番外編 力の暴走
シェルは半妖の力に乗っ取られ暴走していた。
全員で止めに入ったが、桁違いのそのパワーになす術もなくやられてしまう。
フローナの目の前にシェルが立ちはだかる。
メリサは左足を負傷したレンを支え、コキアは脇腹の怪我を押さえながら木に寄りかかって座っていた。
メリサ「フローナちゃん!!」
レン「フローナさん!!」
コキア「ふ、フローナさん・・・。」
フローナ「シェル、私だよ、フローナだよ。」
フローナは血が流れている右腕を押さえながら必死に言葉を振り絞った。
剣を振りかざしたままシェルが一瞬躊躇する。
フローナ「今、つらいよね、ごめんね。
守ってあげられなくてごめん・・・。」
しかし、すぐに剣は振り下ろされ・・・。
キイィン!!!
シェル「!」
一緒の出来事だった。
遠く離れた場所から一瞬でこの場所まで飛んで来た。
そんなことができるのはキリュウ以外にいない。
キリュウの剣がシェルの剣を止めたのだ。
フローナ「きりゅくん・・・?」
キリュウ「馬鹿野郎、何やってんだよ。
シェルとキリュウの剣がカチカチと音を立てる。
キリュウ「くそっ、バカ力め・・・。」
フローナ「お願いキリュウ君、シェルを助けて!」
キリュウ「ったく、自分が殺されそうになってんのにコイツの心配かよ。
お人好しもいいとこだな。」
キンッ!!
キリュウの剣がシェルの剣をなんとか跳ね返す。
一旦後ろに飛んだ二人は剣を構え睨み合う。
キリュウ「死んでも恨むなよ。」
シェル「うおおぉっ!!!!」
シェルが雄叫びを上げた。
ビリビリと周りの空気がピリつく。
そして、キリュウ目掛けて飛び込んで来た。
キンッ!キンッ!
短い金属音が飛び交う。
どうする、このまま闘いを続ければ俺もシェルも死ぬ。
腕力じゃ敵わねーが、速さなら俺の方が上。
一か八か、一瞬の隙を狙うしかない。
シェルが一瞬、力を抜いた、かのように見えた。
キリュウ「!」
ダンッ!!!
キリュウがすかさずシェルの最後へ回り、
剣を首に向けた。
フローナ「シェル!!!」
キリュウの手が僅かに力を無くした。
その瞬間、シェルの強烈な蹴りがキリュウの腹に命中した。
数メートル吹っ飛ばされ、膝をつく。
キリュウ「ゲホッゲホッ!・・・。」
キリュウの口から血が垂れた。
シェルがキリュウを見下ろす。
シェル「何故、手を止めた。」
キリュウ「正気の時でなきゃ勝ったことにならねーんだよ。」
シェルがギッとキリュウを睨む。
剣を振り下ろそうとしたその時だった。
そんなキリュウの所へ駆け寄ったフローナが両手を広げて立った。
フローナ「シェル!!!!」
キリュウ「ばっ!!!」
ぱああっ!
フローナの体が突如光り始めた。
負傷していない左手を前に突き出すと光が一気に集まり、シェルの体を吹き飛ばした。
ブンッ!!
シェル「ぐあっ!!!」
シェルが背後にあった大きな木に激突し、意識を失った。
どうやら暴走は止まったようだ。
ふらっ。
フローナが倒れ掛け、キリュウが咄嗟に支える。
キリュウ「っと。おい、大丈夫か!?って寝てんのか・・・。」
フローナ「すうすう・・・。」
すると離れた場所からメリサが話しかけてきた
。
メリサ「キリュウ君ー!フローナちゃんは、テレーゼの力を使って疲れただけだよー!」
レン「とりあえず、寝かせてあげて下さーい!」
キリュウ「へいへい。」
シェル「っ・・・ん・・・あれ、キリュウ?なか、まは!!!」
シェルは目を覚ましたがまだ混乱しているようだ。
キリュウ「仲間なら全員無事だ。」
シェルはその言葉に冷静さを取り戻し、辺りを見渡した。
全員が生きている事を確認すると安堵の息を漏らした。
シェル「はー・・・良かった。また助けられちまったな。」
シェルが寝ているフローナを見て頬を緩ませた。
キリュウ「良くねーよ、馬鹿。」
ゴンッ!!!
シェル「いたっ!」
その直後、キリュウがシェルの頭に強烈な拳を下ろし、たんこぶが出来上がる。
ジンジンする頭を両手で押さえると涙目で訴えた。
キリュウ「全く、世話の焼ける奴だな。」
シェル「キリュウ、まじで助かったよ。
おかげで仲間を殺さずに済んだ。怪我はさせちまったが・・・。」
キリュウ「別に。それより。」
シェル「?」
キリュウは腕の中で眠っているフローナに一瞬目を落とすとシェルの方を真っ直ぐに見た。
キリュウ「次、泣かせたら許さねーからな。」
シェル「!・・・ああ、肝に銘じておくよ。」
メリサ「何話してんだろね。」
レン「フローナさんのことじゃないですか?」
コキア「そうだと思います。」
メリサ「コキア君、唇読めるのかい!?」
コキア「ええ、軍隊にいた時に教わりましたら。」
メリサ「それで、二人はなんて話してるんだい?」
コキア「フローナさんを・・・。」
シェル&キリュウ「「ちょっと待て!!!」」
コキアが続きを喋る前に二人が勢いよく叫んだのだった。
後日。
フローナが目覚めた時、キリュウはすでに旅立った後だった。
シェル「ちびすけによろしく、だって。」
フローナ「そっか・・・ありがとうって言いたかったな。」
シェル「また会えるさ。」
フローナ「うん。」
シェル「フローナ、怪我させてすまなかった。」
シェルが頭を下げる。
フローナ「仕方ないよ、力に乗っ取られてたんだもん!」
シェル「いや、それでも仲間を傷付けたのは事実だ。キリュウに怒られたよ、そんなんじゃ隊長失格だって。」
フローナ「キリュウ君が・・・。」
シェル「それと、仲間も俺のことも守ってくれてありがとう。」
フローナ「私の力じゃないけどね!」
シェル「いや、歴としたフローナの力さ。
魂が合わなければ力は使えないはずだからな。」
フローナ「えへへ!良かった守れて!」
シェル「しばらくはこの街で療養することになった。買い出しは全て俺持ちだとさ。」
フローナ「あはは、それくらいは罰受けないとね?」
シェル「フローナも段々アイツらに似てきたな。」
フローナ「えー?そうかなー?」
レン「隊長ー!フローナさーん!ご飯出来ましたよー!」
シェル「ぶすくれたレンが待ってる、行こう。」
フローナ「うん!」
レンがおたま片手にシェルを睨む。
レン「俺は元からこういう顔です。」
シェル「やだ、聞いてたのレンちゃん。」
メリサ「レン君も今くらい料理作るの変わったらいいのに。足痛めて杖付いてるんだからさ。」
フローナ「私もそう言ったんですけど。」
レン「何かしてないと気が済まないタチなんですよ。」
シェル「よし、なら次は俺が作ろうか。」
レン「あなたはキッチン出禁です。」
シェル「えー、何もそこまで・・・。」
レン「ダメです。あなたはあと三ヶ月間、
買い出しや備品集め、それから森で肉が調達できる場合は狩りをする任務があるでしょう。」
シェル「人使い洗いなー。」
フローナ「私、手伝うよ?」
シェル「フローナ!!!」
レン「フローナさん、隊長を甘やかしてはいけません。これは隊長への罰なのですから。」
フローナ「だって!」
シェル「くそー、レンの奴、フローナを味方に付けやがって・・・。」
メリサ「ま、仕方ないさね。この中で元気なのは隊長だけなんだから。」
しゅんとしているシェルがちょっと可愛く思えてしまって。
これはまだ二人が付き合う前のお話。




