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目覚めて始まる異世界生活〜チートが無くても頑張って生きてみる件〜  作者: どこでもいる小市民
第六章〜主人公記憶喪失編〜
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仲間への説明、トキヤの確認

記憶喪失となったトキヤ様を残すのは忍びないですが、ここは少し我慢してもらいましょう。なんと言ってもトキヤ様です。大丈夫なはずです。


……ですが、トキヤ様は弱いです。みんなの前では気丈に振る舞っていますが、私はトキヤ様の心の弱さを知っています。あの日の夜の出来事を。


……ごめんなさいトキヤ様。もう少しだけお待ちください。チワはそう思いながら、最優先で起こすべき二人に声をかけた。


「ルナさん、アクシオスさん、起きてください」


「はっ!……私は一体……?そうだ、トキヤ君はどうなったんだ?あの男は一体?」


アクシオスさんがすぐに目覚めた。やはり日頃の訓練などでも、非常事態の時のために、すぐに起きれるようにしてあるのだろう。


「落ち着いて聞いてください。簡単にまとめますと、私たちは敵も含めて全員生きていて、ルナさんも無事です。トキヤ様は無事と言っても良いのかは分かりかねますが。まずは一応皆さんの傷が無いかを確かめて、あったのならそれを回復してください。私はルナさんを起こしますので」


「あ、あぁ。了解だ」


私の説明にアクシオスさんは少し驚きつつも、ガルーダさんやグラシアさんなどの傷の手当てを開始した。皆さんは未だに眠っています。起こすのは後でいいでしょう。次に私はルナさんを起こしました。


「あれ?……そうだわチワさん!トキヤは一体どうなったの?」


私はそう言うルナさんに、アクシオスさんと同じような説明をして回復担当に回しました。そしてアヤハさん、キョウカさんと白殺虎以外の人たちは無事に目をさましました。


「あれ?俺は確かあの女の子にやられて、それから……どうなったんだ?」


「ふぇぇ?私も確かフードの仮面の男の人にやられたと思っていたのです〜。一体何があったのですか〜?」


アレクさんやグラシアさんなど、色々な人たちがこの状況を理解しておりません。まぁ、理解しろと言う方が酷なのでしょうが。


「皆さん、とりあえず落ち着いてください。今から私の知っている情報は全て話します。ですがその前に、アヤハさん、キョウカさん、白殺虎に拘束魔法などを掛けてください」


私はそう言った。本来敵を助けるなんてまっぴらごめんです。ですが、トキヤ様が生き返らせたのですから、何かしら理由があるのでしょう。


「ふえぇ!なんで生きているんですか〜⁉︎」

「うわぁっ!な、なんで生きてんのよ⁉︎」


グラシアさんとマージュさんが驚きながらそう言う。

皆さんを落ち着かせるのにとても時間が掛かりました。あぁ、トキヤ様がとても心配です。魔物は近くにはいないでしょうが、記憶喪失状態のトキヤ様を一人にするのはとても心配です。


「ところでチワさん。トキヤの奴はどこに行ったんだ?あいつには一応助けてもらったんだ。まさか死んだと言うことはあるまい。トキヤは俺のライバルなのだから」


アランさんが皆が気になっていたと思われるトキヤ様のことを聞いてきました。クラディスさんたちも頷いています。


「……皆さんはトキヤ様のあの力を見たと思います。……あれはトキヤ様に大きな代償を引き換えにして使うスキルなんです。詳しい情報は省きます。そしてしんじられないかもしれませんが……トキヤ様は記憶喪失となってしまいました」


それからの皆さんの混乱は想像以上でした。全員がそんなことはトキヤ様に限ってあり得ない、などと否定的な意見ばかりです。


記憶喪失状態のトキヤ様に一斉に近づかれるのは少し心配ですが、実際に会わなければ信じてはもらえないレベルです。皆さんも落ち着いてきたのか、ルナさんが質問をしてきました。


「チワさん……つまりトキヤは私たちとの記憶を失っていて、異世……だいたい半年前までの記憶がないから、どうすれば良いのか分からないって事よね?」


「そうですね。トキヤ様の記憶を取り戻すのは満場一致で賛成なのですが、問題はその方法です。……一体どうすれば記憶は戻るのでしょうか?」


皆が黙り込む。……トキヤ様ならこんな時はどうするでしょうか……?


ドスン!


近いようで遠い距離で、少し大きい音が響きました。なんの音でしょう?皆さんも一瞬黙っただけで、特に何もないように考えるのを再開しました。……本当にそんな危機感もなくて良いんでしょうか?


……そうだ、トキヤ様なら……。私の頭が一度冷静になったことによって、案が浮かびました。先ほどの音に感謝をしなければなりませんね。でも、なんの音でしょうか?


「え、えっとですね。話題を変えますが、後ろの二人と一匹は、私たち同様にトキヤ様が生き返らせたと思うんです。ですから、少なくとも殺すようなことはしないでくれませんか?私たちは命を掛けたのは分かってはいるのです」


トキヤ様ならまずは解決できそうな話題に行くはずです。難しい問題の先送りとも言うかもしれませんが。

皆さんは顔を見合わせて、ニコッと笑ってくれた。


「トキヤは俺たちを生きかえらしてくれた。なら、これくらいのトキヤのわがままは聞く。だが、あの二人も無罪とはいかないだろう」


アランさんがみんなの意見を代弁してくれました。確かに国家反逆罪などの罪を問われるでしょう。さらに言えば、それを手助けしたトキヤ様自身もです。ですが、もしそうなったとしても、私だけは死んでも守り切ります。


「一応言えば俺は黙っておいてやる。ヘプトにだけは話すつもりだがな。この件の処罰は全てが終わってからの方が良いだろう。団長がどうするかは知らないがな」


ガルーダさんが私に対してそう言ってくれた。その事はありがたいと思ったのだが、アクシオスさんとグラシアさん、アランさんが驚いた顔をして、ガルーダさんを見ていた。


「が、ガルくんの頭が良い!おかしいです師匠!絶対にどこか頭を打ってますよ!」


「ガルーダ!お前本当に傷は無いんだろうな!」


グラシアさんとアクシオスさんがガルーダさんに向けて若干……結構失礼な事を聞いている。……まぁ、トキヤ様も見たような事は前に言っていましたが。


と言うかこのぐらいでここまで言われるなんて、一体職場ではどんな感じなのだろうか?少し興味が湧いてしまった。


「そうと決まればトキヤ君の元へと向かうべきだが……この二人と一匹を残しておく方が危険だな。見張りをつけようにも、拘束魔法を解かれて殺されるのがオチだ。トキヤ君を連れて来る方が良いと思う。この二人と一匹への抑止力となるかもしれん」


アクシオスさんがそう言いました。確かにそうですが、今のトキヤ様の近くに危険な人を置いておくのはちょっと……いえ、ここは一番安全な場所でもありました。いざという時にトキヤ様も守れますし、それで良いと思います。


「分かりました。トキヤ様を呼んできます。この二人と一匹に対する打ち合わせもしたいですし」


私はそう言ってトキヤ様の元へと向かった。


***


さて、めちゃくちゃ可愛かったあの子から、名前を聞くのを忘れた事のダメージからは立ち直ったはずだ。


この世界は一体どこなんだろう?異世界だよな?あの子みたいに尻尾なんか生えている亜人なんかもいるだろうし。


……魔法もあるのかな?一応転移か召喚されたんだし、何か一つぐらいチートもあるんじゃ無いかな?だってそうでもしないとあんな美少女が俺なんかに優しくするなんておかしいもんな。


……でも、やり方が分からないな。そうだ、俺は剣も持っている。元剣道部なんだし、もしかしたらそっち方面で強いとか?


俺は腰に帯びた一本の剣を引き抜く。重……たくはないな。ぱっと見で持てなさそうな重量を感じたんだが……あれ?俺ってこんなに力あったっけ?……絶対になかった。なら、これも未来の俺が頑張った証ってことか?


よく見ると全然体つきが違う。身長も少し伸びている気がする。……どのくらいの時間をこっちで過ごしたんだ?


とりあえずジャンプ力でも試すか。装備も見たところ、防具よりもはるかに重たそうだしな。まぁ、せいぜい今の俺ぐらい跳べたら良い方だろう。俺は剣を鞘に戻し、思いっきりジャンプをしてみた。


「うぉっ!」


俺は驚いた。まさか自分の身長以上の約2メートルも跳べるなんて!しかもこんなに今の俺ならジャンプすらできなさそうな装備を身につけてで。


俺は未来の俺が鍛えた自分の体を知りたくなって、全速力で走ってみた。案の定、こんな装備をつけているのに今の俺より全然速かった。


な、何をやったらここまでのハイスペックになるんだ?この身体能力がもう既にチートなんじゃ?……いや、それは無いな。


俺は自分の周りにあるクレーターを見てそう言った。あの美少女の事で頭がいっぱいだったからさっきは気づかなかったが、これはどう考えても人の仕業とは思えないな。


この力の前には俺のこの身体能力も意味をなさないだろうし。多分このクレーターを作った奴にでも俺はやられたんだろうな。そして現在記憶喪失と。


……起こったことが多すぎて、頭がパンクしそうだ。……俺は、何かあって記憶喪失になったのだろう。あの子に聞けば分かるのかな?


「トキヤ様、遅くなってすみません」


チワさんがいつの間にかそばに居た。いつの間に?


「うおっ!……あ、いや、別にそんなには待ってないよ。えっと……そう言えば君の名前を聞いてなかったんだけど、なんて言うのかな?」


よ〜し、完璧な受け答えのはず。若干キョドッてしまったが大丈夫なはず。


「あ、そう言えばまだ今のトキヤ様には言ってませんでしたね。私の名前はチワと言います。チワとお呼びください。前のトキヤ様もそう呼んでおりましたので」


「うぇ!……俺って君のーー」

「チワです。チワとお呼びください」


チワさんにそう言われた。


「……えっと、分かったよチワさーー」

「ですからチワですってトキヤ様。さん付けはやめてください。むしろトキヤ様にさん付けされる方が嫌ですので」


「あ……そう、なんだ。分かったよ……チワ」


「ふふっ、ありがとうございます」


チワと言う名の美少女は俺がそう呼ぶと、ニコリと微笑まれながらそう言った。その笑顔がとても可愛かった。


「あ、それでなんでこちらに?」


「はいトキヤ様!事情を説明しました。さ、皆さんがお待ちです。みんなトキヤ様の大切な仲間だった人たちです。記憶が無くてもきっとトキヤ様なら仲良くなれるはずです」


チワさんは俺に綺麗な手を差し伸べながらそう言った。俺は少し顔を赤くしながらその手を取った。手汗大丈夫かな?


俺はそう考えながら、何故手を出されたのだろうか?と考えていると、次の瞬間チワさんにそのまま腕ごと引かれて、あっという間にお姫様抱っこを……された。


「さ、行きましょう」


「……はい」


……なんか情けね〜。俺は俺が嫌いになった。……チワさんの胸が当たっている。柔らかい。……俺はこの事を一生の思い出にしようと考え、次の瞬間、意識が飛んでしまった。一生の後悔を作ってしまった。

面白かったら感想、誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。

あと、私のもう1つの連載作品の

『普通を求めて転生したら、剣の勇者の息子で杖の勇者になっちゃった〜剣技と魔法で最強〜』

も、是非読んで見てください。

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