獣よりも怖い魔獣よりも厳しい村事情
出発当日。私は父さんと二人で待ち合わせ場所に向かっていた。
「父さん。なんだか恥ずかしいんだけど」
「いやいや。娘を任せるんだから、大切な事だよ」
父さんは昨日の夜から、村長に挨拶すると言い続け、付いてきていた。
私ももう一五歳だし、そんなのは要らないって言ったのに……。
「村の門に着いたけど、まだ来てないみたいだね」
門と言っても扉は無くて、周りに足止め程度の柵があるだけの場所。こんな辺鄙な場所を襲うほど犯罪者は暇じゃないだろうし、野生動物も森の方が住みやすいはず。
そんなだから、門番役は専門では無く、男衆の持ち回りだったりする。
父さんは腰の関係なのか、外への狩り以外では呼ばれていない。
「時間があるから、今のうちに注意しておくぞ」
真面目な口調。これは心して聞かないと。
「いいかい、ルイシア。町では声をかけてくる相手は信じちゃいけないよ。組合の職員から聞いたものだけ信じるんだ」
「お店の人にも話を聞こうと思ってたんだけど」
「村から来たなんて知られたら、良いように手持ちを搾り取られてしまう。だから、もしもどこから来たのかを答えてしまったら、絶対にその後に出された商品は買ってはいけないよ」
物を知らない人の足元を見るというやつだろう。今そんな事を言われたら、情報集めが怖くなる。
(最悪な選択をしそうな時には忠告しますよ)
「百科事典っ……」
呼んでもいないのに勝手に話し始めて、頼もしい事を言ってくれる。
でも、百科事典の能力が本当なら、全ての危険を避ける事だって可能なはず。
なんだか不思議と大丈夫な気がしてきた。
「父さん。百科事典が、チートが守ってくれるから大丈夫だよ」
私は安心させようと強気に言った。
「いや、チートを過信しすぎてもいけないのだけれど……」
まだ何か言いたそうだったけれど、馬の足音が近づいてきた。
「父さん、来たみたいだよ」
父さんの話を切り上げ、音が聞こえてくる方を見る。
村長が馬一頭を操り、やって来た。
「少し遅れてしまったな。すまないすまない」
私達の前で荷車を止め、村長が降りてきた。
「ねえ、メイティアは?」
一人足りないじゃないと、尋ねる。
「彼女なら、少し遅れてくるかな」
「ふ~ん」
怪しい。怪しさしか感じない。
彼女は、自分の貯金を全て使うと言ってまで私を誘ったんだ。そんな子が町での時間が減るというのに遅刻するだろうか?
荷車の中を見ると、布に包まった荷物が一つ。村長の先ほどの反応も僅かに不自然な感じがした。うん、間違いない。
「それはそうと、少し良いだろうか。村長」
「え、ああ。何だろうか?」
「ここじゃちょっと。ルイシア、すまないが、そこに居ておくれ」
「うん。分かったよ、父さん」
村長と父さんが肩なんか組んで二人仲良く離れていく。
二人は、私が生まれるよりも前からの知り合いだそうだ。
昔の事を頑なに話してくれない父さんだけど、若き日の村長に勧められてこの村に来た事だけは教えてくれた。今では、片や村長という立場なので、人前では接し方に遠慮があるけれど、二人きりの時は昔の関係に戻っているみたい。
あの穏やかな父さんが肩組をするほどなんて、どんな仲だったんだろうと、結構不思議だ。
「さて、待ってる間に済ませますか」
私は、ゆっくりと荷車に上がった。
「あ~あ。メイティア、遅いな~。私一人とか、寂しいな~」
さっき、村長の演技について下手だと思ったけれど、実際にやってみると、私の方が不自然だった。演技の才能は無いらしい。
「早く会いたいな~。メイティア居ないと寂しくて泣いちゃうかも~」
我ながら、心にもない事を言うなと思った。つい、ふきだしそうになったのも何とか耐えた。もちろん、寂しくて泣いちゃうという部分の所でだ。
「大丈夫ですよ、ルイシアさん。私はこっこで~すっ」
布が起き上がり、声はメイティア。うん、私が思った通りだった。でも、布にしっかり包まりすぎて、なかなか中身が出てこない。
「はいはい、メイティア。危ないから、ちょっと動かないでね」
「あ、はい。ありがとうございます、ルイシアさん」
彼女は私を脅かすつもりだったんだろうけど、完全に失敗よね。
「はい、出来た。おはよう、メイティア」
布から出てきた彼女に朝の挨拶。
「おはようございます、ルイシアさん。とても気持ちの良い朝ですね」
「ええ、そうね」
ごくごく普通で自然な挨拶を交わす。
「ってぇ、反応。その反応は何ですか。もっと驚いてくださいよぉ。寂しくて泣きそうになっていたルイシアさんの前に現れたんですよ。驚いてくださいよぉ」
「わーびっくりぎょうてーん」
「へ、下手すぎるぅ……」
私の棒読みが酷すぎて、メイティアは荷車の板を叩いて失敗を悔しがっていた。うん、そうだよね、きっと。
(あなたの演技が酷すぎての反応ですよ)
余計な声が聞こえてきたけど、聞かなかった事にしよう。
「二人とも、待たせたね」
挨拶が終わったらしく、父さん達が戻ってきた。村長は、なんかやつれてる?
まだ村を出てすらいないのに、心配だわ。
「じゃあ、出発しようか。絶対に安全。安全に絶対にね」
意味がよく分からないけれど、御者として役目を果たそうとする決意のようなものは感じた。
「父さん。畑の事、お願いね」
「ああ、任されたよ。楽しんでおいで」
最後に頼んで、私は村を出た。
道中は実にのどかなで、平和そのものだった。
ただ、道が荒れているから、乗り心地が悪い。
少ない村民でも踏み固められているからだろうか。村の中の方が道としては良かった。
「そういえば、村長。村の外で注意する事って何かある?」
「そうだな。狂暴化した野生動物くらいだな。ほら、村でも外の見回りをしたりしていただろう」
「寒い時期からの変わり目とかの話ね。町の方でもそこは変わらないんだ」
「ああ。ただ、町に近づけば、周辺は荒くれが活動しているだろうから、村よりも安全だろう。彼らは、実績と経験を積むために主に狩りをしているからな」
村長は村と町を往復している回数が多いからか、その辺りに詳しいな。
「何時襲われるか分からない野生動物も怖いですが、魔獣も怖いですよ」
「メイティア、顔近い」
メイティアの顔で視界が塞がれてしまっているじゃない。
「すみません。狭い場所なもので」
「こらこら。これでも村長の新車なんだから」
「二人とも失礼だぞ。それにこれは近場用だ。村の税を納めるのに、この大きさじゃ小さすぎるだろう」
まあ、詰めずに六人が乗れる程度の広さの荷車だと、王都まで何往復すれば良いか分からないか。
「で、話を戻すけど、魔獣っていうのは?」
「この大陸の最北端付近で多く見られる、野生動物よりも厄介な生き物だそうです」
メイティアの説明だと、どうにも要領を得ない。ただ単純にすばしっこいとか力が強いという感じなんだろうか?
(補足しますと、魔獣とは特殊な能力を持った生き物です。身体強化もそうですが、魔法を使う個体も存在しています)
「つまりは、野生動物よりも頭が良いから、チート持ちみたいな事をやれるのね」
(そのような捉え方で良いでしょう)
野生動物の身体能力だって大したものなのに、加えてチート持ちと同等って……。
「大変じゃない!!」
想像するだけで恐ろしいと、つい声を荒げてしまった。
「メイティアちゃん。ルイシアは誰と話しているんだい?」
「今、彼女は神様と対話をされているんですよ」
「ああ、これがたーー言っていた事なのか」
二人とも、結構落ち着いて話をしていた。
「村長達は魔獣が怖くないの? 私は怖いんだけど」
「珍しく怖がるじゃないか。何、ここは最北端からもっとも離れた最南端にある村なんだ。縁が無いよ」
「南下してくる事はありますが、途中で荒くれが対処してくれていますから、こちらまでは来ませんよ。ただ、そのような脅威もあるというお話です」
言い出した本人もここなら大丈夫と、私一人が怖がっているのが馬鹿みたいな状況だった。
そんな腰にきそうな状態でも、穏やか時間が続けば眠くもなる。
メイティアが喜びそうな、たっぷりあるお話の時間は、さほど経たずに話題が無くなった。
私はメシイモの世話くらいしかしていないし、彼女は修道女。外の情報なんてまず入ってくる事の無い環境に居る二人だ。流行りなんて知らないから広がらない。
思い出話なんてしようものなら、メイティアから独りぼっちな時の話が出てくるのは確実だから、子どもの頃の話も出来ない。
なら、年の功と、村長に話しかけるのも手だけれど、それで事故を起こされても困る。
その結果が、今の穏やかな時間。そして、睡魔からの招待状が届く。
受け取ってから先はまさに夢の時間で、どれほど経ったのかも分からない。
ただ、ふと気づいた時には、そよそよと吹く風とは不釣り合いで耳障りな音が遠くの方からしていた。
「村長、この音って何?」
中途半端な目覚めに、私の体はすぐには動かない。
隣でメイティアの眠っている顔があった。
「遠くで荒くれの連中が戦っているんだ。身を乗り出すんじゃないぞ。見つかった’向かってくるかもしれない」
村長の緊張を含んだ声に、意識も体もはっきりしてきた。
いつの間にか荷台に横になって眠っていた私は、体をゆっくりと動かし、側面の板から顔を出して様子を伺った。
遠くを見ると、野犬のような、四つ足の獣らしい姿が見える。それを五、いや四人の人が前衛として戦っているみたいだ。
「村長、あれって何と戦ってるの?」
「この距離じゃ、人と動物が戦っているようにしか見えない」
私も村長と同じだった。百科事典に聞いたら分かるんだろうか?
(今、彼らが戦っている獣は魔獣です。魔獣ケルベルです)
「え、あれが魔獣なの?」
眠る前に聞いた存在が現れた事に驚く私。
「ルイシア、分かるのか?」
「いや、私じゃなくて、チートがそう言ってるの」
「まあ、神様のお言葉でしたか」
何時の間に起きたのか、私の隣で戦いを見ていたメイティア。
「何にしても、あれが魔獣なら、何だってこんな所に?」
「村長、魔獣って不思議な力とか使うんでしょ? ケルベルって名前らしいけど、どんな事するか知ってる?」
「村の辺りに出るのならまだしも、そうじゃないならさっぱりだ」
潔いけど、がっかりだ。メイティアなら分かるんだろうか?
そんな視線に気づいたのか、彼女は頷いた。
「ケルベルという名で間違いないのでしたら、冷気を吐くそうです。遥か北に生息しているからでしょうか」
村長よりもメイティアが頼りになる。
「という事は、随分な長旅をしてきたのね。なんで態々」
(ただの魔獣では無いからでしょう)
「ん? 一般的なのとは違うの?」
(冷気の他にもう一つ能力を持っているのです。ですが、これはまた……)
いつもはっきり言うのに、何故か言葉を詰まらせる百科事典。
「どうしたのよ。いつもみたいにはっきり言ったらどうなの?」
(正しく伝えるべきとは思いますが、こればかりは直接見なければ信じられないかと)
そんな珍しい相手何だろうか。だとしたら、あそこで戦っている人達は大丈夫なんだろうか?
「あ、村長さん、ルイシアさん。攻勢に出るみたいです」
今まで防戦だったのかも分からないけれど、メイティアが言う。
「あ、後ろの人が声出してますね。後援のようですけど、魔法を使っているようにも見えませんし、不思議ですね。あ、四人が分かれて仕掛けましたよ」
白熱するメイティアの解説を聞きながら見ると、確かにそんな感じの動きだ。にしても、後方の一人は武器もかまえず、拳を振り上げて何をしているのだろう。
人側のやりとりまでは聞き取れない。というか、メイティア、目が良すぎるんじゃない?
「あ、逃げましたね。ええ、逃げました」
それは私達にも分かった。荒くれ達が追わなかったのは、逃げた先で囲まれたりする事を危惧したからかな。
少しの間、周囲を警戒したら町に戻って行った。
「いやあ、熱い戦いでしたね」
額の汗を拭う仕草をするメイティア。
「いや、私達にはよく分からなかったけど」
「そうなんですか? かなりの接戦でしたよ」
「どれだけ視力あるのよ」
「分かりませんが、きっと今まで遠くを見ていたからじゃないかと」
「遠くを? あっ……」
思い当たり、言葉が詰まると、そういう事だとばかりにメイティアがほほ笑む。
妙な所で闇を出さないで欲しいのだけど。
気まずいなぁと思っていたら、村長の声が。
「今の内に町に入ろう。動くから気を付けるんだぞ」
流れを切るには良い所で、私達は返事をして荷車に掴まった。
ほどなくして、町の入口に着いた。
「お、村長さんじゃないか。運が良かったな。さっきまでやっかいなのが出てきてたんだ」
「それを見て足止めされていたんだ。追い払ってくれて助かったよ」
村とは違い、しっかりとした検問。何で出来ているのかは分からないけれど、何かに上らないと町の中が見えない高さの壁。村には居ない、革鎧と槍を持った門番。
門番の人は、村長に近い年齢くらいだろうか。
これが町なのか。まだ入り口だというのに、こんなにも違いがあるだなんて。
「町村会議か? にしても随分と若い娘を連れてきているじゃないか。あんたの嫁か?」
「ば、ばば、馬鹿言わないでくれ。冗談でもそんな話が流れてきたら、末代になってしまう」
「おいおい、何をそんなに慌ててるんだ? まさか、悪い関係か?」
「だから止めろと言っているじゃないか。片方は二ルネッガ教の修道女で、もう一人はだな」
中はどれほど栄えているんだろうと、外観だけで妄想が膨らむけど、浮かぶのは村の家の形ばかり。でも、村よりも人はたくさん居るんだろうな。なんたって町なんだから。
若い人も多いのだろうと、道に溢れる人の姿を想像した。
でも、何故か自分と同年代が全く出てこない。ここでも村の人口層の影響が出ている。
年寄りか小さい子供ばかりが出てくる。
「な、なな、そい!? なんて、何て事口走っちまったんだ。いや、冗談、ほんの挨拶のつもりでして。ああ、本当だとも。ほら、あるだろ。親しい仲になるとそういう挨拶もあるってさぁ」
先ほどから町の想像をしている最中だというのに、外野がうるさい。村長と話しているだけなのに、こちらにまで聞こえすぎるほどの大きな声だ。
「と、とにかく、問題が無いなら入って良いか? 大丈夫か?」
「見るような荷物も無いから大丈夫だ。通って良し」
二人して急いでいるような、焦っているようなやり取りの後、荷車が動き出した。
「ルイシアさん。町ですよ。たーっくさん楽しみましょうね」
興奮しすぎなメイティアに揺らされつつ、私は検問を抜けた。
「す、すごい。道が、道が分かれてるっ」
村のように人が踏み固めて草が生えなくなった場所を道と言っているんじゃない。
人が通る用と馬車などが通る用で境がはっきりしている。
「村長。村でもこれやろうよ。絶対そうした方が良いって」
村長の背中をバシバシ叩いて訴える。
「落ち着け、ルイシア。うちの村でそんなしょっちゅう馬車も荷車も通ってないだろ」
「あっ……」
そうだ。収穫した物を村長の家に運ぶ時ぐらいしか使わない。それに村にそんなのに乗って頻繁に訪ねてくるような人は居ない。
「いや、待って。今後は必要になるかも」
「本当か?」
「うん。きっと来年には廃棄場と各家を往復する人が増えるから。畑に撒くから」
私がやったように、肥料をたくさん運ぶには荷車が一番だもの。
「いや、今の村の道でも渋滞するような事は無いし、やはり要らないだろう」
年に二度程度じゃ動く気にならないらしい。村がもっと発展していたら、この町みたいになっていたのかなと思うと、これほど惜しい気持ちは無い。
「まあまあ、ルイシアさん。今行っている事の成果が出たら、商人が毎日買い付けに来るかもしれませんよ。そうなったら毎日馬車の行列が見られるはずです。そうなるように頑張りましょう」
「メイティア……。ありがと」
なんて優しい言葉と夢を見せてくれる子だろうか。毎日商人の行列とか、王様だって買うものが無くなるってもんだけど、夢はある。
「道は諦めるとして、建物もなんか凄いね。木製だったり、土壁だったり? 石造りとか、なんでこんなに種類があるの?」
「民家は木材で、土壁は食料の保存だったか。石造りは何十年も利用する想定なんだとさ。目的で材料が違うんだ」
「うちの村はどこも木造だけど?」
「そりゃあ、近くに森があるからだ。他の建物なんて用意しようとしたら、人を呼ぶしかないだろ。滞在中の寝床も必要だし、食料も必要だ。そして何より、金もだ」
「その三つが無いから村は何時までも木造だって事ね?」
「悲しいかな、その通りだ」
言わせたのは私だけど、村長の背中が震えているように見えた。
「とにかくだ。停車場に着いたら、それぞれ自由行動だ。けれど、午後の三の鐘が鳴ったら集合だ」
「分かったわ、村長」
「急いで戻りますね。村長さん」
太陽が昇ってからが一の鐘。そこから一定の間隔で二回連続で鳴らし、三回連続で鳴らして時間を知る。。お昼にそれまでの回数関係なく、鐘が乱れ鳴る。
そこから一定の時間が過ぎた時にはまた一回鐘が鳴る。
太陽が完全に沈んだ所で最後の鐘が鳴って、その目安は大体午後の六の鐘。
一般市民はこれで仕事を止めて、家に帰って明日に向けて休む。
まあ、村の場合は午後の六の鐘が鳴る前に切り上げてるから、この一日の流れは一般常識の一つでしかない。
集合場所も決め、停車場に着いたら、私とメイティアはこの町の教会に向かった。
「そういえば、メイティアは場所を分かっているの?」
「もちろんですよ。村へ向かう前にここで一泊しましたから」
「そうだったの。その時には町を見て回ったりはしなかったの?」
「教会の人が一緒だったので、そういった事は出来なかったんです」
「なら、今回はその時の雪辱を晴らさないとね」
「はい。教会での用事を済ませたら、組合まで走りますよ」
それはお断りしたいけれど、彼女の気合は十分で鼻息も荒い。
こんな会話をしてからどれほど歩いたか。私も流石に、変だな、おかしいな、と思うほど。
「ねえ、メイティア。もしかしてまいーー」
「ってませんよ。仕方ないですね、ルイシアさん。ちょっとここで休んでいてください。距離を測ってきますから」
その発言は意味が分からなかったけれど、彼女は誤魔化せていると思いつつ、道の先へと走り出した。
「別に迷子でも怒らないのに」
一度来ただけの道を覚えている方が稀だろうに。
「あ、そうだ。百科事典。この町の教会までの道を教えて」
(とても有意義な使い方ですね)
どちらとも受け取れる言い回しをする百科事典。
「このままじゃメイティアと町を楽しめないんだから、早くして」
(分かりました。ですが、今日だけで終わらないですよ)
「それってどういう意味?」
随分と気になる事を言い出す。
「ルイシアさ~ん。分かりま、いえ。見えましたよ、ルイシアさ~ん」
大喜びで戻ってくるメイティア。
「今の、どういう意味よ。百科事典」
(未来が確定されました)
「んん? だから、どういうーー」
三度目の確認をしようとするも、メイティアが私の手を取った。
「ああ、待って。今、大事な話の途中で」
「教会のおつかいも大事ですよ。おつかいが終わらないと遊べないんですから」
迷子になったから時間が減ったと焦っているのか、神のお言葉にもお構いなしだった。




