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劣等剣士の物語(仮)  作者: 清乃 誠
第一巻 三話 突然の出来事
25/37

25ページ

 とても不思議な世界だ。上下左右見分けがつかない。どこを見ても真っ白な世界。空も太陽も無いのにやけに明るい何も無い場所だった。


「ここはどこだ?」


 フェイトはそう言って辺りを見渡す。するとロードメルトの姿があった。少し離れた位置で笑みを浮かべてこちらを見ている。


「副隊長!」


 フェイトは声を上げて走る。そしてロードメルトに近づいた。しかし目の前まで行った瞬間にロードメルトの姿が消える。


「副隊長? ロードメルトさん!」


 ロードメルトを探すがどこにも居ない。


「フェイトー」


 後ろからフェイトを呼ぶ声。振り返るとワイスが居た。


「ワイスさん!」


 フェイトは走る。だが、またしても目の前まで行った瞬間、ワイスが消えた。


「どうして、みんなどこにいるんですか⁈」


 真っ白な世界でフェイトの叫び声が響き渡る。だが返事が返ってこない。訳がわからずにただただ周りを見渡すフェイト。


「おーい! フェイトー!」


 エミリアの声だ。フェイトはすかさず後ろを振り返る。するとエミリア小隊の仲間達が揃っていた。みんなが笑みを浮かべてこちらを見ている。


「皆さん!」


 フェイトはそう叫んで走りだした。すると視界がだんだんと眩しくなってきた。エミリア小隊の仲間達の姿が光の中に隠れていく。


「皆さん! 待って下さい!」


 眩しさの所為せいで目の前が見えなくなった。そして全身に鋭い痛みが走る。


「っ!」


 目を開けるとそこは真っ暗な世界に変わっていた。冷たい風が吹いていて、木々が風になびく音。


「うぅ!」


 フェイトは唐突にきた吐き気に耐えられず肘を地面について嘔吐した。辺りは血の匂いが蔓延していて、独特の異臭が漂っている。


「みん、な……」


 身体の激痛を堪えて立ち上がると辺りを見渡した。


「________‼︎」


 辺りはどこもかしこも血だらけで人の身体の一部であろう肉の塊が散らばっている。木々は強引になぎ倒されていて森の中とは思えない景色だ。よく見ると一際大きな肉の塊がある。


「ルード……さん……」


 そう呟いたフェイトは、吐き気に襲われて嘔吐する。その肉の塊はルードだった。顔がねじれて手足が無い。光を失った瞳がこちらを見ている。


「誰か、誰か生きてる人わ……」


 フェイトは口を拭っておもむろに歩き出す。漂う異臭と身体に走る鋭い痛みで気絶しそうになる。だが歯を食いしばって堪えた。


仲間達の死体の一部であろう肉の塊を踏まないように歩く。途中でロメルダやエイミーの死体を見つけた。心臓の鼓動が速くなり涙がこぼれる。胸が痛い。そのまま地面に膝から崩れ落ちそうだ。


だが、今は生き残った仲間を探さないといけない。フェイトは仲間を探す為に必死に歩いた。


「誰か!」


 フェイトは叫んだ。しかし返事は無い。その事が悔しくて辛くなる。何もかもに絶望してうつむく。しかし諦めてはいけないと思い視線を上げた。


その時、フェイトの視線が倒れた木の陰から空に向かって伸びる手を捉えたのだ。小刻みに動いている。フェイトは焦って走ろうとして転ける。しかし、すぐに立ち上がってその手のある場所に向かった。


「エミリアさん!」


 その手はエミリアのものだった。


「フェ……イト?」


 息がある。フェイトはその事が嬉しくて声を上げそうになった。しかし、倒れているエミリアの状態を見て節句する。


髪の毛が乱れて額から出血している。太い木の枝が腹に突き刺さっていて両足が変な方向に曲がっていた。目を覆いたくなる程に酷い姿だ。


「エミリアさん! まさか、そんなどうして!」


 フェイトは姿勢を倒してエミリアの顔を触る。


「良かった……フェ、イトが、生きてて……」


「こんな……」


 フェイトは涙をこぼす。


「ごめん、ね……。あなたを、さい、ごまで、育てたかったけど……駄目、みたい」


 エミリアは苦しそうに話す。


「そんな、謝らないでくださいよ! 死なないでくださいよ……」


 フェイトがそう言うと、エミリアは右手をゆっくりと伸ばしてフェイトの頰を触った。


「あなたは……強い、子、だから……大丈夫」


 フェイトはエミリアの右手を握りしめた。そして涙を流す。


「最後に……おね、がいがあるの……」


 エミリアはそう言って左手に握った自分の愛剣であるエストックをフェイトに近づける。


「エミリアさん?」


「これ、を……イレーナに渡し、て、ほしいの……。あの子欲しが、ってたから……」


「最後なんて言わないでくださいよ……」


「お願い……」


「わかりました……」


 フェイトはそう返事をしてエストックを受け取った。剣を離したエミリアは左手を自分の胸に当てる。


「よかった……。フェイ、ト?」


「はい」


「あの子を……お願い……。もうすぐ、で……騎士に、なるかも、しれないから……」


「イレーナの事ですね……。わかりました……」


「ありが、と……」


 エミリアの右手から力が抜けていく。そして彼女の瞳から一雫の涙が流れ出る。次第に瞳から消えていく光。エミリアの左手が地面に落ちた。


「エミリア……さん? そんな、エミリアさん!」


 エミリアからの返事は無かった。表情が崩れてまぶたの奥から涙が溢れ出る。激しい喪失感が心を支配し、言葉にならない嗚咽を吐いて泣き崩れた。

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