守備範囲
「やっぱり要人だった」
聞き覚えのある声。
そして、近づく足音。
目を開けるとそこには、
「さっきぶり〜」
香澄の顔が。
「近い!」
寝転がっていた体勢を起こし、彼を自分から離す。
何と運の悪い…
ついさっき関わらないようにしようと決めたや先に
このタイミング。
尽く今日はついていない。
「要人もサボり?」
"も"という事は、彼もサボりなのだろう。
しかし、ちゃっかり隣に座っているのは何とも彼らしい。
ただ、座ってくれたおかげで顔の距離は遠くなった。
「まぁ、そんな感じ」
「へ〜、ヤンキーじゃん」
「ヤンキーじゃない」
「授業サボる人はヤンキーでしょ」
「どんな偏見よ、まずその定理ならあんたもヤンキーになるけど」
「俺は、正当なサボりだからヤンキーじゃない」
「正当なサボりがあってたまるか」
彼は一体何を言いたいのか…
さっきから、全く話の意図が読めない。
上手く言えないが、本題を切り出すための
前置きの様な雰囲気が会話から滲み出ていて
なんとも言えない違和感がある。
違和感に耐えれなくて、何か他の話題をと
探していると、この状況を打破できるかもしれない話題を自信が持っている事に気がつく。
「そういえば私とあんた、付き合ってるって噂が流れてるけと大丈夫?」
「大丈夫とは?」
「ほら、あれ、あんたモテるんでしょ?ブランド的に大丈夫かな?って思って」
「ん?大丈夫だけど?」
ん???大丈夫なの???
予想していなかった返答に混乱を隠さない。
私の予定では、この会話で2人で解決策を考える話の流れになるはずが、向こうは問題視していないとなると
私が困る。
少なくとも、1年半できる限り平和を目標に高校生活を送ってきた私の日常が、最近の噂のせいで
色々崩れかけている。
周りでは、陰口、こそこそ話のオンパレード。
3年生の女子には睨みをきかされ。
唯一の気楽な友人巴にまで、質問攻め。
「私が困るんですが…」
恐る恐る、会話を予定の路線に引き戻すため
会話を続けてみる。
「困るの??」
「まぁー、まず何でこういう噂が出たのかも不思議で…」
「あ〜それは多分俺が、要人に告ったってクラスの奴らにバレたからかな〜」
「あーなるほど、え?!?!?!」
「だから〜、一緒に帰った日、告った現場をクラスの奴が見てたらしくて、問いただされたから」
「ちょ、ストップストップ!」
私の聞き間違いなのだろうか?
彼は今、私に告白したと言ったのだろうか??
全く身に覚えが無い。
一緒に帰った日?私が早退したあの日?
あの日は帰り4キロの距離をダラダラ帰りながら
生産性のない会話を主に彼が繰り広げた
あの日の事だろうか?
あの日は、最初から私の頭の中は、早く帰りたいの
一言を頭の中が侵略しすぎていて
彼の話はあまり覚えていない。
思い出せ!彼は何を言っていた??
「あ…、"俺多分好きだと思う"」
「覚えてんじゃん、忘れてるんかと思った〜」
「いや、今の今まで認知して無かった」
「うそ!悲し〜」
「何かごめん」
「いやでも逆に良かったわ〜、認知されてて2週間待たされたらたまったもんじゃない」
「ごめん…」
「普通の男は、2週間待てないと思うぞ〜」
「すみません…」
「いや、そこまで謝らなくてもいいって〜」
今まで自分にこういう経験が無さすぎて
完全に守備範囲外だった。
恋愛から程遠い存在の私には、彼の告白は
難易度が高すぎたみたいだ。
流石に申し訳ない事をしたと思う。




