第五章 九節 誕生①
モルガンが聖剣をすり替えてからは特に事件もなく平和であった。
ヴィヴィアンが何かに気づいて仕掛けてくるかもと身構えていたが特に何もなかった。
おそらく、ヴィヴィアンは本当の意味では管理できないのだろう。
だから、棺が開いても、すり替えられても気づかないのだ。
モルガンはそう考察しながら日々の業務をこなしていた。
そうして月日が流れ、イグレインが臨月となりいつ産気づいてもおかしくない状態になった。
ウーサー王はいまかいまかと毎日毎日イグレインの様子を見に来ていた。
一方のイグレインは子よりも自身の地位のことで頭がいっぱいだった。
そして、満月のある日。ついにその時がきた。
臨月になってからは寝室が分かれていたので、ウーサー王は側近の知らせを聞き、すぐ寝室へ向かった。
「イグレイン!大丈夫か?」
目の前には痛みに苦しみながら必死で出産に挑むイグレインがいた。ウーサー王はその姿に感動を覚え、すぐ近くにいき手を握った。
医者がウーサー王に話しかけてきた。
「王よ、もうまもなくです」
「おお、そうか……」
ウーサー王は妙に緊張して汗をかきはじめた。そうこうしてる間にイグレインがいきみはじめた。
「うぅぅ…!!」
「イグレイン、頑張れ!」
ウーサー王はイグレインを励ました。すると医者がイグレインの足元でなにやら作業し始めた。
数秒後に室内に大きな産声が響き渡った。
「生まれました!」
「な、なんと…」
ウーサー王は感動で涙が溢れた。そこにより涙腺を崩壊させるように医者から言葉がかけられる。
「王よ、お子は男の子です」
「本当か!でかした!イグレイン!」
ウーサー王は疲労困憊のイグレインを優しく抱きしめた。当のイグレインは疲れているため少し放心状態であった。
イグレインや生まれた子の処置をし、落ち着いた頃、マーリンがイグレインの寝室にやってきた。
「イグレイン様、おめでとう。無事に出産を終えてなりよりです。そして、王よ。約束は忘れていませんね?」
マーリンはウーサー王に迫った。ウーサー王はうなずく。
「あぁ、忘れておらぬ」
「それはよかった。では赤子をこちらへ」
マーリンが手を差し伸べる。ウーサー王は赤子をベッドから抱き上げた。そして額に軽くキスをし、マーリンに手渡した。
「あまり抱いていては別れがおしくなるからな」
「そうですね。これからはどうするのです?」
赤子の誕生と結婚を発表したかったが、そうもいかなくなりウーサー王は悩んでいた。
マーリンの問いに答えずにいるとイグレインが口を挟んできた。
「赤子は死んだことにすればいいのです」




