3話
「あぁ、久しぶりだなガレル殿下。いや、ガレル」
俺は気軽にガレルに挨拶をする。
「え?お二人はお知り合いなのですか?」
フィーリア嬢はかなり驚いているらしい。それもそうか、こんな田舎出身の男が王子と知り合いで気軽に話を始めるとは思うまい。
「ああ、私だけでなく側近の者たちもこのサンクレドとは既知の仲だ。友人といってもいいだろう」
王子の側近達もうんうんと頷く。
「そうなんでしたか。でも、どうして?」
「ふむ、フィーリア嬢。家名としてではなく名前でエクスといえば誰か思い浮かばないだろうか」
「エクス様、ですか……?エクス様といえば…虎牙将軍と名高いエクス・スクリュイド辺境伯様でしょうか?」
「ご名答。サンクレドはエクス将軍の息子でね。我々が武術訓練のために辺境に行った時に知り合ったのさ。訓練の師匠みたいな感じ、年は下だけどね。当時既にサンクレドは将として魔獣狩りの指揮等もしていたかな、その功績で士爵位を授かったはずだし」
「そうだな。中央からきた太ったお坊ちゃんを鍛えるのは大変だったぜ!最近はちゃんとトレーニングしてるようでよかったな。脂肪の塊だったら親父に言ってまた辺境に呼んでもらう必要があったぜ」
「勘弁してくれ…」
「サンクレド様がエクス将軍のご子息…つまり既に士爵な上に辺境伯令息って事ですか!?申し訳ありません。今まで全然知らなかったとはいえとんだ無礼を…!」
フィーリア嬢は正体を知ったからか少し青くなりながらこちらに頭を下げる。止めてくれ、フィーリア嬢。君は俺の推しで癒しなんだ。
「顔をあげてくれフィーリア嬢。俺も正体を隠していたしこのような見た目だからね、あまり目立ちたくなかったんだ」
「いえ、その…サンクレド様の健康的な体も素敵だと思います」
フィーリア嬢は顔を染めながら目を伏せる。
んん?
「へー、フィーリア嬢はサンクレドの事ブサイクとは思わないんだ?中央貴族にしては変わってるね」
「それは、、騎士様に憧れがあって…太ましい貴族らしい方もそれはそれでいいのですが、えっと…」
「おお!じゃあサンクレドはぴったりじゃないか!僕が証人になろうか?」
「おいまてガレル。フィーリア嬢はさっき傷ついたばっかりなんだぞ。事を急ぐな」
こいつは何でいつも突拍子も無い事を言い出すな。さっきの婚約破棄に証人になるといったのも正直普通ならしないと思うんだが。
「あぁゴメンゴメン。そうだね、その話は今度にしよう。それでファトマの事だけど、恐らくラーデ家に婿入りすることになると思う。勿論王族の血が他に流れないように去勢した上でにはなるが」
「公爵家の跡継ぎはどうするんだ?」
「弟がいるから大丈夫さ。ラーデ家にもラディス嬢が直接関与している訳では無いが事情があってね、ファトマもあんな感じだが頭は良い。どうにか立て直すだろう。出来なければそれまでだ」
ラーデ家はこの感じだと負債を結構抱えてそうだな…。それでファトマの白デブを誘惑してたって事か。
「そうなのですね…」
「ファトマが心配かい?フィーリア嬢」
「いえ…大丈夫です」
フィーリア嬢は首を振って否定する。
そこに外に出ていたガレル王子の側近が来て、何か耳打ちをする。
「おっ、呼んでいた馬車が到着したようだ。とりあえず今日は帰りたまえ。また、諸々の手続き等については追って連絡をするようにするから。サンクレドは寮の管理人に連絡するようにする」
馬車を呼ぶだなんて気がきくやつだなぁ、流石王子は伊達じゃない。従兄弟は伊達だったけども。
「わかった。ありがとうガレル。フィーリア嬢、帰りましょう。馬車のところまで俺もご一緒いたします」
「ありがとうございます。それではガレル殿下、本当にお世話になりました」
俺とフィーリア嬢は王子に礼をして歩きだす。
少し気まずいので会話は無かったが、俺にとっては隣に推しがいる状況のため、内心かなり焦っていた。臭くないだろうか、俺。
馬車が停まっている場所についてしまった。
「サンクレド様、今日は本当にありがとうございました。まさか助けて頂けるとは思わず」
「いえ、フィーリア嬢は俺の推しなので、あっ…」
ヤバいぞこれは。
言うつもりなかったのに言ってしまった…
「推し…ですか?何でしょうかそれは?」
フィーリア嬢がわかっていないようで首を傾げる。可愛い。
推しに推しの説明するとか拷問かこれは?
「あのー、応援したいとか好ましいとかそういう感じです…」
「まぁっ…」
フィーリア嬢は赤面して顔を隠す。
可愛い。
「あの、すいません。失言でした、忘れて下さい。俺も忘れるので今日の事は無かった事にしてください」
「そ、そういうわけにもいきません!色々事が落ち着いたら我が家で本日の事についてお礼いたしますので是非いらして下さい」
「えっ…いいんですか?」
「父も母も断らないと思いますし、殿下から知らせも来るでしょうから」
「……。はい!わかりました。その時は是非!」
「よかったです。それでは、本日はこれで失礼いたしますね。また、後日」
「はい、ではまた」
フィーリア嬢は最後、俺に微笑んで馬車に乗り込み、去っていく。
一方俺は
尊さで死んだ。




