民俗学者の現地調査
某大学 民俗学研究室 准教授 望月の手記
2024年3月25日
40年間、私は「猫憑き」伝承を研究してきた。 そして、ついに祢古町にたどり着いた。 全ての伝承の源流がここにある。
以下、現地調査の記録:
第1日 音無神社を発見。 予想通り、本殿の地下に巨大な空洞。 壁画が残っている。 人間が猫に、猫が人間に変化する様子。 これは宗教画か?記録か?
第2日村の図書館らしき建物。 蔵書はすべて「変化」に関するもの。 「人の皮を脱ぐ方法」 「真の姿に還る術」 「名前という呪縛からの解放」
一冊だけ新しい本。 「おかえりなさい、望月教授」 私の名前が...
第3日 調査を続けるうち、奇妙な既視感。 この道を歩いたことがある。 この建物に入ったことがある。 いつ?
古い写真を見つけた。 明治時代の集合写真。 その中に、私と同じ顔の人物。 いや、私自身?
第4日 理解した。 私は調査に来たのではない。 帰ってきたのだ。
40年間の研究は、 帰巣本能だった。
第5日 もう学者ではない。 もう人間でもない。 ただ、本来の自分に戻るだけ。
最後にこれだけは記す。 祢古町は特別な場所ではない。 どこにでもある。 忘れていただけ。
人間という夢から覚めれば、 誰でも帰れる。
大学への最後の連絡
望月准教授から研究室へのメール 2024年3月26日 3:33
件名:研究完了
長年の研究が実を結びました。 「猫憑き」の正体を解明しました。
憑かれるのではありません。 思い出すのです。
詳細は追って報告します。 いえ、その必要はないでしょう。 皆さんも、いずれ思い出しますから。
にゃあ。




