今日から僕は 152
「沸騰したら入れろ!」
要はさっそく肉のほとんどを土鍋の中に放り込む。
「だしは良いのか?」
不安そうに尋ねるカウラ。
「そう言えば、昆布は?」
シャムは明らかに自分の行動を後悔している顔の要に尋ねる。
「いざとなったらあそこからもらえば?」
アイシャが指差した先では昆布をぐつぐつ土鍋で煮込んでいる嵯峨と、横で酒に燗をしている明石がいた。
「正確な判断力に欠けて、感情に流される。要の悪いところよね」
こちらもだしをとっている明華は、淡々とにんじんを土鍋の底に並べ始める。
「うるせえ!腹に入れば同じだ!」
怒鳴る要。呆れるカウラ。そして早速要の鍋を見限って他の鍋への襲撃を考え始めたアイシャ。ぜんぜん分かっていないシャム。
「まあ良いじゃないですか。ビール回ってますか」
誠がなだめるように顔を出したので少しばかり怒りを沈めた要が缶ビールを受け取る。
「私ももらおうか?」
カウラのその言葉。周りの空気が凍りついた。
「おい、大丈夫なのか?」
さすがの要も尋ねる。
「何があったんです?」
コップを配りにきた島田が変な空気を読めずにそう尋ねる。
「カウラちゃんがね、ビール飲むって」
「まさかー。そんなわけないじゃないですか!ねえ。いつものウーロン茶運ばせますから」
「いや、ビールをもらおう」
カウラのその言葉に島田の動きも止まった。
「大丈夫か?オマエ。なんか悪いものでも喰ったのか?それとも……」
睨む先、要の視線の先には誠がいた。
「僕は何もしてないですよ!」
「だろうな。テメエにそんな度胸は無いだろうし」
「まあ飲めるんじゃないの?基礎代謝とかは私達はほぼ同じスペックで製造されているから」
乾杯の音頭も聞かずに飲み始めているアイシャがそう言う。
「アイシャちゃん!ちゃんと待たなきゃだめよ。隊長!乾杯の音頭、お願いします。って隊長と明石さん!何してるんですか!」
リアナのその声に周りのものが嵯峨のテーブルを見ると。既に二人は熱燗を手酌でやっていた。
「すまん。明華頼むわ」
やる気がなさそうに嵯峨は明華に丸投げした。




