農家の問題点を知る
小作人のローレル青年が来て3か月、初めての収穫があったようだ。
慣れた手つきで、収穫物を分けている。
「これは売り物になるやつ。これはならないやつ……」
「おはようございます。出荷の準備ですか?」
「そうです。売り物になるのと、ならないのを分けているのです」
「それはなぜですか?」
「野菜というのはできる時期がだいたい決まっています。
つまり市場にはどこも同じような野菜がならぶわけです。
同じような野菜がならぶと、必然的に形の良いものから売れていきます。
つまり形の悪いものは売れ残るのです。市場で形の悪いものばかり残ると、あの店は形の悪いものばかり扱っている。
そう思われるので、はじめから形の悪いものは取り除くのです」
「それで、これは捨てるのですか?」
「いいえ。だいたいは自家消費です。
ただ収穫物の2割くらいは形が悪いので、食べきれないのですが……。
そういう時は、畑に堆肥として戻します」
「なるほど……そうですか」
そういって、俺は部屋に戻った。
「精霊タンいる?」
「もちろんだよ。状況わかってる?」
「おー。全部見てるからね。いいじゃんか。下宿人2人と小作もできて、順風満帆じゃないか」
「あー。あの整理整頓のお陰で頭スッキリしてさ。あと依り代の子が寂しがり屋みたいだから、住んでもらったほうがいいと思ってさ」
「そりゃいいよ。部屋は使わないとダメになりやすいからね。それでどうしたんだい?」
「あーそうそう。形の悪い野菜なんだけど、なんとかならないかい?」
「うん……そうだね。この世界は塩が貴重品だから、漬物はムリ。砂糖も貴重品だからジャムも無理。だったら干し野菜にしてみたら?」
「干し野菜ってこの世界にあるの?」
「うーん干し肉だったらあるけど、干し野菜って文化はないかな」
「そっか……じゃあ。ちょっと工夫が必要だね」
ふたたびローレルに会いにいった。
「あのこの大根オレに20本ほどわけてくれないか?」
「いいですよ」
それから俺は乾燥大根作りに入る。試行錯誤の上、できるだけ薄く切り、日陰で干すほうがキレイに仕上がることがわかった。
そしてこれをローレルに食べさせることにする。
「なんだこのペラペラなのは?えっ大根。こんなムダにして……」
「ちょっとまって。これは水につけて、戻すんだよ。そしてスープの具やおかずにするんだ」
「おっそうかそうか。それは申し訳ないです。なるほど。これぜんぜんまた味が違うんですね」
「そうなんだ。これは薄く切って、日陰で干すとこういうキレイな色になる。日光だと色が悪いよ。ほら来月はもう大根がないじゃない。これを作り方の説明とこのサンプルを持って、お客さんに勧めてみたらいいんじゃないかな。来月は大根不足になる時期だし、これは作るのも手間もかかるから、通常の大根より高い値段で売れる。どうだろうか?」
「めちゃくちゃいい案ですね。これ大根だけですか?」
「トマトくらいまでなら、乾燥野菜にできるみたいだね。干し肉と同じで味はだいたい濃厚になる」
「クレストさん。これメチャクチャすごいですよ。これがもしこの国に普及すれば、農家の生活は劇的に変わります。みんな形の悪い野菜に困ってますから。これなら形の心配いらないし。それに作るのは、農村であれば、おばあちゃんやおじいちゃんにお願いするのもいいかもしれません。みんな働きたいけど、農作業はできんでの~って言ってますし…近くの村の村長さんのところに、提案してみませんか?もしそれが本当に売れるなら、村を救うことになりますから」
「うーん……なるほどな。うん君さえよければそうしよう」
「まずは売ってみて、人気になるかどうか見て…。もし人気が出るようなら、クレストさんが仕入れして売ってもいいんですし……売るノウハウもありますから」
「それはいいアイデアだね」




