第五章 九節 誕生②
目の前の美しい女性からはとんでもない提案がでてきたことにウーサー王は驚いた。
今、子が生まれその子に対する愛情が溢れていっぱいなはずが、そうとは思えない相反する発言であった。
イグレインは美しく、自分を理解してくれ、子孫を残し自身の願いを叶えてくれた。
最愛の人だと思っていた。
だが、今はどうだろうか?
目の前にいるのは本当にイグレインなのか?
ウーサー王は少しショックで何も話せなかった。そんな様子をみたマーリンは話始める。
「まぁ、イグレイン様の提案は少し過激なような気もしますが、出産は極秘扱いにすればいい。お二人は素直に婚姻を発表すれば丸くおさまるだろう。では、私はこれにて」
マーリンは赤子を抱いて静かに部屋から出ていった。マーリンがでてからもウーサー王は黙ったままだった。そんな姿を見かねたイグレインはウーサー王に話かける。
「ウーサー王、マーリンの言う通りです。赤子がいなくとも私達は結婚できます。私の体力が回復したら、みなさんに知らせましょう」
そういいイグレインはウーサー王を抱きしめた。ウーサー王は静かに頷くしかなかった。
マーリンはすぐエクター卿のもとに向かった。自宅の扉を叩くと、すぐにエクターがでてきた。
「マーリン、こんな時間に何の用だ?」
「エクター卿、こんな朝早くにすまないね。頼みがあるんだ」
エクターは訝しげな顔をした。マーリンはそのようなリアクションは慣れており話を続ける。
「この子を育ててほしいんだ」
「な!?」
よくみるとマーリンの腕には小さな赤子がいた。生まれたばかりのような雰囲気だ。
「マーリン!この子はいったい?!」
エクターはマーリンに詰め寄る。マーリンははっきり告げた。
「この子は、ウーサー王の後にこのブリテンを統治する王だ。私と一緒に育ててほしい」
「………それは……王も把握しているのか?予言なのか?」
「どちらの問いにも“yes”と答えておくよ」
エクターは眉間に皺を寄せ、考え始める。数分たち、意を決したようにマーリンに話しかけた。
「わかった。ちょうど最近、うちにも子ができてな。まとめて世話しよう」
「ありがとう。では頼むよ」
マーリンはエクターに赤子を渡した。赤子はすやすやと眠っている。エクターが再度質問した。
「マーリン、この子に名前はあるか?」
「名前か……」
名前くらいはウーサー王から聞けばよかったと後悔したが、もう遅い。マーリンは少し考え、答えた。
「名前はないが、今、私が考えた」
「ほう、教えてくれ」
「その子の名前は、アーサー。将来、ブリテンを統治する王となる男さ」




