第五章 八節 すり替え②
「これはいったい…」
棺は木で出来ており周りは苔が生えている。随分前から佇んでいるような雰囲気だ。
モルガンは棺に近づく。すると棺から声が聞こえてきた。
ー王よ、こちらです。さぁ、棺を開けてください
先ほど聞こえていた声と同じ声だ。
「この棺の中に聖剣が?」
てっきり湖の底にでも封印されているかと思っていたがそうではないようだ。にわかには信じられないが、声の言う通りに棺を開けることにした。
鎖を丁寧に切り、棺だけの状態にする。
すると、棺が自らゆっくり開いてきた。
棺が開ききったのを確認し、モルガンは棺に近づく。そして聖剣の柄をもち、聖剣を棺から出した。
すると、聖剣が話しかけてきた。
ー王よ、待ってました。ようやく迎えにきてくださったのですね。嬉しい…
聖剣は感極まったような状態だ。先ほどからモルガンのことを王と呼ぶが、正しくは後に生まれるアーサー王が聖剣の持ち主としては相応しい王だ。それを簡単に聖剣に伝える。しかし、聖剣は反論してきた。
ーありえません。だったら、私はあなたを王と勘違いしないはずだ。私は仮にも神から作られた存在。神は間違えません。だからあなたが王であっています
聖剣は頑固で頑なに認めなかった。とりあえず機嫌よく棺から出てくれそうなのでほっとする。
モルガンは聖剣の鞘を棺に残し、剣だけを手にもつ。そして魔法で少し細工した。かなり大きい刃がある太い剣は、細くスマートな剣に変化し、モルガンの腰に装着された。
ー王よ、鞘は不用ですか?
聖剣が質問してきた。モルガンは答える。
「今はまだ不用だわ。いつかは必要だけどね」
そういい、アヴァロンで作った偽の聖剣を鞘にセットし棺に収め、再度鎖を修復した。
「さ、聖剣も手に入れたことだし早く戻りましょう」
モルガンは再度小さくなるために魔法をかける準備をした。すると棺の裏の茂みからガサガサと音が聞こえる。
モルガンはヴィヴィアンに警戒しつつ、茂みに向かって話しかけた。
「誰かいるの?」
返事はない。ヴィヴィアンの手下なら始末しようとモルガンはかまえる。
その姿を見て焦ったのか茂みから何かが飛び出してきた。それは人で、小さく土下座のような姿勢をとっていた。
「あなたは……さっきの子ども?」
よく見ると結界を行き来していた子どもだった。子どもは震えながら話しかけてきた。
「こ、殺さないでください!ただ、少し声が聞こえて……そしたら美しい妖精みたいなあなたが何かしていて……その……」
上手く言葉にできない子どもは最後はモゴモゴし、黙った。
モルガンはどこまで見られていたかわからず、始末しようと考えていた。
しかし、子どもの姿を見てある一つの仮説を立てた。
湖にすんでいる小さな子
おそらく男の子
年齢は5歳くらい
幼い子どもの割には足や腕が逞しい
この子どもはもしかして“湖の騎士 ランスロット”
ではないか?




