コミュ障
そんな時、何やら声が聞こえてきた。
子どもの声のようだ。
何やら、数人の子どもがいる。
――こんなとこで子どもが何してんだ?
あんまり、子どもに接することがなかったミフルには、なんだか新鮮な感覚だ。
なんとなく、ミフルは子どもたちに近づいて行った。
子ども達の身長や見た感じ年齢とかは、ミフルと同じくらい。
その中に入れば、自然に自分も馴染める気がした。
だが、そんなわけはなかった。
籠を被って顔を隠す人物に、子どもたちは騒然となる。
「キョウ兄ちゃん、ざるだ!」
一人の子どもが言ったのを皮切りに、子どもたちは『ざるだ』『ざるだ』を連呼しながら、ミフルを遠巻きにした。
――ん? キョウ?
まさしく、先日会ったキョウが、子どもたちの中にいた。
どうやら、リゾの家付近を歩いていたつもりが、キョウの家の方まで来てしまっていたようだった。
「あぁ、ざるじゃないよ。あれは籠だよ。籠被ったコミュ障だよ」
と、キョウが子どもたちに説明する。
――ん!?コミュ障??
ミフルは、コミュ障が何かはなんとなく知っている。
コミュニケーションが苦手な若者で、誰とも接することなく、ただ屋内に留まってる者のことだ。
顔を隠しているから、そんな誤解をされたのだろうか。
――そんなのと間違えるなんて!
ミフルはむかっとした。
なので、反論した。
「オレはコミュ障などではない!」
「え?」
ミフルの言葉に、灰色の髪の青年ことキョウはキョトンとしていた。
「コミュ障じゃなく、虚無僧と言ったんだけど……」
「虚無僧って何?」
と、子どもの一人が聞いたので、
「あんな風な籠を被って修行をしている人のことだよ」
と、キョウは説明した。
さらに、キョウは、虚無僧に出会った場合は両手を合わせて拝み何か施しをすればいいのだと、付け足す。
ミフルは感心した。
そもそも虚無僧を知らなかったのだ。
「そうそう、オレはコムソーだ」
と、名乗ってみた。
どっちみち、ミフルという本名を名乗っていれば、いずれかつてのミフルの知り合いや身内にバレるリスクがある。
適当な偽名かあだ名を使いたいとも思っていたし、ちょうどいいと思った。
「コムソー君?」
「そうだ!」
「虚無僧のコムソー君?」
「そうだ!!」
しばし、沈黙が流れ、一人の子どもがミフルに一つたこ焼きを差し出した。
「施しってわけじゃないけど、これでも食べろよ」
つくづく自分はたこ焼きに縁があるな、と有難く受け取った。
包み紙をはがし、ぱくっと口に入れる。
……が、口に入れた途端、とてつもない味がした。
危うく吐き出しそうになったが、なんとか堪えた。
口の中にあるそれが甘い味だと気づいたのは、数秒経ってからだった……
「ミニシュークリーム、嫌いだった?」
「ミニ…シュー?」
どうやら、小さくて丸い形でチョコでコーティングされたお菓子を先入観でたこ焼きだと思い込んでたようだ。
「この子、シュークリーム、知らないの?」
「訳ありの子?」
「お腹空いてんじゃない?」
子どもたちがざわざわし始める。
「修行をしながら、旅をしているからな、多少、知らないこともある」
ミフルは我ながら、よくわからない自分の設定を語り始めた。
「……いやいや、シュークリームくらい知ってる!」
「きみ、親御さんは?保護者とかはいるの?」
「まあ、この近くにいる。しばらく、この辺に滞在することになってる」
「なら、いいけど……」
キョウはどことなく、腑に落ちない顔をしている。
――バレたらやばいな。
ミフルは感覚が鈍い方だが、キョウは鋭い方らしい。
気配とか、誰か特定するのは得意らしい。
「あ!あそこに藁人形が落ちてる!」
そう言って、ミフルはダッシュで駆けだした。
「え? ちょっと……」
キョウをはじめ子どもたちは、ミフルが消えたのをぽかーんと眺めていた。
これで、今日のことはごまかせただろう。
と、ミフルは必死に走るのだった――。
前回のエピソードで『藁でできた籠』と表記していましたが、実際はイグサでできている場合が多いようです(竹製の籠などもあるようです)。
ミフルが藁だと誤解しているので、このように表記しました。




