第五章 九節 誕生③
「アーサー……わかった」
「じゃあよろしく頼むよ。たまに様子を見にくるから」
マーリンはそう言い、すぐにいなくなってしまった。エクターは腕の中で眠るアーサーを見て、つぶやいた。
「王よ、あなたはそこまでして何かを手に入れたかったのですか?」
数ヶ月後、宮廷内外含めてお祝い騒ぎだった。それはウーサー王が新しい妻を迎えたからだ。
今までの女王は表舞台にも出て来ず、ましてや世継ぎを産んだという話も聞かない。
本当に存在するのか?と疑いたくなるほど、存在感がなかった。
一方、新しい妻で女王になったイグレインは年こそ若くないが華やかな見た目で世継ぎをうみそうな雰囲気があり、皆が期待に胸をふくらましていた。
また貴族ウケも良く、周囲はウーサー王を羨ましがった。当の本人は、マーリンの契約のせいで少し元気はないが。
そんな状態をイグレインは少し辛気臭いと思い、ウーサーへの愛は少しずつ減っていくのであった。
お祝いムードから状況を察したモルガンは次なる作戦を考えていた。
「アーサーは生まれた。あとはアーサーとうまく接触できればいいけど」
そんなことをぶつぶつ唱えていたら、マーリンが城に戻ってきた。
「マーリン、仕事がたまっています。やってください」
「うげ…やりたくないな…」
と言いつつ、溜まった書類に目を通し始めた。が、頭はアーサーのことを考えていた。
アーサーがもう少し大きくなれば、剣術が必要だ。しかし、アーサーに剣術を教えるものがいない。エクターは剣の才がそこまでないのだ。
悩みながら書類を読むふりをする。ちらっと目線をやると、目の前で律儀に仕事する女王の姿がうつる。
マーリンはにやっと笑った。
「モルガン、頼みがあるんだ」
「仕事は引き受けませんよ?」
「そんなことしないよ」
「では仕事以外の頼みとは?」
マーリンは少し考えてからモルガンにこう言ってきた。
「私の代わりに剣術を教えてほしいんだが……いけるかい?」
「剣術?無理ですよ。魔法しかできません」
「魔法で作ったゴーレムを戦わせたらいい」
「じゃあ、あなたがやればいいじゃないですか」
「………」
マーリンは正論を言われて黙ってしまった。モルガンは考えた。なぜそんなことをマーリンが依頼してきたかを。
(なにかあるな…少しカマをかけてみよう)
モルガンはそう思いマーリンに話かけた。
「ヴィヴィアンに何か頼まれてるんですか?」
「いいや、何も頼まれてないよ」
(あぁ、ランスロットに剣術を教えこむよう依頼されているのさ)
「ふーん」(やっぱりね)




