地方新聞記者の取材メモ
黒部晃一(地方紙「県央日報」記者)の手帳
2024年2月20日(月) デスクから奇妙な指示。 「最近のペット失踪の件、調べてくれ」 ペット?社会部の俺が?
失踪届(警察調べ) ・犬:3件 ・猫:127件 ・その他:1件
明らかにおかしい。
2月22日(水) 飼い主への取材。 「最後に見た時、人みたいに立ってた」 「名前を呼んでも振り向かなかった」 「目が...人間の目だった」
ボツ確定の内容。
2月25日(土) 町内で奇妙な通報記録を入手。
・2/10 深夜2時「猫の集会を見た。100匹以上」 ・2/15 早朝「猫が一列で山に向かっていた」 ・2/18 夕方「廃屋から猫の話し声」
全て「確認できず」で処理。
3月1日(火) 廃屋の場所を特定。旧商店街の外れ。 中は異様な臭い。甘くて、生臭い。 壁に無数の爪痕。 いや、よく見ると文字?
3月5日(土) 編集長に記事を提出。 1時間後、呼び出し。 「これは載せられない」 「なぜです?」 「上からの指示だ」
書き直せと言われた。 「春の珍事件・猫の大移動」 ほのぼの記事に改竄。
3月8日(火) 同僚の山田が失踪。 最後に取材してたのは「祢古町」の噂。 デスクは「体調不良で休職」と説明。 嘘だ。
3月10日(木) 山田のデスクから手帳を発見。 最後のページ: 「祢古町は実在する。 場所は 政府は知ってる。 隠してる。 もうすぐ全部」
ここで途切れてる。
3月12日(土) 夜中、編集部に山田から電話。 でも声が変。 「記事にしないで」 「なぜ?」 「もう遅いから。みんな帰る」 「どこに?」 「にゃあ」
切れた。
3月15日(月) 俺も呼ばれてる気がする。 取材メモを全部シュレッダーにかけた。 でも、この手帳だけは残す。
もし俺が消えたら、 これを読んだ人は逃げてくれ。
いや、もう遅いか。 読んだ時点で、あなたも
県央日報 2024年3月20日 朝刊
「春の珍事件 - 猫の大移動を確認」
県内で猫の目撃情報が相次いでいる。専門家は「繁殖期による自然な行動」と分析。微笑ましい春の風物詩として市民の話題を集めている。
(記者:黒部晃一)
※黒部記者は3月21日より病気療養のため休職




