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超ヘタレだった幼馴染が最強魔術師になって溺愛してきます  作者: 海野豹香


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2/11

再会


厳しい寒さのなか教会で朝の礼拝の準備をするアイリスに、初老の女性が声をかけた。


「おはようございます、シスターアイリス。調子はどうですか」


「おはようございます、サラサ院長。魔力の制限は問題なく...」


「そうではなくて。なんだか浮かない顔をしていたから。......皆が起きるまで、話し相手になってくださらない?」


アイリスは見透かされたことに決まりが悪そうな顔になりつつも、優しく微笑む院長の隣に腰掛けた。


「......あなたがこの修道院に来てから、もう十年になるわね。初めて会ったときはまだ九つだったかしら。何もない北の果てにひとりぼっちでやって来た女の子が、こんなに立派な修道女になるなんてね」


「...院長のおかげです。家族に捨てられた私を救ってくださった。ここに来なかったら、私......」


「......過去のことを思い出していたのね。あなたは十分過ぎるほどに償ったわ。前に話してくれた幼馴染の彼も......きっと大丈夫よ。あなたのことを恨んだりするはずがないわ」


「......そう...だといいのですが..........」


そのとき、教会の扉を叩く音が響いた。


「あら、誰かしら」


「村の人かも。私、見てきます!」


昨晩から吹雪いている外は、まだ人が出歩くには危険な状態だ。アイリスは急いで扉を開けた。


「.........どなた?」


そっと外の様子を伺うと、そこには見上げるほど長身で、雪男かと思うほど雪を被った人間が立っていた。


「ひゃあっ...!はやく中へ!」


アイリスはすぐさま中に招き入れた。雪が積もったコートのフードを取ると、恐ろしい雪男なんかではなく、整った顔の青年であることがわかった。


「一体どうされたのですか...こんな吹雪の中...」


タオルを持ってきたアイリスが尋ねると、その青年は彼女を見つめたまま動かなくなった。あまりの視線に思わず彼女も固まってしまう。


「あの...?」


「........ッ...アイリス......僕だよ.........」


真っ直ぐに彼女を見つめる瞳に、アイリスはハッとなる。


「......レオ...ン........?」


彼女の瞳にも彼が映った。今にも泣き出しそうに顔を歪め、その大きな腕は彼女をすっぽりと包み込んだ。


「...やっと......っ...会えた........」


目の前にいる彼があのレオンだなんて信じられなかった。ずっと泣いてばかりで、臆病で、いつも後ろにくっついてくる弟みたいな幼馴染ーーー。そんな彼を、私がーーー。


アイリスは思わず彼の胸を押し戻した。


「...どうして......なんでここに......」


「君を迎えにきた」


レオンの低く落ち着いた声に動揺するアイリスは、思わず彼から目を背けた。レオンが再び彼女に触れようと手を伸ばしたそのとき、院長が出てきた。


「あら、お客様だったの?」


二人の間に長い沈黙が続いた。



----------



「貴方が......」


「はい、レオンハルト・エリアス・ヴィルベールと申します」


修道院の院長室で、レオンはサラサ院長に礼をした。コートを脱いだ彼が纏う帝国軍特務魔術隊の軍服を見ると、サラサはゆっくり口を開いた。


「......軍人になられたのね。あの子から聞いていた貴方は、よく泣く臆病な子だったのに......」


「アイリスが私のことを...?」


「...ええ。ここにきた頃は全く口をきかなくて、ボロボロでね...すごく冷たい目をしていたわ。何年もかけて、少しずつ心を開いて......貴方のことを話す彼女は、とても切なそうで...でも、大事な思い出だと言っていたわ」


「.........そうですか」


「本気なの...?『彼女を迎えにきた』って......」


「はい。命にかえても守ります」


そう言って彼は懐から勅許の書状を出した。アイリスが修道院から出ることを皇帝が許可したものだった。


「...あの子が戻りたいと言うなら、私は反対しないわ。貴方が彼女を本当に慈しんで、大切に想っているなら、きっと彼女も同じように想いを返してくれる。貴方のことを話すときの彼女の目は、そうだもの」


にっこりと微笑むサラサに、レオンは深くお辞儀をした。



----------



院長室を出たレオンは、花瓶の水を入れ替えるアイリスを見つけ出した。彼が近づくと、その気配に気付いたアイリスが顔を上げた。


「...レオン、私...貴方にずっと謝りたかった...あのとき、私の魔法が暴走して...あなたに喜んでほしかっただけなの......お母さんに会わせてあげたかった......ごめんなさい...」


そう言って涙を流すアイリスを、レオンはそっと抱きしめた。


「...もう大丈夫だ。ずっと...この十年、君を探し続けてきた...やっと......やっと会えた........」


あの頃とは違う彼の体温に戸惑いながらも、アイリスも彼の背に手をまわして抱きしめた。















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