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この町のネコ、やっぱりおかしい  作者: 大西さん
そして発見された記録たち
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篠田栄子の看護日誌

桜木認知症専門病院 / 看護記録


記録者:篠田栄子 病棟:3階東(重度認知症)


1985年4月10日 新規入院:山田トメ(82歳) 主訴:「猫に呼ばれている」との妄想 既往歴:特になし 備考:深夜の徘徊時、四つん這いで移動


1985年4月15日 山田氏、他患者と「会話」している様子。 ただし相手は誰もいない場所を見ている。 「そうね、もうすぐね」と繰り返す。


1985年5月2日 夜勤中、3階東の患者8名が同時に覚醒。 全員が窓の外を見ていた。 「帰りたい」と口を揃えて言う。 窓の外には何もいない。見えるのは闇だけ。


1985年5月10日 山田氏の言葉を記録: 「あんたも見えるようになる。猫の本当の姿が。 人間なんて仮の姿。思い出すよ、いずれ。 私らは先に思い出しただけ」


1985年6月1日 患者の田中氏(78歳)が失踪。 防犯カメラには四つ足で走る姿。 警察は「認知症による徘徊」として処理。 でも、あの動きは...


1985年6月15日 私にも見え始めた。 患者たちが見ているもの。 廊下を歩く、人とも猫ともつかない影。 薬の副作用?疲労?


1985年7月20日 山田氏が私の本名を呼んだ。 「栄子さん、祢古町を覚えてる?」 知らないはずなのに、懐かしい響き。 頭痛がする。


1985年8月5日 夢を見る。地下深い場所。 壁が脈打っている。 そこに私の写真がある。 いつ撮られた?


1985年9月10日 理解した。 認知症患者は病気じゃない。 思い出している人たち。 人間の皮を脱ぎ始めた人たち。


1985年10月1日 最後の記録。 もう隠せない。 孫の悠真には伝えたい。 「呼ばれても行くな」と。


でも、きっと無駄。 血は争えない。 いずれ彼も思い出す。


私たちが何者だったか。


[以降、日誌は白紙]


病院の事故報告書


1985年10月2日 看護師の篠田栄子が無断欠勤。 自宅を確認するも不在。 部屋には大量の猫の毛。 認知症病棟の患者12名も同日失踪。

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