80.アナリーの暴走 前編
トリエミア家の襲撃、悪魔の来訪と消滅、そして集落『フィッセル』の吸血鬼の乱入。起こったことが、あまりにも多すぎた。
今回、トリエミア家の奴等のランプで負傷した吸血鬼は十人を超えた。そして、その内の四人は自力で立てないほどのダメージを負った。D班の四人が城の外に出ておらず全員無傷だったのは、不幸中の幸いだったと思う。
「……で、マジで痛ぇ!」
「落ち着け、メリノ。包帯がずれる。」
俺……B班メンバーのメリノ・ジャンヴィールも、騒ぎにホイホイ出ていって野次馬していたため、無論やられた。俺は腕、足、顔の三か所で、動けないほどではないが安静にしろとのことだった。
俺の手当てをしているD班メンバーのリベリテ・コルトは、今日も何を考えているのかわからない無表情で包帯を切っていた。
気弱なD班リーダー、サムス・マロトの補佐として行動している、他人に興味がない本の虫で、なかなか話すことも無い。今だって、キャラメル色のアシンメトリーヘアから覗く、紫縁のスクエア眼鏡の奥のミッドナイトブルーの虹彩は、心底つまらなそうに鈍く光っている。ただ、俺の手当てをしてくれている手つきは妙に優しく温かくて、他人に興味は無いようだけど、嫌っているわけでもなさそうだった。
「……なぁ、リベリテ。他の奴らの状況はどうだ?結構ボロボロ?」
「処置が終わったら見に行けばいい。死屍累々、隣部屋に転がっている。」
わお。マジですか。全身いってるって、顔面ひび割れて相当グロイことになってるだろうに。よく平気でいられんな。……まぁ、それくらいじゃないとD班としてやっていけねーのかもしれねーけど。
「メリノっ、痛みはどう?」
ためらいがちに、D班メンバーの一人、ゴウ・タイルが顔を出した。編み込みポニーテールにしたサフランイエローの長髪に、漸く光を取り戻し始めたシルバーグレーの虹彩。集落一の美貌を持つゴウは、以前抱えた苦しみと共存しながらも、今は柔らかな表情をしている。
「痛ぇけど、他の奴らに比べりゃ大したことねーよ。心配ありがとな。」
俺は昔人間だったから、光に当たってもなんともなかった時のことを思い出すと、ちょっと複雑だけど。
ゴウの言葉に笑顔で返すと、心優しいゴウは安堵の溜息を吐いてから、リベリテに新品の薬を手渡した。
「……ねぇ、メリノってすぐ動ける?」
「激しい動きは避けた方がいいだろう。何かあるのか。」
ゴウの言葉に、リベリテが返す。ゴウは少し逡巡した後、遠くの部屋を指さした。
「体力がある奴が、大ホールに来い、って。アナリーが自暴自棄になって暴れてる。今はC班のウィリアン・ネーロが対応してるけど、もう少し応援が欲しいって言ってたから。」
その言葉に、俺の挙動も、リベリテの作業の手も止まる。
アナリーが、自暴自棄。集落随一のバトル好き・ウィリアンが応援の要請。
ただ事じゃない予感に、嫌な汗が背筋を伝うのが分かった。
間違えて10日空けず投稿してしまったため、このまま掲載します。
次の話は本来の予定通りの6/14に掲載します。
よろしくお願いします。




