話す勇気
ふすまの隙間から入った光で俺の目が覚めた。
妹のハルナはまだ眠っているようだ。
朝になったはずなのに、まだ外は静かだ。
俺たちがふすまを開けることは許されていない。
二人で母さんの帰りを待つだけだ。
少しすると、家の外から足音が聞こえてきた。
母さんが帰ってきたと思うと、急にお腹が空いてきた。
俺はハルナを起こし、母さんがふすまを開けるのを待つ。
ふすまが開き、いつも通り母さんに抱きつこうとした。
しかし、ふすまを開けたのは母さんではなかった。
長い金髪の男は俺たちを見て驚いていた。
俺は何が起こっているか分からず、その金髪の男を思いっきり押した。
そのままの勢いで俺はふすまを閉め、ハルナの頭から布団を被せる。
パニックになっている俺をハルナは抱きしめる。
すると、また静かにふすまが開いた。
さっきの金髪の男が心配そうに覗き込んでいた。
「驚かせて、ごめんね。 君達怪我はしてない?」
カタコトの言葉で金髪の男は話しかけてきた。
「怪我なんかしてないわ。 私たち母さんを待っているの。 ここから出ちゃダメって母さんに言われてるの。 だから、閉めてほしい。」
「そうなんだ。 知らなかったんだ、ごめんね。」
金髪の男は静かにふすまを閉めた。
どうやら、話が通じるやつのようだ。
ハルナの体が震えている。
二人一緒なら、大丈夫。
二人で母さんを待ち続けたが、外が暗くなっても、母さんがふすまを開けることはなかった。
二人で一枚の布団をかぶったが、いつもより冷たい。
母さんがいない夜は初めてだった。
おなががすいてきたし、喉もかわいてきた。
俺はハルナの手をぎゅっと握った。
また、朝になった。
母さんはまだ帰ってきていない。
今日はなんだか身体が重い。
ハルナもなんだかぐったりしているようだ。
外から、昨日と同じ足音が聞こえる。
あの金髪の男だろうか。
ハルナはその足音を聞くと、ヨロヨロとふすまに手をかけた。
そのまま、ガっとふすまを開けると、ハルナは叫んだ。
「お兄さん! 助けて…!」
足音がどんどん近づいてくる。
家の玄関扉が勢いよく開き、昨日の金髪の男が焦った様子で俺たちに駆け寄ってきた。
助けが来たことに安心したのか、ハルナはパタリと床に倒れてしまった。
「これ飲んで。」
金髪の男が金属の入れ物を俺に差し出す。
「大丈夫。 中身は綺麗な水だよ。」
金髪の男は俺を真っ直ぐ見つめる。
俺が液体に口をつけると、ハルナにも金髪の男は液体を飲ませた。
その液体は本当に水だった。




