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月色の砂漠 -ミフル-  作者: チク


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29/30

すれ違い


     * * *


 昼は平気でも、夜は怖くなる。

 ミフルには、そんな自覚があった。


 夜、新居で一人でいると、失った後悔と、ただ漠然とした不安に押しつぶされそうになる。


――一人にならなきゃいいんだ!

 脳内に電球が灯るがごとく、名案のように思えた。


 早速、ミフルは寝室の呼び鈴に念を送ってみる。

 昨晩は呼び鈴を鳴らしたら、ケイが現れたのだ。

 これを逆手に取って、こちらから向こうに行くことも可能なはずだ。


 ミフルの予想は当たった。次の瞬間には、ケイの家の寝室にいた。

 

「ねぇ? 遊びに来たよ?」

 見回してみるが、ケイはいないようだ。


 夜なのに、灯りが点いたままだった。


――点けたまま出掛けたのかな?

 じゃあ、すぐ帰って来るだろう、とミフルは待つことにした。


 待ってる間、そわそわしてきた。

 なんでいるの?とか、そんなことを聞かれた場合の答えを自分の中で反芻してみたり……。

 だが、ケイは帰って来なかった。


――なんだよ!オレの事、大事にしてくれてる訳じゃないのかよ。

 無性にいらっとしたのだが、それがお門違いだというのはミフル自身よくわかっていた。



 待っててもケイは帰って来なそうだし、帰るのも寂しい。


 ミフルはこの家を探検してみる事にした。

 ケイの家は自他ともに認めるゴミ屋敷なのだ。ゴミの中に思わぬお宝があるかもしれない。


 寝室を出ればリビング……? 汚い部屋なので、判別は出来かねる。

 聖剣は無造作に置かれていたが、一応はゴミとは別にあったので、ケイ本人なりに大事にしているのだろう。

 ゴミの中に目をやれば、紙屑のような布のような物体が詰みあがってる。その下から写真が出てきた。

 見知らぬ男性の写真。もしかしたら、ケイの元カレとかだろうか?

 そう思うと見てはいけないものを見たような気がして、またゴミの奥に押し込んだ。


 こんな行動がゴミ屋敷を生むのだろう、となんとなく思った。


 なんとなく、別の箇所も漁ってみる。古い本が出てきた。

 数百年前の本で、いわゆる小説のようだ。双子が禁忌の世界で、双子に生まれてしまった主人公が兄と戦う話――。


 数ページ、読んでみる。

 自由を手に入れるため、親と兄を倒す誓いを立てた主人公。ミフルにはどうも現実味がなく陳腐に思えた。



 ミフルは違うゴミも漁ってみた。

 掃除道具の残骸らしきものが出てきた。

 おそらく、掃除をしようと道具を揃えてみたが、結局は掃除はできず、そのまま積み重なったのだろう。


 また、ゴミの中を漁ってみる。

 今度は古い図鑑が出てきた。それもよーくよーく見ていると、子どもの頃の自分が持っていた図鑑と同じだ。

 図鑑は何度か買い換えている。その際、古いのは処分して、適度に入れ替えていた。

 たまたま同じ本を持っていたのだろうか?


 懐かしい気持ちになり、やはり図鑑を開いてみた。

 大きな絵と文字で読みやすい。


――やっぱり、オレって外見だけじゃなく、中身も子どもになっちゃったんだな。


 眠くなってきた。

 ミフルは図鑑をそのまま、寝室に持ち込み、ベッドの上で横になりつつ見ていた。

 そうして、そのまま寝てしまった。


――ケイに怒られるかな。

 そうは思ったが、一人で淋しく過ごすより全然いい。



     *


 夜が明け、目が醒めても、ケイは帰って来なかった。


 なんだか物足りないような不満な気持ちで、ミフルは家に帰る。


「まさか、朝帰りとはね」

 と言ったのは、まさかのケイだった。

「きみのことが心配で、家に来てあげたってのに……」


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