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果ての畑でメシイモを  作者: 鰤金団
見紛うほどのイモの茎
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10/22

名物と初めての交渉

「ちょ、メイティア。そろそろ放してよ」

 まるで引きずられているような感じで歩いていたので掴まれた手が少し痛い。

「ああ、すみません。一分一秒も惜しくて」

 自分が掴んで赤くなっている私の手を撫でつつメイティアが言った。

「まあ、惜しい気持ちは分かるよ。で、まずはどこに行くつもりなの?」

 同じ気持ちだと言うと、彼女の目は喜びで輝いた。

「腹ごしらえしましょう。最近徐々に噂になっている食べ物を食べに行きますよ。ほら、あのお店です」

 樽が書かれた木の板をぶら下げた所を指差すメイティア。あれは酒場の看板。

 村にも唯一の酒場が同じものをぶら下げていた。

 料理上手のフドクルさんが趣味とチートの活用と実益を兼ねてやっているお店だ。

「私達だけで酒場ねぇ。二ルネッガ教的には問題無いの?」

「お酒を禁止している訳ではありませんから。うちの牧師も村でへべれけになってますよ。朝、外に出る時に扉を開けるとよく頭で邪魔されます」

「頭て……。それにへべれけって……」

 それは神に仕える以前に、人として問題があるのでは?

「それに、酒場と言っていますけど、食事処ですし。お酒が出る所に行けないのなら、宿にも止まれなくなりますよ」

「まあ、そうねぇ。それに、名物も食べられないって事になるものね」

「そうです。さあ、未知の味を体験しに行きますよぉ~」

「はいはい。期待してますよー」

 意気込み、私達は酒場に入った。

 まだ昼の時間だからだろうか。人の姿はまばらで、酔いつぶれていたりしている人の姿は無い。ただ、店員の作業場に面している個人客向けの席までの広間に十の円卓が在るから、時間帯になれば人で集まるお店なのだろうと想像できた。

 店内は村の酒場と違って、なんだか暗い気がする。太陽の光があまり入らない作りにしているのか、明かり代をケチっているのか。雰囲気といい、馴染みの無い人が入るには勇気が居る感じだ。

「メイティア。ここにその名物があるの?」

「あるんです。しっかりとお話は聞きましたし、お勧めで教えてもらった場所の覚書ももらってますから」

 そう言って私の目の前に紙を出すメイティア。彼女の言う通り、羅列された単語の中にこのお店の名前が在った。

 まだためらいはあるけれど、組合の情報を信じよう。どこに座るのが良いかな?

「ルイシアさん。私としては二人向き合って座れる席が良いと思うんです。でも、仕事の様子が覘けそうな場所の方が良いですよね?」

「え、まあ、うん。参考にはなると思う」

 百科事典に聞けば何も問題無いとも思うけど、知っている理由を問われると理解を得られなさそう。どんな行動もチートで説明できるけど、やっぱり皆が隠している情報を明かすとなると、それなりの背景が必要だ。世間に存在しているけど隠しているものを見なくても答えられるだなんて、誰が聞いても危険でしかないから。

「向き合うだけなら、お互いの体とか席を傾ければ良いだけだしね。今回はそれで我慢してもらえる?」

 私のお願いにメイティアは少々考えていた。自身の夢と葛藤していたのだろう。

「とても長い戦いでしたが、机無しで向き合っている方が仲良しっぽいですね」

「そうね。村の仲の良い子ども達は結構くっついている印象があるわ」

 仲良しだから手を繋ぐというのは、男女の仲だけでは無いし、おかしな事は言っていないはず。

「では、そんな感じで行きましょう」

 納得してくれたみたいで、メイティアは席へ歩き出した。

 私達が席に着くと、それを待っていたようにただならぬ雰囲気を纏った強面が出てきた。

「店員さん。このお店の名物、ふわもこメシイモパフェを二つお願いしまーす」

「あいよ。少し待っていてね」

 外見通り、返事もぶっきらぼうだったけど、その後の一言が優しかった。

「メイティア。今、パフェって言わなかった?」

「言いましたよ。ルイシアさんはパフェを知っていましたか?」

「し……ってはいるわ。フドクルさんがそういうのがあるって言っていたから。でも、私が聞きたいのはそこじゃないの。メシイモのパフェって部分。この国の生まれだから知っていると思うけど、メシイモってね、主食なんだよ。パフェって甘い物なんだよ」

「そんな真剣な表情で言わなくても知っていますよ。だから気になりますよね。あのメシイモがご飯じゃなくておやつなんですから」

 私は、メシイモ農家の娘としてこの一品を受け入れて良いのだろうか? 父さんの代から続く家系に傷が付いたりしないだろうか?

(落ち着いてください。まだ二十年も経っていませんし、代替わりもしていませんから)

 百科事典も出てくるほどの取り乱しだったらしい。

「そっか。まだ受け継いでもいないから、傷なんて関係無かった」

(そもそも、調理手段による違いなので、抵抗するほどでもありませんよ。メシイモはとても広く受け入れますが)

「た、確かに。焼いても茹でても食べられるんだものね。よくよく考えたら、茹でたメシイモは甘みが増しておやつ代わりにもなるんだったわ」

 百科事典との会話のおかげで冷静さを取り戻す事が出来たわ。

「メイティア。私は正気に戻ったわ。メシイモはおやつでもいけるっ!」

「そうですね。ですが、ここのパフェを食べたら茹でメシイモがおやつなんて言ってられなくなりますよ。私も味の事は知りませんけどね。組合の人が言ってました」

 既に知っていたような口ぶりだったのに、その訳知り発言が全て受け売りだっただなんて……。

「嬢ちゃん達、もういいかい?」

 何時の間には私達の前には料理を持った先ほどの店員さんが。

「あ、はい。お願いします」

「わぁっ、これが組合の人が言っていた料理なんですねぇ」

 用途は分からないけれど、妙に縦に長いコップが使われていた。

 まず最初に驚いたのはその名の通りの外見。次に衝撃を受けたのは、コップの中に見える果物。そう、これはメシイモと果物が一つになった料理なんだ。

 コップの中では、果物が種類ごとに詰められ、その上下にもこもこが盛られている。もこもこにはほんのりメシイモの断面の色があるから、これがメシイモから生まれたもので間違いなさそうだ。にしても、どんな事をしたらあのメシイモがこんな風になるんだろう。

 普段焼いたり茹でたりしても、こんな感じになった事が無いから分からない。.

 そして、この料理の一番上には一粒の赤い実が。ただメシイモだけを使った料理では無いらしい。

「嬢ちゃん達、組合の紹介で来たのかい?」

「はい。必ず名物として有名になるって教えてもらいました」

「へへ、嬉しい事を言ってくれるじゃないの、あいつら。じゃあ、しっかり味わいな」

 照れつつ奥へ引っ込む店員さん。

「では食べましょうか、ルイシアさん」

「う、うん」

 スプーンをメシイモらしい部分へと進ませる。すると、恐ろしいほどに抵抗なく入っていく。

「お、おおっ」

 茹ですぎてももう少し抵抗があるというのに、これは本当にメシイモなの?

 メイティアの反応が気になり、ちらりと彼女を見る。

 既に口の中に入れたようで、驚いたままの表情から固まっている。それほどまでの味なの?

 貴族様の口にするものという訳でも無いのに、スプーンを握る手が震えていた。

 口に入れた瞬間、じんわりと緩やかに甘さと共に溶けていく。

 茹でた時の甘さ以上だった。見た目的に何かがかかっている訳では無い。じゃあ、これに混ぜ物がされている?

 甘いと言えば砂糖か。フドクルさんに一舐めさせてもらった事がある。あの時の甘さ以外を感じなかった衝撃は記憶に残り続けている。あれから随分と年が過ぎているから、この記憶は盛られているかもしれない。そんな記憶をこのメシイモの味は超えてきた。

 甘さの最上位だと思っていた砂糖を、このメシイモパフェは超えてきたっ。

 もう一度メイティアを見ると、今度は視線が合った。

 どちらからとも無く私達は頷きあった。

 これが、この味がパフェ!!

 そこからはスプーンが進む進む。

 コップの中の果物や、一番上に乗っていた果物を食べて気づいた。

 中に入っている果物に少なからず在った酸味が無い分、メシイモの甘さが強い。一番だ。

 主食が果物よりも甘いという事実に頭の中がどうにかなりそうになる。

 だって、たまに甘みを求める衝動に襲われていた私達が、果物の代わりに食べるのが茹でメシイモだったのに、果物の甘さも超えているのだから。

 それにしても、この不思議な食感は何だろう。こんなにも感じるのに噛んでも抵抗を感じない不思議な存在。

 これは何だろう。何に例えられるだろう。

 考えていたら、幼い頃の記憶が蘇ってきた。

 そうだ。子どもの頃、村のどこかの場所で泥か何かの上でブクブクと泡を出していた所が在った。

 幼い頃の私は、その泡を木の棒で突いて遊んでいた。

 この触れているのにその感触が無い状態は、あの時に感じたものと同じと言って良いかもしれない。

(料理とその記憶を同一に語らない方が良いですよ)

 百科事典はそう言うけれど、私の中では同じなのだから仕方ない。

 だから、うん。子どもの頃の懐かしい思い出に水を注すチートの言葉はこの際無視しよう。

「泡……。そっか。これがふわもこっ!!」

 思い出に瞳を閉じていた私は、内から湧き上がる興奮に開眼し、残りを全て掻き込んだ。

 町歩きの一番最初にこんな凄い物を食べてしまって本当に良かったのだろうか。

 もうこれだけで思い出が十分と思ってしまうほどに危険な料理だった。

「メイティア。あなたはこの味をどう見る?」

 メシイモ農家としてはこの甘さを引き出す術を知らない事を大変悔しく思っていた。

 そういった点からも自身の家業目線から離れている立場の彼女の意見を聞きたくなった。

「美味しくて止まりません。このふわもこだけをずっとすくい続けたいですぅ」

 いつの間にか二つ目を食べている。隣に居る私が気づかないうちに頼んでいたなんて、恐ろしい子っ。

 にしてもこの区切りを付けさせない丁度良くも強烈な甘さは恐ろしい。

 私達が甘味に耐性が無いからという所もあるのだけど、こんな料理を食べてしまっては、もう町に住もうかと思ってしまう。村へはここから通うで良いんじゃないかな。

 ああもう、この町に住んじゃいたい。住んでずっとこれを食べ続けていたい……。

 このふわもこの甘さをどうしたら作り出せるんだろう。これは何? チートなの?

「はは。嬢ちゃん達、すっかり気に入ったみたいだな」

 気分が良いのか、さっきの店員が砕けた口調で気さくに話しかけてきた。

「凄く、とっても凄く美味しいですぅ。ここのシスターになりたかったですよぉ」

 この家の子どもになりたかった、みたいな感じでメイティアが絶賛する。

「そう言ってくれるかい。まだここのニルネッガ教の人は来てないんだよ。でも、お墨付きを貰えたって事で、二ルネッガ教が夢中になる美味しさって宣伝文句でも付けようかね」

「良いと思います。あ、でもでも、行列になると食べられなくなるかも……」

 彼女の反応が嬉しいようで、笑顔が崩れない店員。

 これはポロッと秘密を話してくれるかもしれない。

 この料理に魅了された一人となった私は、試しに聞いてみようと思った。

「私も、とっても美味しかったです。このふわもこって、どんな風に作ってるんですか?」

 褒めつつ直球で尋ねる。

「おっと、嬢ちゃん。そいつは秘密秘密の絶対秘密だよ」

 ちぃっ。うっかり話してくれれば良いものを……。

 これは頼み込んでも駄目そうだ。いっそ、弟子入りする?

(目的を忘れすぎですよ)

 おっと、百科事典に言われてしまった。ん? ああ、私には百科事典が居るんだった。

 こういう時に百科事典に聞いたら教えてくれるのだろうか?

 そう考えた時、百科事典がこの疑問に答えてくれた。

(答えましょう)

 あ、やった。教えてくれるんだ。

「じゃあ、お願い」

(メシイモとは、調理の仕方で味や食感が変わる食材です。火を通す事で食す事が可能となります。焼くと表面がカリカリに、中はホクホクになります。茹でる事で全体が柔らかくホクホクした状態になります。また、メシイモに含まれるものが甘みを生み出します)

 あ、だから茹でメシイモはおやつ代わりになったんだ。にしても前置きが長い。

(蒸すとメシイモ内で甘くなる成分が壊れなくなります)

 長いって言ったから、怒って一言で終わらせちゃった。口調は変わらないけど、絶対感情あるよね?

(ありませんよ。あなたの希望に答えただけです。受け取る方の反応だと理解してください)

 これ、絶対……。いや、止めておこう。終わらなくなりそう。いや、なる。

「蒸す、ねぇ……」

 知りたかった情報は得られたので、聞いた言葉を口にする。

「っ!?」

 店員さんの表情が変わる。明らかに動揺している。絶対に分かる訳が無いと高を括っていたからだろう。

 それにしても蒸すなんて初めて聞く。焼くや茹でるとはどんな違いがあるのか。

 メイティアはこのパフェを今しか食べられないみたいな事は言っていなかった。という事は、一年中食べられる調理法という事だ。

 百科事典に聞くのが一番早いけれど、正解への手がかりはだいぶ揃っているようにも思う。

 後は私が気づけるかどうか。だとしたら、自分で見つけたい。百科事典もそんな心情だという事を理解して答えを教えようとしていないみたいだ。

 何かないだろうかと目を動かして探る。

 すると、店員さんの後ろに僅かに見えた調理場の方からうっすらと白い煙が見えた。

 その時、頭の中で全てが繋がった気がした。

 焼けばカリカリ、茹でれば柔らかくなる。そして茹でるよりも甘くなる。それは言ってしまえば、熱した平鍋に直接置かず、味が薄まるような事をしないという事。

 じゃあその中間とはどんな状態か。それを考えると、私が見つけた白い煙の正体が分かった。

 そう、あの煙の正体は湯気だ。蒸すとはつまり、湯気で温める調理法の事を言うに違いない。

(はい。蒸すとは、密閉した空間で水蒸気で温める調理法の事を言います。メシイモの場合、時間はかかりますが、お湯に甘さを生み出すものが溶け出ないので果物を超える甘さを生み出す事も可能になります)

 やった。百科事典に聞かずに答えを見つけられた。

 嬉しさに飛び上がりたくなるけれど、周囲に人が居るから止めておこう。

 さて、答えを見つけたらやる事は一つだ。

「店員さん。後ろ、見えてるよ」

 指を指して教えてあげる。慌てた様子で振り返る店員さん。

「見えちゃってるね、湯気」

 こちらを見てきた店員さんは、なんで目が落ちていないの? と思うほどに見開いていた。

「な、なあ、嬢ちゃん。この事は……」

「言いませんよ。私のお願いを聞いてくれたら、ですが」

「権利なら譲らないぞ」

 この調理法にそんな大層なものが付いてくるのかも知らない。あっても一個人の農家の娘だもの。要らない。

「そうじゃなくて、メシイモを継続的に買って欲しいの」

「メシイモ? お嬢ちゃん達、農家だったのか?」

「私だけね。で、私が今育てているメシイモが収穫出来たら持ってくるから、それで今みたいにパフェを作って欲しいの。それで味が良ければ今後も買って欲しいの。どっちにしてもこのお店の裏でしている事に関しては口外しないわ」

「おいおい。そりゃあ、こっちに有利過ぎるだろ。俺は絶対に不味いと言うぞ。そうすれば妙なもんを買わず、秘密も守れるんだからな」

 この店員さんの言う通り、彼の匙加減一つでどうする事も出来る話だったけど、これだけは言える。

「この料理って、調理法が珍しいだけよね。使ったメシイモは出回っている普通の物でしょ?」

「普通のって、自分とこのは違うって言いたいのか? 歳から見るに、お嬢ちゃんはなりたてのメシイモ農家だろ。若い奴ほど居るんだよ。自分のは特別だって言って売り込む奴がさ」

「それで出てくるのはあまり差が無い野菜とかなんでしょ?」

「ああ、そうだな」

 うん、大丈夫。人が聞けばまだ未収穫なのに強気な身の程知らずと思うかもしれないけど、これだけ強気に行ける根拠が私にはある。

 百科事典は前に言った。私が行うのはメシイモに適した育て方だと。

 他の野菜なら水が足りないとか太陽の光が足りないとかで小さいのが出来たり、味が悪かったりする。この話がメシイモでも同じなら、パフェの味は更に上がるという事だ。

 それに、私がメシイモを育てる事で滅びの未来の改善や回避に繋がるというのなら、出回っているメシイモに負ける訳が無い。

「分かったよ。お嬢ちゃんのその若さに少し折れて条件を呑もう。どのみち、弱みは握られているしな」

 やった。これで納税と村での消費だけという外に広がらない循環から抜け出すきっかけが作れた。それに、蒸す調理法とパフェについてフドクルさんに教えたら村の名物も生まれるはず。これで村長の期待にも応えられるだろう。

「メイティア。あなたを証人にして約束をさせてもらえる?」

「もちろんです。二ルネッガ教の名の下で、お友達であっても平等に正しく見守りましょう」

「ありがとう、メイティア。店員さん。私は、自分の収穫したメシイモを持ってきて味を見てもらう事。このお店のパフェの調理法について口外しない事を誓うわ」

「修道女のお嬢ちゃん。俺はこのお嬢ちゃんが持ってきたメシイモでパフェを作る事を誓おう」

「二ルネッガ教のメイティアが確かに両者の誓いを聞き入れました。両者ともにこの誓いを破る事が無いように願います」

 何かしらの約束事に対してのやり取りが終わり、この契約が正式なものになった瞬間だった。実際に破った場合、神様からの天罰じゃなくて、法的に裁かれるだけの話だ。

「これで一安心だけど、店員さんが全部勝手に決めて良かったの?」

 全て決まり終えてから言うのもどうかと思うけど、確認のために聞いた。

「ここの酒場の主が良いって言っているんだ。問題無い」

 うん、やり取りの途中でそうだとは思っていたけど、確認が取れて安心した。

 お腹がお腹が落ち着いた所で、私達は町を見て回る事にした。

「あの、ルイシアさん。誓いの途中で証人が口を挟んではいけないので何も言わなかったのでsが、あれで良かったんですか?」

「うん? 別に問題は無かったと思うけど。百科事典も止めなかったし」

「え、そうなんですか? でも、蒸すという調理法を伝えられなくなりましたよ」

「ああ、そこが気になってたのね。大丈夫よ。別に禁じられていないし」

 私の答えに、メイティアは首を傾げた。

「酒場の店員、店主さんも納得していたから大丈夫。私が約束したのは、酒場の料理の仕方について言わないという事だもの」

「蒸すという調理法が関わってきますよね?」

「それ自体はこの国か、海の向こうかは分からないけれど、どこかで既に生まれたものだから。あの店主さんだけが町で知っているって事は、酒場に来たお客が教えたかなんかしたんでしょ。で、ここからなんだけどね。あのパフェに隠し味が入っていたとするじゃない。そういうのを明かして伝える事が駄目って話なのよ。だって、私がしたのはあのパフェの調理法について口外しないって約束だから」

「ああ、そうですね。そうなりますね。私てっきり、蒸すについて口外しないのだと思っていましたよぉ」

「焼くとか茹でるを禁止する事は出来ないでしょ。蒸すもそのうち広まるだろうから、店主さんも独占出来ないのは理解していたわ」

「店主さんが驚いていたのは、蒸すの調理法を見破られた事と作り方をパフェの作り方を知られたと思われたからだったんですねぇ」

「そういう事。私は見た以上の事は知らないから、何が正解かも分からないわ。さ、話はこれぐらいにして次の場所へ行きましょう」

「はい。この一覧を制覇出来るようにがんばりましょー」

 そうして私達は、食材屋を見て回り、家具屋を見て回り、装飾屋で二人の思い出の品を探した。時間があっという間に過ぎていった。


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