第六章 一節 弟子②
「はー!今日も負けた……」
アーサーは地面に倒れ大の字になった。
モルガンと1対1で戦い始めてから999回。
今日は記念すべき1000回で、必ず勝ってやろうと思っていたのにいつも通り負けてしまった。
「手加減なしかよ……」
「手加減したら修行の意味ないだろ?」
「ケイの言う通りですね」
「二人してなんだよ……」
アーサーは地面に寝転びながらブツクサ文句を言う。そんな姿を傍目に、ケイはモルガンに話しかける。
「モルガン、薬草の本ありがとう。あれ、図書館には置いてなかったからすごく勉強になる」
「いいえ、どういたしまして」
ケイは武術よりも学術が好きである。将来は騎士にはならず学者や役人になりたいそうだ。
薬草の勉強は趣味の一つで、モルガンはたまに勉強を見てあげている。今日は稽古でくるついでに頼まれていた本を追加で渡してあげたのだ。
「勉強なんかつまんねーよ」
いつのまにか起き上がったアーサーが二人の側に立っていた。
「うるさいな!お前に強要してないからいいだろ!」
「はぁ?なんだよその言い方!」
アーサーはケイに近寄り顔を近づけ睨む。ケイも負けじとアーサーを睨んだ。そんな二人の顔の隙間に小さな泡が突然発生し、その泡は少し音を立てて弾ける。
「わ!」
「お!」
二人は驚き、お互いに離れた。そんな二人にモルガンが話かける。
「くだらないことで喧嘩するんだったら課題を渡すけど……いいのですか?」
そう言われた二人は背筋が凍り、肩を組み合った。
「け、喧嘩なんてしてないよ。な、アーサー?」
「あぁ…もちろんだ」
「だったらいいですけど」
昔、モルガンから課題を渡された二人はかなり後悔し、二度と受け取らないようにモルガンの言うことを聞いている。
恐ろしく辛い課題は二人のトラウマだった。
そんな会話をしているとエクターが帰宅した。
「ケイ、アーサー、ただいま。あ、モルガン殿、いつもありがとうございます」
「エクター卿、おかえりなさい。いえいえ。エクター卿が帰ってきたので私は宮廷に戻りますね」
そう言いモルガンは帰る準備をした。アーサーはモルガンに話しかける。
「なぁ、モルガン。泊まっていけば?また冒険の話聞かせてよ」
「僕も聞きたい!」
ケイもアーサーの提案に賛同する。しかし、モルガンは丁寧に断る。
「ごめんなさい。やることがあるの、冒険の話はまた今度」
「「えー」」
二人が声を揃えて返事をする。そんな二人をエクターが諌めた。
「これ!モルガン殿を困らすでない」
「エクター卿、ありがとう。あ、これ、奥様に」
モルガンはポケットから花の刺繍がはいった袋をだしエクターに渡す。
「これでよくなるはずです」
「モルガン殿…ありがとう」
エクターの奥さんは今体調が悪く寝込んでいる。医者にみせて薬をもらったが良くなる兆しがなく、エクターはモルガンに相談した結果、薬をもらった。
「では、みなさん。おやすみなさい」
モルガンは魔法を唱え、空高く浮上し飛んでいった。
「モルガン!またな!」
アーサーの呼びかけにモルガンは振り返ることなく夕焼け空の向こうへ消えてしまった。




