ヘタレ脱却!?
「...この十年、ずっとアイリスに会うために生きてきた。あの日、目が覚めた時に君が勘当されたと聞いて...レイモンド伯に何度も居場所を問い詰めたけど、結局答えてもらえるまで十年もかかってしまった」
「...仕方ないわ。禁術を使ってしまったのだもの......しかも、公爵家の貴方に危害が及んだ。お父様が私を許さないのは当然よ...」
「......この修道院を教えてもらったとき、レイモンド伯と約束したんだ。俺が君を貰い受けるって」
「へ...?」
「だから、俺と結婚して一緒に来てほしい」
あまりに突然のプロポーズに、アイリスの目が点になった。
「ちょ......ちょっと...待って......?どういうこと?」
「まあ、話すと長いんだけど........」
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ーーー十年前。
「この度は誠に申し訳ない。公爵家の大事な御子息に......」
アイリスの父、ブラム・アーサー・レイモンドはレオンの父であるヴィルベール公に首を垂れた。
「子どもたちが無事でよかった。しかし、あの魔法は......」
「......死者の魂を喚ぶ魔法」
ブラムの言葉に、ヴィルベール公は信じられないという表情で狼狽えた。
「まだ十にも満たない少女が、そんな高度な魔法を......とんでもない才能だ。彼女は今、どこに?」
「......もう、娘ではありません。二度と御子息に近づかぬよう勘当しました」
「そんな......!正しく導けば、この帝国の礎となる魔法使いになれるんだぞ!」
ヴィルベール公の言葉に、ブラムは黙ったままだった。そして扉の隙間から二人の会話を盗み聞きしていたレオンは、アイリスのことを思って顔を歪めた。
「そんな...アイリスが...家を追い出されたなんて...僕のせいだ......僕が、母さんに会いたいなんて言ったから.......」
その日から、レオンはレイモンド伯に何度もアイリスの居場所を尋ねた。
「お願いです!アイリスは...悪くないんです!どうか、彼女を戻してください!」
涙を流して訴えるレオンに、レイモンド伯は冷めた目で答えるばかりだった。
「これはあの子のためでもあるし、君のためでもある。...あの子のことは、忘れなさい」
次第にレイモンド伯は取り合ってもくれなくなった。しかし、レオンは諦めきれなかった。幾年が経ったある日、レオンは帝国軍の入軍試験会場にいた。
「今年の魔法使いは粒揃いですぞ、レイモンド閣下」
試験会場を見晴し台から見学していたレイモンド伯は、一人の青年と目があった。厳粛な試験中だというのに、その青年は大事で呼びかけた。
「レイモンド閣下!お手合わせを願えますか!」
やれやれといった様子で見晴し台から降りると、レオンが待ち構えていた。
「...お願いがあります。私が勝ったら、アイリスの居場所を教えてください」
「君も懲りんな。あんな出来損ないを忘れずにいるなど」
周りがざわめくなか、二人の決闘が始まった。レオンが何年も血反吐を吐くような魔法の修行を積んだとはいえ、相手は帝国軍特務魔術隊のトップだ。易々と勝てる相手ではないことはわかっていた。
激しい火花とともに魔法が炸裂し、その威力に見ていた者たちは怯んだ。
「......くっ......!」
結局、その決闘ではレオンが負けた。しかし彼の実力は現役の魔法使いのなかでは圧倒的で、レオンの希望通り特務魔術隊への配属が決まった。
それからは、隙あらばレイモンド伯に挑む日々だった。もう何度目がわからないほどの戦闘で、ついにレオンの魔法がその脇腹を貫いた。
魔力で治癒しながら、レイモンド伯はレオンに告げた。
「......ふ...私も歳をとったな。まさかこれほどの魔法使いになるとは......。よかろう、君のことを認める。アイリスは...北の修道院に入れた。好きにするといい」
レオンはついに得た情報に目が潤む。彼女の居場所を知るために厳しい鍛錬にも耐え、ついに彼女の父親に打ち勝ったのだ。
「...っ...ありがとう...ございます......閣下、『好きにしていい』と仰いましたね。...私が、貰い受けます」
真剣な目でレオンは言った。その目を見て、レイモンド伯は伏目がちに笑って、「...頼んだぞ」と呟いた。
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「まぁ...色々あって......君の父上の許可も得ている。もう罪の意識に苛まれなくていい。俺と一緒になってほしい」
正面から麗しいレオンの顔が迫り、アイリスは思わず視線を逸らした。
『あれ...レオンってこんな感じだった......?月日が経って逞しくなったとはいえ......なんだか胸が変......』
アイリスは速まる鼓動に動揺していた。ドキドキしすぎて、心臓が口から出そうだった。
「......ダメか?」
子犬のように不安げに顔を近づけてくるレオンに、「......わ、わかった...」と消え入りそうな声で返事をするのに精一杯なアイリスだった。その返事を聞いて、レオンはすぐさまアイリスを抱え上げた。
「きゃあっ!」
満面の笑みを見せるレオンに、アイリスは困ったように笑う。笑顔はあの頃と変わらない彼に、アイリスは愛しさが込み上げた。
「.......ありがとう、レオン。迎えにきてくれて」
レオンは彼女を抱えたまま、熱いキスをした。アイリスはその強引なキスに顔を真っ赤にして彼をぽかすか叩く。
「ん"〜っ!!!(まだシスターなのにっ!)」




