逆鱗
夜も更け深夜になった。今こそ動く時か、とリリスと二人北東に向かう。
リリスを両手で抱えながら、風の魔術で走って移動していた。
「味方は今頃撤退しているでしょうね」
「そうだな、あそこまで壊滅したら撤退しているだろうな」
リリスはこちらを見上げながら、
「食料を焼き払って、帰ってこれるんでしょうか」
と言われ、
「そうだな・・・食料をある程度拝借して燃やすか」
あまり帰りのことは考えていなかったので助かった。よく考えたら食料不足で自分たちが帰れない所だった。
自分たちが持っている食料は三日分、さらに一日分は崖の上で食べていた。しかし帰りの行程は最低一週間。風の魔術を使って移動するにしても最低一日はかかるところだ。休みも挟めばギリギリ三日の行程と見たほうがいいだろう。
何が起こるかもわからない、多少多めに拝借しておくか。
そうして食料庫らしき付近についた。探知の魔術を使うが誰も付近にいない。周囲の建物には魔力を感じるが、おそらく寝静まっていることだろう。
「食料庫はここか、それ以外にも建物があるからそれもある程度火を放っておくか」
油紙は幾つかあった。食料庫を焼き払うのに全部使う程でもないだろう。
「リリスは万が一敵が出てきた時に敵を倒してくれ、こちらは火をつけて回る」
それにリリスは、わかりました、と答えた。
それに頷き行動を開始する。食料庫に忍び込み、食料を確認。ある程度食料を拝借し、残りは油紙を幾つかひき火の魔術で火をつける。
最初は小さな火、しかし時間とともに一瞬で火が大きくなり燃え広がった。
それによし、と満足するように呟き食料庫から脱出する。
さらに魔力を多く確認出来る場所、きっと兵達が寝ている宿舎なのだろう。そこにも油紙をひき火をつけた。それは小さく火がついているがすぐにも大きくなることだろう。
そして次に探したのは武器庫だった。油紙がなくなったので回収に来たのだ。魔力も感じない建物があったのでそこに入り込み、確認すると見事当たり、武器庫だった。
そこから弓矢を拝借し、油紙を大量にかき集めた。そしてそこにも火を放ち、油紙が大量にあったせいだろう。こちらは一気に火が燃え広がった。
───と
「か、火事だあああああ!」
声がした。どうやらばれたらしい。
だが、もう手遅れだ。食料庫は大きく焼けているし、敵兵もある程度焼け死んでいるはずだ。
死んでいなくてもこの混乱、どうにでもなるだろう。
そう思い、今度は建物の上に風の魔術で飛び乗った。そして弓を構え、火矢をあちらこちらに放つ。
これで一気に火事になることはないだろうが、運がよければ大きく燃え広がるかもしれない。
とにかく目に入る建物に火矢を放つだけ放ち、矢がなくなったので弓矢を捨て撤退を図ろうとした時、
「早く逃げないと!」
女の声が聞こえた。しかし子供が、中に忘れ物が、と言いあっているのが聞こえてきた。
「お父さんに渡す絵が、燃えちゃう!」
「そんなのはいいから逃げましょう」
そういって母親らしき女は子供の手を取り逃げていく光景が目に入った。
絵か・・・。
と、思い崖上でのことを思い出す。もしかするとあの子供の物だったのかもしれない。
が、今は感傷にふけっている暇はなかった。撤退をしなければ。
広がる喧騒。おそらくリリスが暴れまわっているのだろう。早く合流して逃げなければ、と思った時
「やってくれるね」
赤いローブを身にまとった人間がこちらに向けて声を放つ。屋根の上にいるのに気づかれた。
「降りてきなよ、敵の司令官を叩くのは基本、だろ?」
が、しかし構わず撤退した。仕事は果たした。争う必要はない。
とにかくリリスとの合流を急いだ。
予定していた合流地点とは少し離れた場所にリリスはいた。寝静まって起きてきた武器も防具もつけていない兵士達を見つけては殺しているようだった。
「リリス、撤退だ。相当に火をつけてきた」
「分かりました、では」
そうして撤退を図るのであった。
背後では、追いかけろという声や火消しを急げ、と言った声が聞こえて混乱を極めているようだった。
だから無事に逃げおおせることが出来た。
真っ赤に燃える敵の陣を後ろに、
「思った以上に上手くいったな」
そうですね、とリリスと言い合っていると
パチパチ、と後ろから手を叩く音が聞こえてきた。
そちらを振り返り構える。
「これはしてやられた。考えていなかったよ」
赤いローブの男だった。傍には木製で出来た人形のようなものがあった。
「どうやらこいつを倒さない限りは逃げられないらしいな」
「そのようですね」
リリスはそう言うと槍を構える。
「二人でよくもやったもんだ。が、二人で勝てるほど僕は弱くない」
ローブの男は木製の人形の後ろに下がると、人形に向かって両手を出して魔力を込めているようだった。
すると人形がカタカタ、と言い出してこちらに凄まじい速度で突っ込んできた。
それを思い切り横に飛ぶことで回避する。
リリスは逆に飛んで回避しているようだった。そして顔を見合わせ
「なんだこいつは。人形を操る魔術師なのか・・・?」
「分かりません、しかし人形を破壊すれば問題はないはず」
それもそうか、と思いながら氷の魔力を掌に込め、ローブの男めがけ氷のつららを投げつける。
リリスは人形の方に向かい持っている槍を思い切り振るっていた。人形の胴が真っ二つになり、地面に落ちていた。
男は掌をこちらに向け、氷のつららを魔術妨害で消しながら
「いい判断だけど、甘いんじゃないかな?」
何が、そう思った時
「ん・・・」
リリスの声が聞こえてきた。見れば真っ二つにした胴の人形の上半身が空中に浮いており、リリスの首を締めていた。
ガラン、と槍が落ちる音が聞こえる。それを振りほどこうとしているがどうやらとてつもない力で締め付けているらしく振りほどけそうにないようだった。
なんだ、この魔術・・・。
見たこともなかった。
とにかく助けなければ、そう思いながら短剣を抜き、人形の手の関節部分を切り落とした。だが、手の部分だけが首を握りしめており、
「手まで破壊せんと無理か。リリス、すまん我慢しろ」
思い切り魔力を込め、人形の両手をそれぞれ右拳を振り砕いた。勢いでリリスが吹き飛ぶ。
地面に倒れ、ごほごほいっているリリス。どうやら無事らしい。
「さて、人形も粉々になったわけだが。これで終わりか」
「いいや、ここからが始まりだよ」
ローブの男はそう言うとリリスに向かって両手を向け魔力を放っていた。
「なっ・・・、おいリリス横に飛べ!」
が、遅かったようだった。
リリスは無言で立ち上がると、こちらに向けて攻撃をしてきた。
「おい、リリス・・!?」
それをぎりぎりで回避し、足払いでこかせる。
が、リリスは地面に手をつき起き上がり、赤いローブの男の傍に飛んだ。
どうなっている。
「ははは、どうなっているか分からないといった顔をしているね。まずは自己紹介からだ。操術師のミゲル・スカーレットと言う」
「操術・・・?なんだ、それは」
「見たろ、人形を操ったり、そうだね。人も操ることが出来る。こんな風に・・・」
そう言うと、ミゲルと名乗った男はリリスの胸を上から鷲掴みにした。しかしリリスに抵抗するそぶりはない。
「うーん、この子着痩せするのか。いいね、気に入った」
「おい、どういう、ことだ」
頭に血がのぼっていくのを感じる。
「もはやこの子は僕の物、お人形さんだ。さあ、自己紹介してごらん」
するとリリスは抑揚のない声で
「はい、ご主人様。わたくしはリリス・ティルファングと申します」
うーん、いい名前だね、とミゲルは嬉しそうに言った。
「・・・返せ」
「ん?何を返すんだい?リリスちゃんかい?この子は君の物なのかい?」
違うだろ、そう言ってミゲルはリリスを抱きしめ、頬をすり寄せ口づけまでしていた。
それに嫌がるそぶりはなかった。ただ棒立ちのリリス。
「さあ、見せつけてやろうね。僕達が愛しあってる様を」
見ればリリスはミゲルを抱きしめ、お互いに貪るように口付けを始めた。
見てられなかった。思わず目を背ける。
しばらく口づけの音だけが聞こえていた。気づけば地面の石ころを握りしめ、それが粉々に砕けた。
それが止み、
「いいね、その感じ。僕は大好きなんだこういう状況。さあ、リリス。槍を取ってそこの男を突き殺すんだ」
───と
「・・・わりします」
「ん?」
なんだ、おかしいと思った。
「お断り、いたします」
リリスだった。するとミゲルは大笑いしながら、これはいいと言い出した。
「まだ抵抗出来るんだね、けど無駄だよ。さらに魔力を込めたら、さてどうなるかな」
「っ・・・ヴェル様、逃げてください・・・」
それがリリスの最後の言葉だった。カクンと首が落ちてまた無表情になってこちらを見てくる。
無言で地面に落ちた槍を取りに行き、こちらに構えてくる。
「驚いたね、抵抗してくるのは稀なんだが。それほどに大事な男だったのかな」
ミゲルは嬉しそうに言いながらこう続けた。
「喜べリリス。その大事な男を君自身が殺せるんだから」
「はい、有難うございますご主人様・・・」
リリスはそう言い、バサリと黒い羽を展開し槍を構える。
───殺される
そう思ったその時
無表情のリリスの目から涙が流れ落ちるのを、見た。
死ぬ、ここで俺はおそらくリリスの手によって死ぬだろう。
だが、この男だけは絶対に許せなかった。
「安心しなよ、君が死んでも大丈夫だ。この女は僕がかわいがってあげるから」
その一言で目の前が真っ赤になる。
それは死の予感ではなく。純粋な怒りによるものだった。
と、同時に自分の中で何かが壊れる音がした。
「例え、この身がここで砕けようが───お前だけは絶対に許さない」
ここまでの怒りを感じたのは生まれて何度目だったか。
と、同時に全身に魔力が漲るのを感じた。
「な、なんだこれは」
ミゲルが狼狽している。大地が揺れ、俺を中心に強力な風が巻き起こる。
剣圧とは違う、純粋な殺気だった。
「や、やれリリス。あの男を突き殺せ!」
あわてて命じ、リリスがこちらに全力で突っ込んでくる。
が、それがとても遅く見えた。それを難なく横に飛び回避する。
「ば、馬鹿な。一体何が・・・」
自分自身何が起きているのか分からなかった。
見ればミゲルから太い魔力の糸のようなものがリリスに繋がるように見えた。
さっきまで見えなかったものが、見える。
さらに後ろにいたリリスが薙ぎ払いでこちらに襲い掛かってくる。
が、遅い。体当たりで思い切り吹き飛ばす。
そして風の魔力を込め、一足飛びにミゲルの方に飛ぶ。
「う、うわああああああああ」
「う、る、さ、いんだよこの野郎!」
悲鳴を上げているミゲルの顎めがけて左拳を叩きこむ。そして同時に両手に電撃の魔力を込め、頭を挟み込み命じる「動くな、魔術を使うな」
と。
「な、僕に何をした。身体が、動かない」
棒立ちのミゲル。鬱陶しいので足を蹴り座らせた。
「何をした?それはこっちの台詞だ。リリスに、何をした?」
「ははは、僕を殺せば彼女は元には戻らないぞ」
と言われ、そうか、と一言いいさらに追加で命令をした。「何があっても死ぬな、痛覚倍加」と
短剣を引きぬき、ミゲルの左手を地面につかせる。
そして手を広げさせ、
「子供の頃にこんな遊びをしているやつがいた。指の間に尖ったものでこう、交互につきさしていく遊びだ」
1、2、とこんな風に。と、ミゲルの小指の横を掠めるように短剣を突き刺し、次に小指と薬指の間を突き刺す。
「さて、問おう。どうすればリリスは助かるのか。10数えるうちに答えればよしとしよう」
「おい、待てよせやめろ・・」
「1・・・」
ストン、と短剣が落ちる。
「2・・・」
次の指の間にストンと短剣が落ちる。
「はったりだ、そんなのは・・・」
それに構わず
「言うのを忘れていた。数字が増えれば増えるほど痛覚が倍増するようになっている・・・10」
痛覚10倍。
ストン、と左手の掌の中心に短剣がめり込むように刺さった。
「うわああああああ」
10数えるのが面倒になり一気に10まで飛ばした。
「10・・・・10・・・10・・・」
壊れた人形のように10というたびに短剣をミゲルの左手に突き刺した。そのたびに悲鳴を上げる男。
「早く、言え。楽にしてやるぞ。10」
「はあはあ・・・何度も言わせるなよ、僕を殺せば・・・」
「そうか、では次は指の骨を折っていく。言え」
「出来るものなら・・・」
無言で小指の骨を折った。声にならない声をあげるミゲル。
「お前の悲鳴は聞き飽きた。次は全部折る、言え」
面倒なので返答も聞かずに一気に手の指を握り上に向け骨を全て折った。
「言う、分かった言う!だから・・・」
口元が緩んだ。
「気が変わった、やっぱり言うな。次は指を切り落とす」
そういって手の指を綺麗に揃え短剣を横に構え指の上に添える。
「な・・・お前まさか・・・」
「まさか、なんだ?」
「───知っていてわざと・・・」
「はっ・・・知るかよ」
短剣を一気にミゲルの指めがけて振り下ろした。
「うわああああ、僕の左手が。左手がああああ」
「左手だけで、済むと思っているのか?」
すると、ミゲルは息をのみ、
「おい・・・ま、まさか・・・」
「その前にやることがあったな。お前の散らばった指、全部踏み潰し粉々にする。いいな?」
そう言って立ち上がりミゲルの指ご本を粉々になるまで踏みつけた。
そして座っているミゲルの前でこう囁いた。
「さて、残り5本。言わなくてもいいぞ?」
「言う!言うから!この魔術は指から魔力を糸状にして放出して・・・」
そうじゃないだろ、と優しく言い
「そういうことじゃないだろう。お前が死んでもリリスが無事かどうか、それだけじゃないか」
出来る限り笑顔でそう言った。
「だから僕が死ねば彼女は永遠に戻らんぞ!」
「試すか」
即答だった。それにミゲルは、え、と間の抜けた声を出した。
「だから試そう。お前を殺して無事であるか否か。彼女は俺の臣下だ。死ねと命じれば死ぬだろう。何、戻らなかったら俺の手で殺してやる」
「お前・・・それでも本当に人間か!」
ミゲルにそう言われ、
「お前からそんな言葉が聞けるとは思わなかった。人を弄ぶお前から俺に人間か、と」
だが、といいおき
「元に戻らないアレはもはや臣下でも何でもない、ただのお荷物だ。必要ないものは捨てる、とても人間らしい考え方だろう?」
「お・・・お前・・・」
もちろん嘘だった。だが、この男を許すつもりは毛頭なかった。
「さて、残り5本。どこまで持つかな。後引きちぎった指から全て粉々に踏み潰す」
「た、頼む助けてくれ」
「何故助けを乞う。おかしいだろう。お前が死ねばリリスは元に戻らないわけだろう。ならば今までどおり胸を張って主張すればいいだけだろう。何故だ?ここに来て何故命乞いをするんだ?」
分からないから教えてくれ、と言うと
「済まない、嘘なんだ。俺が死ねば彼女は元に戻る」
「そうか、指から魔術の糸を出してそれで操っていたわけだな。永続性のある魔術であるようには感じられないが」
「時間さえかければ常に糸を纏わせ操ることが可能なんだ。もういいだろ助けてくれ」
それに少し考え、
「いや殺す。お前を生かしておく利点がない」
「そんな、この、人でなし!」
「お前から人でなしとは、笑いが止まらんな」
そう言ってミゲルを今度は仰向けに寝かせる。
「おい、何を・・・」
立ち上がり右足に魔力を込め、ミゲルの左腕めがけ思い切り踏みつけ、左腕を引きちぎった。
悲鳴が上がる。
だが構わず今度は右腕を、右足を、そして左足まで引きちぎった。
「な、何故だ・・・どうして僕は、死ねないんだ」
そう、通常そこまですれば人は死ぬ。だが、こいつには「死ぬな」と命じてあるので死なないのだ。
否
───死ねないのだ
「不思議か?そうだろうな、俺も不思議だ」
そう言いながらミゲルの心臓めがけて思い切り踏みつけた。もはやミゲルに心臓はなかった。
「ぎゃあああああああ、死ねない、死にたい、殺してくれえええええ」
だが生きていた。彼は死ねずに、まさに生ける屍としてまだ生きていたのだ。
「おいおい、お前を殺せばリリスは元に戻らないかもしれん。お前が嘘をついてる可能性がある。殺すわけには、いかんだろ」
するとミゲルは汗を流しながら、
「いや大丈夫だ、死ねば魔術は解除される。な?だから僕を殺してくれ・・・」
それに返答もせず無言で立ち上がり、リリスの方へ向かう。
どこへ、と後ろから声が聞こえるが無視をした。
そして倒れているリリスの傍にいき、もう少しで終わるからな、といいおきリリスの手から槍を取った。
槍はとても軽く感じた。
そうして、ミゲルの傍に寄り雷の魔力を込め、脳に「嘘偽りないか」と問い、嘘がないことを確認すると「次の一撃で死ね」と命じ
リリスの槍を思い切りミゲルの顔めがけて振り下ろした。
槍を右手で持ち、倒れているリリスの傍に寄る。
「起きろ、起きろリリス」
「う・・・ん・・・」
どうやら無事のようだった。リリスは起き上がり、
「わたくしは・・・一体・・・」
「大丈夫か?」
「はっ・・・ヴェル様・・・わたくしは。わたくし・・・」
「もう、いいから。全部終わったからな。そうだ、水筒がある。口をゆすげ、命令だ」
それに、リリスは、はいと言い、口の中、外と洗った。
その間に槍をそっと地面に置く。
「わたくしは、操られていたとは言え何という事を」
リリスはこちらを見ずに、自分を抱きしめるようにしながら言う。
「いいんだ、もう終わったから」
「あんな男と口付けを・・わたくし死にたいです」
「よせ、あれは事故のようなものだ。だから気にするな」
「いいえ、気にします。ヴェル様の前で・・!」
もういいから、と言いつつ目を合わせようとしないリリスを抱きしめ思い切り口づけをする。そして地面に押し倒し、リリスの口を貪るように吸い付いた。
「ヴェル・・・様・・・息が・・」
気にするな、と言った自分自身が一番気にしていた。リリスが他人と「こういう」行為をしている姿を見て腹がたった。そしてその怒りは未だ収まらない。
「罰だ、今はただ俺だけ感じろ。それで全て許す」
悔しかった、別に好きな女でもない、単なる主従の関係でいるだけだと思っていた。けれど違った。
俺は、この女を特別な存在としていたらしい。
でなければこの怒りは説明出来なかった。
ただ、ひたすらにリリスを貪り味わい尽くし。
その行為に耽る中、リリスは
「わたくしはヴェル様にとってもうお荷物なのですか?」と目を瞑りながら涙を流し、呟くように言ってきた。
さっきの言葉を聞いていたのか。
「馬鹿だな、あれははったりだ。お前は大切な・・・」
「大切な?」
「大切な人だ」
そう言ってリリスの頭を左手で抱え込むようにし、口付けをし舌を絡み合った。
そうして離れて、間近にいるリリスがこちらの顔を見て息を飲む。
「ヴェル様・・・目が」
「目?」
「ヴェル様・・・?ヴェル様は竜族なのですか?」
等と言い出し、どきりとした。
「何故、そんなことを?」
「ヴェル様、目が、竜の眼になっています」
一体何が起きているのか自分でも分からなかった。




