反撃
リリスと合流、本編。
崖を降りた俺はリリスと合流するべくリリスの方へ走った。
大丈夫なのか、無茶はしていないか、と考え、無茶は絶対にしていると内心諦めていた。
木の柵を壊した後、リリスは単騎で敵に突撃していった。引く気は一切ないようだった。
そんな彼女に俺がしてやれることはたった一つ。援護してやることしかない。
そう思い風の魔術を使いさらに加速し合流を急いだ。
そうして最前線についた。見ればリリスが単騎で槍を振るっていた。
もはや戦える兵がリリスのみしかいないのか、それとも戦う気力がないのか。
今はどちらでも良かった。
「リリス!」
思わず叫んでいた。走ってリリスの方へ向かう。
「ヴェル様?やはりヴェル様だったのですね」
「ああ、しかし単騎で突撃とはよくやる。死ぬぞ?」
するとリリスは金色の目でこちらを見、微笑みながら
「死にはしません。ヴェル様に死ぬな、と言われております」
───と
「敵は二人だ、矢を射て!」
敵の怒号が聞こえる。
「話は後だ、こうなったら切り開くしかない!」
「はい、もちろん全員逃すつもりはありません」
リリスはそう言うと、展開した羽に魔力を込め、一気に敵に突撃していった。
さて、俺はどうするか。敵は全て弓兵と見ていい。
・・・俺も弓兵だ。投石で、と思ったら矢が飛んできた。それを慌てて回避し、飛び道具では勝負にならんな、と思った。数が多すぎる。足を止めたらまずい。
近接一択か。寧ろその方が安全だ。
そう思い一足飛びに間近な敵に近寄り短剣で敵の喉元を突き刺した。
「な、なんだこいつら!」
周囲の敵が叫んでいる。
もはや遠慮する必要もない、一気に決める。
短剣を引きぬき、倒れかけた死体を思い切り魔力を込め生きている敵に蹴り飛ばした。
死体は敵と激突し、一緒に吹き飛んだ。
そこを追撃するように思い切り飛び、かかと落としで二人纏めて蹴り降ろす。
「うわあああああ」
遠くの方で地鳴りのような音が聞こえる。おそらくリリスが暴れているのだろう。
負けて、いられないな。思わず口元が緩んだ。
「ええい、相手は二人なんだ。数で囲めば!」
敵がこちらを囲んでくる。
───舐めるなよ
先ほど蹴り下ろした敵の首元をさらに踵落としで蹴りおろし、首を引きちぎる。勢いで首が上に浮いてきたのでそれを右手で取り、魔力を込め敵に投げつけ敵の顔面同士が直撃し、弾け飛んだ。
さらに首がなくなった死体を体当たりするように突っ込み、思い切り掴んだ。
そして風の魔術を使い軽量化、敵の集団に投げつける。それと同時に他の敵に一足飛びに近寄り足払いをする。
そこに矢が飛んできた。足払いした敵を慌てて盾にした。敵の背に矢が数本突き刺さる。
その敵を軽量化し、矢が飛んできた方向に魔力を込め思い切り蹴り飛ばし当てる。
敵が一斉に距離をおき弓を構える。
まずい、そう思っていると
「ヴェル様!」
リリスだった。羽を展開し、空中から敵に槍を振り下ろしていた。あまりの威力に地面が割れる。
「済まない、助かった!」
数人敵が空中に巻き上がる。割れた地面から手頃な石が出来たのでその石を掴み、敵に向かって魔力を込め投げつける。
と、同時にリリスが一気に敵に突っ込んだ。
「援護、間に合うか」
右手、左手それぞれに氷の魔力を込め氷のつららを投げつける。
そして空中に巻き上がって降りてきている敵を魔力を込め顔面に向けて思い切り踵落としを決め顔面を潰す。
「ぐわっ」
空中から地面に叩きつけられた兵士達が残っていた。一人は思い切り顔を蹴り飛ばし首の骨が折れる音がした。
残った兵達は全て短剣で首元を突き刺した。
あらかた敵は蹴散らしたか、そう思っていると背後から
「死ね!」
と声がした。振り返ると弓を構えた敵が今にも矢を放とうとしていた。
間に合わない、そう思った時
「ヴェル様、伏せて!」
遠くからリリスの声がする。声の通り伏せる。すると頭上を敵が飛んでいくのが見えた。どうやら槍で敵を投げつけたらしかった。
「ぐわっ」
弓を構えていた敵が死体と共に吹き飛ぶ。
地面から手頃な石を掴み、思い切り吹き飛んでいる敵に魔力を込め投げつけた。二人共顔面を貫通し跡形もなく消し飛んだ。
「う、うわああ逃げろおおお」
敵が逃げていく。
所詮は烏合の衆か、と思っているとリリスがこちらに来て
「追撃します、ヴェル様はここにいてください」
「いや、俺も行こう。一気に蹴りをつける」
と言い、立とうとするとふらついた。
「無理はなさらないで下さい。わたくしはまだ行けますから」
「そうか、済まない。だが、ここから出来る事はしよう」
リリスは無言で頷くと逃げていく敵を追撃に向かった。
手頃な石ころをいくつか拾い、魔力を込め逃げていく敵に向かって思い切り投げつける。全て命中し、敵は絶命しているようだった。
さらに追撃を、と思い魔力を込めようとして頭が割れるほど痛くなった。
もはや、限界だった。魔力が練られない状態にまで来ていた。腰につけていた投石具を出し、敵に向かって投石を開始するが、もう射程外だった。
ここまで来て力になれんとは・・・。
───と
背後から気配がした。まだ生き残りがいたのか、と振り返ろうとして力が入らず地面に倒れる。
と同時に頭上をシュンと風を斬る音が聞こえた。どうやら矢を飛ばしてきたらしい。
もし、今偶然に倒れていなかったら矢を受け致命傷に至っていただろう。
くそ、と遠くから声がする。
「冗談じゃ・・・ないぞ」
もはや力の入らぬ身なれど、この距離ならばと起き上がり投石具を構える。
投石具に石を乗せ、一気に敵に投げつけた。見事に命中し、先ほど弓を構えていた敵は仰向けに倒れた。
先程は余裕がなかったが、今なら多少余裕はあるだろうと探知の魔術を使い周辺を探る。もはや魔力は感じられなかった。
いや、一つだけ一際大きい魔力は感じたが。おそらくリリスだろう。
やれやれ、ようやく終わったか。
結局二人で相当な無茶をした気がする。ほとんどはリリスが片をつけた形だが。
───と
魔力が一つこちら側に向かって近づいてきていた。見ればやはり、リリスだった。
こちらに近づいてきて羽を収め、
「ヴェル様、大丈夫ですか?」
「いや、どうだろうな。しばらく休めば大丈夫そうだが。そんなことよりリリス、お前が大丈夫なのか?」
と尋ねるとリリスは微笑み無言で頷いた。
「相当にまずい状況のように見えたのだがな・・・」
「味方はほぼ全滅、生き残っているのは僅かでしょうね。わたくし一人なら撤退も出来ましたが、そうもいかない状況でして」
それに一言、そうだろうな、と答えておいた。
「まあ、無事でよかった。お前のことが心配で単身乗り込んできた」
するとリリスは苦笑し、
「無茶をなさいます。けれど助かりました、有難うございます」
「いや、そうだ。ところで敵は?」
「北東の方へ一部逃がしてしまいましたが、他はあらかた片づけました」
そうか、と答え違和感を覚えた。
「北東?本当に北東か?」
するとリリスは訝しげな顔をしながら
「ええ、北東です」と答えた。
なんだ、この違和感は。
「念のため聞くが、北西では、ないんだな?」
「はい、北東でございます」
そうか、と答え考える。
どういうことだ。
あれか?
村人を巻き込まぬよう配慮して北東に逃げたのか?
まあ、どちらにしても今俺達に必要なのは追撃より休息だった。
「済まない、少し休みたい。ここを離れよう」
リリスはそれに無言で頷くと二人戦場を離れ、休める位置にまで移動するのであった。




