後の布石にだとか」

 どうやら村長は、私のメシイモの可能性の先について考えているみたいだ。卸先とか、村での名物みたいなのの取っ掛かりを探しているのだろう。その先にある自身の結婚という目的に向かって。

「話は分かったけどさ、町ではお金が必要なんでしょ? 私、持ってないよ」

「そこは調査費という事で渡されたよ。報酬は町での経験でどうだろうかと言っていたよ。畑の面倒なら、心配しなくて大丈夫だよ」

 まあ、村ではお金を報酬でもらっても仕方ない。別に村の外で暮らす予定も無いし、その報酬で十分だった。

 隣で目を爛々と輝かせているメイティアも居るし、そろそろ答えを出さないと駄目そうだ。

「そこまで準備されてるなら、行かない理由は無いわね。父さん、畑、お願い出来る?」

「後で必要な事を教えておくれ。それと、そうは無い機会だし、楽しんでおいで」

「ありがとう、父さん。メイティアも、よろしくね」

「はい。しっかり楽しみますよ。やったー」

(やったー)

 ん? 今なんか、声が二重に聞こえたような……。

(気のせいでしょう)

「そっか。気のせいか」

 こうして、私の初と言える町歩きが決まった。


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