すれ違い
* * *
昼は平気でも、夜は怖くなる。
ミフルには、そんな自覚があった。
夜、新居で一人でいると、失った後悔と、ただ漠然とした不安に押しつぶされそうになる。
――一人にならなきゃいいんだ!
脳内に電球が灯るがごとく、名案のように思えた。
早速、ミフルは寝室の呼び鈴に念を送ってみる。
昨晩は呼び鈴を鳴らしたら、ケイが現れたのだ。
これを逆手に取って、こちらから向こうに行くことも可能なはずだ。
ミフルの予想は当たった。次の瞬間には、ケイの家の寝室にいた。
「ねぇ? 遊びに来たよ?」
見回してみるが、ケイはいないようだ。
夜なのに、灯りが点いたままだった。
――点けたまま出掛けたのかな?
じゃあ、すぐ帰って来るだろう、とミフルは待つことにした。
待ってる間、そわそわしてきた。
なんでいるの?とか、そんなことを聞かれた場合の答えを自分の中で反芻してみたり……。
だが、ケイは帰って来なかった。
――なんだよ!オレの事、大事にしてくれてる訳じゃないのかよ。
無性にいらっとしたのだが、それがお門違いだというのはミフル自身よくわかっていた。
待っててもケイは帰って来なそうだし、帰るのも寂しい。
ミフルはこの家を探検してみる事にした。
ケイの家は自他ともに認めるゴミ屋敷なのだ。ゴミの中に思わぬお宝があるかもしれない。
寝室を出ればリビング……? 汚い部屋なので、判別は出来かねる。
聖剣は無造作に置かれていたが、一応はゴミとは別にあったので、ケイ本人なりに大事にしているのだろう。
ゴミの中に目をやれば、紙屑のような布のような物体が詰みあがってる。その下から写真が出てきた。
見知らぬ男性の写真。もしかしたら、ケイの元カレとかだろうか?
そう思うと見てはいけないものを見たような気がして、またゴミの奥に押し込んだ。
こんな行動がゴミ屋敷を生むのだろう、となんとなく思った。
なんとなく、別の箇所も漁ってみる。古い本が出てきた。
数百年前の本で、いわゆる小説のようだ。双子が禁忌の世界で、双子に生まれてしまった主人公が兄と戦う話――。
数ページ、読んでみる。
自由を手に入れるため、親と兄を倒す誓いを立てた主人公。ミフルにはどうも現実味がなく陳腐に思えた。
ミフルは違うゴミも漁ってみた。
掃除道具の残骸らしきものが出てきた。
おそらく、掃除をしようと道具を揃えてみたが、結局は掃除はできず、そのまま積み重なったのだろう。
また、ゴミの中を漁ってみる。
今度は古い図鑑が出てきた。それもよーくよーく見ていると、子どもの頃の自分が持っていた図鑑と同じだ。
図鑑は何度か買い換えている。その際、古いのは処分して、適度に入れ替えていた。
たまたま同じ本を持っていたのだろうか?
懐かしい気持ちになり、やはり図鑑を開いてみた。
大きな絵と文字で読みやすい。
――やっぱり、オレって外見だけじゃなく、中身も子どもになっちゃったんだな。
眠くなってきた。
ミフルは図鑑をそのまま、寝室に持ち込み、ベッドの上で横になりつつ見ていた。
そうして、そのまま寝てしまった。
――ケイに怒られるかな。
そうは思ったが、一人で淋しく過ごすより全然いい。
*
夜が明け、目が醒めても、ケイは帰って来なかった。
なんだか物足りないような不満な気持ちで、ミフルは家に帰る。
「まさか、朝帰りとはね」
と言ったのは、まさかのケイだった。
「きみのことが心配で、家に来てあげたってのに……」




