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近くに山賊の拠点があると言う。
山登りになるかと、ため息が出そうになるがそこは我慢。
情報を頼りに付近の山の捜索に出向く。
ほどなく。
山賊のアジトを見つけた。
と言っても。
規模は大きくない。
山間の少ない平地に掘っ立て小屋みたいな所を拠点にする山賊。
監視してみると見張りは一人。ローティーと作戦を立てる。
「中、分かる?」
「透視できる訳じゃないよ、気配は全部で四~五人かな」
「魔法でぶっ飛ばしちゃえば早いかしら」
良い提案だと思ったけど否定される。
「全員死んじゃったら手掛かりが…それに人道的じゃないよ」
ローティーに人道を説かれてしまった。
このままだと聖女を目指す乙女失格なので私は言う。
「それじゃ私が見張りを倒すから、ドアを蹴破ったら目くらましみたいのできる?」
「それなら可能だよ」
静かに近づく。
見張りを小屋から離したいので物音を立てる。
茂みに隠れ適当な石を道の向かい側の木に投げて音を立てた。
「なんだ?」
見張りはこっちに来て木を見る。そして木の裏側を覗き込もうとした。
私は茂みから飛び出し手刀を首筋に叩き込んだ。
「ぐっ…」
見張りは呻いて倒れた。
手で合図して小屋のドアの前へ。
そして蹴破る。
中の山賊は全部で四人。
彼らは「なんだ!?」と叫ぶがローティーの魔法が炸裂。
「ライトニング!」
まばゆい光が閃光になって広がる。
私は目を瞑って防いだが山賊たちは声を上げる。
「ぐわっ」
みな腕を目の前にして光を遮ろうとするが当然手遅れだ。
その隙に私は一人目の相手に一撃を加える。
「聖女パンチ!」
ドゴンっ!
顔面にヒットした相手は吹き飛んで動かなくなった。
いまだ怯んでいる二人目の懐へ。
そして投げ飛ばす。
もう一人を巻き込んで吹っ飛ぶ山賊。
私はすかさず彼らが座ってた椅子で倒れた二人を殴打し沈黙させる。
これで三人撃破。
倒れた相手から柄に入ったままの剣を奪い取る。
残るは統領らしき奴一人。
「てめえっ…!」
さすがに目が慣れ始めたのか、剣を握り向かってくる。
振りかぶった大雑把な斬撃を剣の柄で受ける。
力任せに押し切られても困るので前蹴りをみぞおちに叩き込んだ。
悶絶し力が抜ける統領。
最大のチャンスにこめかみに剣の柄を叩き込み、昏倒させた。
縄で縛られた山賊たちは言う。
「ありえねえ…何もんだよ」
「聖女の卵よ!」
「ふざけんなっ! お前みたいな聖女が居るか!」
「まあまだ聖女の希望者だけどね」
私の自慢に相手は不満げだ。
でも気にせず私は問い詰める。
「アンタたち、ユニコーン攫ったでしょ」
「…」
黙ってしまう山賊。なのでアプローチを変える。
「いいわ。交渉しましょう。こっちは情報が欲しいだけだから」
「なんだよ交渉って」
「これからパンチするわね。それで喋れば許したげる。駄目ならパンチが続くわ」
「それは交渉じゃね…ぐわっ!」
腹にパンチした。
山賊は抗議する。
「交渉前からパンチした…」
「今のは交渉の手付金」
「パンチが手付金とかおかしい」
「これから本格交渉よ。準備はいい?」
「分かった! 分かったから!」
こっちが腕をブンブン回して肩慣らししてると山賊はすぐ降参した。
「話が早くて助かるわ」
山賊は「とんでもねえ聖女希望者だ」と文句を言うけど仕方ない。
これが一番手っ取り早いし。
私は催促する。
「じゃあ喋って」
「情報があったんだ」
「情報?」
「あそこにユニコーンが居るって」
「それで盗んだの?」
「違う。逃がしただけだ」
逃がした? 何を言っているんだろう。
奇妙な言い草に更に問い詰める。
「あのね。馬鹿な言い訳に付き合う時間はないの。パンチが足りないかしら」
「本当だ! 情報どころか金までくれたんだ。盗むんじゃなくて、ユニコーンを厩舎から出すだけでいいって言うんだ。俺たちにとっちゃ都合がいいんだ」
「どういう事?」
「ユニコーンなんて目立つ。売ったらすぐに足がつく。だからそういう希少なものは裏社会の取引、闇の勢力の仕切りのシノギだぜ」
「アンタたちは闇の勢力そのものじゃないの」
「俺たちはつまんねえ山賊だ。ギャングじゃねえ。せいぜいが窃盗や追い剥ぎだ。ギャングとは違う。あいつらはヤベえ。上役の機嫌を損ねたら俺らの首が飛ぶ。だからそんな真似はしねえし近づかねえ」
「だから金を貰って、ユニコーンを逃がしたの?」
「そうだ」
「相手の顔は?」
「覆面で隠してた。普通の背格好の奴だ」
「ふ~ん、そう。分かったわ。じゃあ罪も微罪だから心置きなく贖罪してきなさい」
こうして山賊は連行された。
ローティーは言う。
「信じるの?」
「怪しさ満点。もう一度聞き込みよ」
到底信じられなかったが、事件は意外な方向に向かう。
目撃証言が出たのだ。
木こりが山中で逃げ去るユニコーンを見た、と。
聞き取りを行うと彼は言うのだ。
「ああ、珍しいものを見たもんだ」
「確かですか?」
「角があったからな、間違いないな」
「誰かに捕らわれていた様子は?」
「人は居なかったよ。馬銜や手綱の類も無かった。自由に走って行ったよ」
私とローティーは顔を見合わせてしまった。




