最強魔術師なパパ
「...レオン、本当にやるの?」
「ああ」
レオンは床に魔法陣を書いてアイリスの手をとった。陣の真ん中で二人は立つ。
「...この禁術で私の魔力を貴方に渡したら...きっと私はこの前みたいに高度な魔法を使えなくなる。レオンを支えることができなくなってしまう...」
涙ぐんで俯くアイリスに、レオンはため息をついた。
「...はぁ、そんなこと考えてたのか。いいかアイリス、俺は君の魔力に惚れてるわけじゃないし、魔法が使えなくなった君も、ちゃんと君だ。...ずっと愛してる」
「......レオン..........」
アイリスは涙を拭いて、レオンの顔を見た。
「じゃあ、やるぞ」
眩い光と共に、陣がくっきりと浮き上がり二人を包む。レオンはアイリスの手をしっかり掴んだ。
「......大丈夫だ、アイリス」
瞬く間に光は消え、二人は顔を見合わせた。
「...ちゃんと渡せた......?」
アイリスが自身の身体を触ってみても何の変化もない。
「......すごい力だ。無尽蔵に魔力が湧き上がってくる。これが君の魔力......」
レオンは驚いた様子ではあるが、どこも負傷したり体調が悪くなることはなく、アイリスは安堵する。禁術を使うことはリスクがあり、十年前にその身をもって経験していたからだ。
「...よかった。...レオン、ありがとう」
微笑むアイリスに、レオンは告げた。
「君からもらったこの力で...必ず君を守っていくから......」
二人は長い口付けを交わした。
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五年後ーーー
「ルーナ!今日はレイモンドのお祖父様に会いに行く日よ!」
「はーい、おかあさま!」
アイリスとレオンの間に生まれた一人娘のルーナはもうすぐ4歳になる。
「おじいさまにお花を摘んだの。喜んでくれるかなぁ」
公爵邸の庭で侍女と遊んでいたルーナが戻ってくると、手には色とりどりの花でできたブーケがあった。アイリスは娘の頬に優しく手を当てる。
「...きっと喜ぶわ。お祖父様はルーナのことが大好きだから」
ルーナの目が輝いた。
「さぁ、お出かけの準備をしてきてちょうだい」
「はーい!」
ルーナの後ろ姿を見送り、アイリスはレオンの部屋に向かう。
「レオン?...そろそろ出発の時間だけど......」
部屋に入ると、激務に追われて机に突っ伏したレオンの姿があった。彼は三年前に特務魔術隊の元帥となり、レイモンド伯の跡を引き継いだ。それからは帝国の最強魔術師として仕事に明け暮れる日々だ。
「ああ...もうそんな時間か......ルーナは?」
「今準備しているわ」
あたりを確認して誰もいないことがわかると、レオンは子どものようにアイリスに抱きついた。
「...ここのところ仕事続きだったから......」
甘えるレオンに、アイリスは幼い頃の彼を思い出す。昔はこうして事あるごとにレオンが抱っこをせがんできて...でも目の前にいる彼は、もう立派な夫であり、父親だった。アイリスはそんなギャップに可笑しさを感じながら、大好きな彼の頭を撫でる。
「...仕方ないわね。レオン、大好き」
「...俺もずっと君のことが大好きだ、アイリス」
二人はそう言って抱き合うと、部屋に入ってきたルーナを交えて三人で笑い合った。




