今日から僕は 153
「じゃあ失礼して」
明華が回りに普通の声で挨拶する。
「総員注目!」
大声で島田が叫ぶと、土鍋を前にしてじゃれ付いていた隊員達が明華に向き直る。
「保安隊隊員諸君!今回の作戦の終了を成功として迎える事ができたのは、貴君等の奮闘努力の賜物であると感じ入っている!決して安易とは言えない状況下にあって、常に最善を尽くした諸君等の働きは特筆に価するものである!私は諸君等の奮闘に敬意を、そして驚愕の念を禁じえない!」
「いつもの事ながら上手いねえ」
はきはきとした口調で隊員に訓示する明華を眺める要。
「西園寺さん。普通これは隊長の台詞じゃないんですか?」
ニヤつきながらラムのグラスを進める要に声をかける誠。
慣れた島田の段取りから見ても、この部隊の最高実力者が明華であることは明らかで、こういった席でも仕切るのは彼女だとわかった。
「今回の作戦では警備部に二名の負傷者が出たのが残念であったが。二人とも軽傷であったことは幸いであると言える。今後、予想されるさまざまな状況の変化に対応すべく諸君等は十分に・・・」
「長えな」
ぼそりと嵯峨が呟くのを見て、明華は切り上げる決意をした。
「実力を発揮して保安隊の発展に寄与する事を期待する!では杯を掲げろ!」
誠、要、カウラ、アイシャ、シャムが杯を掲げる。他のテーブルの面々もコップを掲げている。嵯峨もめんどくさそうに猪口を持ち上げる。
「乾杯!」
『乾杯!』
全員がどっと沸いて酒をあおる。
シャムがテーブル全員のコップと乾杯をすると、さらに明華達のテーブルに出かけていく。
「大丈夫か?」
コップを空にした誠が、要の声に気づいて、その視線の先を見た。
カウラが一息でコップの中のビールを空けていた。誠、要、アイシャはじっとその様子を観察している。
「大丈夫みたいだな」
「舐めるな西園寺、別にどうと言う事はない。なるほど。これがビールか」
ごく普通に立っているカウラ。
「肉、煮えたんじゃないの?」
アイシャはそう言うと土鍋の中を荒らす。
「オマエは野菜を食え!」
「要ちゃんが食えば良いじゃない」
「肉を入れたのはアタシだ」
「取ってきたのアタシだよ!」
シャムが手を上げるとその後頭部を小突く要。
「テメエは隣の鍋で食ってたろ!」
三人はいろいろ言い合いながらも、土鍋をつつきまわしていた。
「じゃあ春菊入れますね」
「神前、気が利くじゃないか?それと豆腐も入れろ!」
「要ちゃん、豆腐苦手じゃなかったの?」
「馬鹿言うな!鍋の豆腐は絶品なんだ!っておい!」
要はカウラを指差して叫んだ。自分用に注いでいたラム酒を一息で空にしたカウラ。
エメラルドグリーンの髪の下。白い肌が急激に赤くなっていく。
「なるほろ。これがラム酒ろいうものなろか?」
ろれつが回っていないカウラが出来上がった。




