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超ヘタレだった幼馴染が最強魔術師になって溺愛してきます  作者: 海野豹香


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隠された力


「...そんでレオンハルト隊長、レイモンド閣下に決闘申し込んで......帝国最強の魔法使いに挑んでほんとに勝っちゃうんですもん、俺らビックリして」


特務魔術隊でレオンの右腕として活躍しているヘイリーは意気揚々と酒を飲みながら語った。ヴィルベール家に来てから二週間が経ったアイリスは、レオンの隊で副隊長を務めるヘイリーに誘われて軍御用達の酒場で歓迎パーティーに参加していた。


エヴァン、シリル、マクシムもアイリスを囲んで酒を飲む。一番酔っ払っているシリルが、酒を飲み干して上機嫌に言う。


「本当に...今じゃレオンハルト隊長が帝国最強の魔法使いだと言われてるしな。俺たち、そんな凄い人の隊に入れて幸せだ〜!」


そんな彼に水を勧めながら、アイリスは陽気な隊員たちに笑顔を見せた。


最年少でクールなマクシムは、他の三人の介抱をしながらアイリスに謝った。


「すみません、アイリス様...いつもはこんなんじゃないんですけど......隊長も残務を終えたらすぐに来ると言っていたので、もうすぐ来ますから......」


「すごく楽しいです。誰かとこんな風にお酒を飲んだり、おしゃべりしたりするなんて...少し前の私には考えられなかったから...」


「...聞きました。以前魔力が暴走して、長いこと北で静養されていたと......」


マクシムの言葉にドキッとしたアイリスは、自分が禁術を使ったときのことを思い出した。世間には魔力の暴走を鎮めるために北の地で静養していたことになっていたのだった。


「レオンハルト隊長がそばにいれば、もう安心ですね」


そう言って笑うマクシムに、アイリスもつられて笑った。二人で仲良く話しているところに、あの三人が酔っ払って絡んでくる。


「マ〜ク〜シ〜ム〜、なに抜け駆けしてアイリス様と楽しんでんだよ」


「そーだそーだ、隊長にバレたら殺されるぞ!」


みんなでわちゃわちゃとしていたとき、酔っ払っていたヘイリーをはじめ隊員たちの表情が一気に変わった。


「........来るぞ」


マクシムは咄嗟にアイリスの上に覆い被さった。次の瞬間、酒場の窓ガラスが飛散し、獅子のような風貌の魔獣が飛び込んできた。


「きゃああ!!」


「...魔獣っ!」


飛来するガラスなどから一般客や酒場の店主をマクシムが防護魔法で守る。


ヘイリーたちが魔法陣を引いて魔獣の動きを封じ込めた。


「...っなんだってこんな所に魔獣が...帝都のど真ん中だぞ!?」


「とにかく特務魔術隊に応援要請!この封印魔法も長くはもたないっ...今のうちに市民を避難させろ!」


大きな唸り声をあげて抵抗する魔獣を魔法で押さえつけながら、ヘイリーはエヴァンとシリルと共により一層強固な封印魔法を敷く。マクシムは店の中にいた客たちを退避させ、魔法で応援要請を飛ばした。


「アイリス様!ここは危険ですから早く避難を!」


マクシムが叫んだとき、勢いよく魔法陣からはみ出た魔獣の鋭い爪が彼の腹部を裂いた。


「マクシム様!!」


アイリスは真っ青な顔で駆け寄る。その腹は魔獣の爪で抉られ、酷く出血していた。駆けつけようとヘイリーの足が動くが、目の前の封印で手一杯だった。


「...ッ...マクシム!!アイリス様!!!」


そのときーーー、


衝撃音と閃光とともに、魔法陣の中にいた魔獣の身体が真っ二つにされ、その灰がさらさらと積もっていく。


エヴァンとシリルが声を揃えて言った。


『.....隊長っ!!』


魔法陣の真ん中に立っていたのは、剣を持つレオンハルトだった。


「マクシム様!」


アイリスが必死に呼びかける方に駆け寄り、レオンはすぐさま「医療班を呼べ!」と指示を出す。


「...マクシム......。隊長......これは、もう......」


手遅れだと言うようにエヴァンが頭を下げた。レオンが「諦めるな!」と叫ぶなか、隊員たちは涙を溜めて絶望の表情を浮かべる。


「......っ...」


アイリスは意を決した。レオンの横に座り込み、その傷口に両手を当てる。


「......アイリス!?...何を.......」


直後、凄まじい光とともにマクシムの割かれた腹の傷がみるみる塞いでいく。


「......これ...は..........」


「......まさか...こんなことが.......」


レオンや隊員たちは彼女の魔法に唖然としていた。アイリスは額に汗をかきながら最後の力を振り絞る。


「......ゔ............」


横たわるマクシムの手がピクリと動いた。先ほどまで血の気が失せた顔が、少しずつ戻ってくる。やがて光がおさまり、アイリスは気を失ってレオンの腕に抱き止められた。


「アイリス!」


レオンは彼女の頬に手を当て確認するが、どうやら気を失っているだけだと分かりひとまず安堵する。


「...隊長......これ.........」


ヘイリーは一命を取り留めたマクシムの腹部を見ながら信じられないといった様子でレオンに言った。


「...とんでもない治癒魔法だ......アイリス様...一体......」


レオンはアイリスのことを優しく抱きしめるが、その顔は反対に切なく、やるせない表情だった。


「アイリス......」







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