掘り出し物
気づけば、朝になっていた。
キョウらしき環境維持ロボを会話していたはずだったが、途中で寝てしまったようだ。
あの後、どんな会話しただろう?
――うっかり名前を名乗ったりしてないよな?
まあ、名前を言ってたとしても、キョウは夢だと思っていたらしいからなんとか誤魔化せるだろう。
それも心配だが、キョウはミフルの家の場所を知っているのも問題だ。
いずれ、人間の姿のミフルとキョウが遭遇してしまうかもしれない。
何か対策を考えないと――。
*
という話をケイにしてみた。
「マスクでもしたら?」
拍子抜けするほど、あっさりした口調で言われた。
「じゃあ、マスクさえすれば人間の姿でルウの地を歩いてもいいの?」
「バレない自信があるなら、どうぞ?」
妙に威圧感のある言い方をされた。
バレない自信があるなら、つまりは、絶対にバレるなということなのだ。
ミフルは神妙に頷いた。
「それに、マスクをつけて歩く度胸があるのかい?」
言われ、自分がマスクをつけて歩くのを想像してみた。
正体がバレないにしろ、いろんな人から必要以上に注目を集めるだろう。
ただ、顔は隠れているわけだし、別にどうということでもなくないか?
と言う旨、ケイに伝えるとニヤリとして、こう答えた。
「僕たち似た者同士だね」
ケイは、少し前に自身の環境維持ロボが壊れてしまい、ルウの地の中をピエロのお面で歩き回るはめになったという。
――そうだよな、場合によっては、人間の姿でルウの地を出歩く必要もあるよな?
改めて、今後100年は人間の姿でルウの地を歩くなという制約は、ハードで理不尽だと思った。
そんなわけで、自分の家にいる時にばったりルウの民に出くわした時のために、ケイから適当に顔を隠せるものを貰えることになった。
ゴミ屋敷はなかなかのお宝もありそう(?)
そんな中に、ミフルの目を引く物があった。
顔を覆うマスクで間違いないのだが、それはマスクというより、頭全体を覆う構造になっていた。
藁でできた籠を逆さまにしたような形状だ。
被ってみると、籠の網目から丁度いい感じに視界を確保できる。
頭の形には合わなさそうな籠状のものなのに、これもまたいい感じに頭に固定される。これなら走り回っても落ちなさそう。
なんらかの魔法がかかってる魔道具の一種なのかもしれない。
ちなみに、余談だが、籠の場合は網目ではなく籠目というのが正しいのだが、ミフルはその辺の知識が乏しかった。
その籠を被って、蜘蛛の巣の張った鏡の前でポーズを取ってみる。
埃がうっすら積もった割れた鏡だから、よくわかりづらい。
でも、ケイが褒めてくれたのもあって、気分がよかった。
「じゃあ、これ、もらってくね」
と、ミフルはケイの家を後にした。
*
気に入ったグッズを手に入れたので、折角だから、それを被って外を歩いてみることにした。
場所は――?
リゾの家にでも行ってみよう。
キョウが気にしていたみたいだし、少しリゾと話してみたい気分だった。
最高位は最高位同士の家にある女神像を使い、一瞬で瞬間移動できる。
それを使って、リゾの家に行ってみた。
どうやら、不在のようだった。
いないなら、別にいいや。
ミフルはその辺をぶらぶら歩き出した。
――そういえば、暗くないな。
これもある種、この籠の効果なのだろう。
構造上、光があまり入って来ないはずなのに、暗くはない。
――もしかしたら、夜でも暗くない?
もし、そうなら、これはとんでもない掘り出し物だ。




