第五章 八節 すり替え①
神から依頼された聖剣の管理はたいそれたことではない。神は妖精なんかよりも上位の存在だ。だから、聖剣の封印を解いたり、悪用したりなんかは今はできない。
そう、今はできないがいつかはできるのだ。
それはかの王が現れ、聖剣を手にし、いつか湖に返しにくる時。一度だけ聖剣を手にする瞬間がある。
その瞬間、聖剣は私のものとなりこの忌々しい鎖を断ち切ることができるだろう。
そうなれば、私はアヴァロンに再び戻り、女王としてあの地を統治し、アヴァロンの頂点に君臨できるはずだ。
さぁ、かの王よ。早く、私の元にきて聖剣を取りにきて………。
マーリンはヴィヴィアンに頼まれた用事を思い出したため、湖に向かうことにした。
モルガンに行き先を聞かれたが、つい誤魔化してしまった。
アヴァロンの女王の前で嘘が通用したかはわからないが、モルガンはヴィヴィアンには用がないはずだ。
だから見抜かれていても、問題ない。
マーリンはそう確信し、城を出て湖に向かう。
その確信が間違っていたことは言うまであるまい。
モルガンは気配を殺し、マーリンの後をつけた。湖まではそこまで距離はなく、すぐに着いた。
マーリンは問題なく湖へ向かっていくが、モルガンは嫌な気配を感じ足を止めた。
手を出し、目の前の空間に触れる。すると見えない何かに弾かれてしまった。
どうやら湖の周りには独特な結界が張られておりモルガンでさえも問題なくすり抜けるのは難しそうであった。
「この結界…破るのはかなり難しいわね。どうしようかしら」
結界の前で立ち尽くしていると、近くから走る足音が聞こえてきた。だんだん足音が近づき、隠れて見ていると結界の向こうからこちらへ走り去っていく小さい子供がいた。
「子供……?」
小さい子供はどうやら結界を出入りできるようだ。何か用事があったのか森の奥へ走り去っていった。
「あの子供を利用しよう。ここを再び通る時にできる結界の綻びを利用する」
モルガンは子供が戻ってくるのを待つ。数分したら、子供が大きな袋を前に抱えながら走ってきた。だんだん結界に近づいてくる。結界を通り湖に向かう瞬間、結界に綻びができた。
「いまだ!」
その綻びを利用し、小さな穴を魔法で開けた。これで帰りも問題なく通れるだろう。
「さぁ、聖剣の場所へ行きましょう」
魔法で小さくなり穴を通過後、そのまま飛びながら周囲を散策する。すると、声が聞こえてきた。
ー王よ、こちらです。私はここにいます。
「何かしら?誰かが呼んでいるわ」
「そう?そんな声聞こえた?」
ルルには聞こえないようだ。声が再び聞こえてきた。
ー王よ。私はここにいます。あなたをずっと待っています。
声が聞こえる方に飛んでいく。するとそこには、大きな石の板の上に鎖で封をされた棺がたたずんでいた。




