今日から僕は 146
「ここは?」
頭痛とめまいを感じながら、誠は眼前の痩せた眼鏡の医師、ドム・ヘン・タン大尉の浅黒い顔を見た。
「起きましたよ、大佐。神前君、しばらくは安静にしている方がいいと思うが・・・」
ドム大尉。一応、管理部医療班の班長兼軍医である彼が見上げた先には、嵯峨がついたての隙間から入り口の方を見ている姿があった。
『起きたって!』
『騒ぐな西園寺。一応ここは病室だ』
『そうだよ!静かにしないと!』
『それより海の話。アタシは今月から来月の頭まで艦長研修があるから、それが終わってからってことで』
『またコミケの売り子押し付けるつもりね』
『私は行かないわよ!』
『俺も呼ばれるの?もしかして』
要、カウラ、シャム、アイシャ、サラ、パーラ、島田。
彼らがぼそぼそとしゃべっているのが聞こえてくる。
嵯峨はそんな様子を注意するわけでもなく、とりあえず誠に向き直る。
「まあ、初めてってのは何でも大変なものだ。ドクター。なんか問題点とかありました?」
外の騒動に笑顔を浮かべながら嵯峨は小柄なドムに声をかけた。
「特にないですね。多少の緊張状態から来る神経衰弱が見られるほかは健康そのものですな。出来ればヨハンにも見習わせたいくらいですね。特に中性脂肪の数値とか」
朗らかにドムはそう言うと席を立った。
「それと、やはりもう自室に戻るべきかもしれないね。あの連中がなだれ込んでくる前に」
そういったとたんに病室のドアが開いた。
「なんだ、元気そうじゃないか」
ドムと入れ替わりに入ってくる要達。皆笑顔で上体を起こした格好の誠を見つめた。
「とりあえず差し入れ」
と言うと要が飲みかけのラム酒のビンを突き出してくる。
「間接キッス狙いね!」
「馬鹿野郎!んな訳ねえだろ!たまたま他にやるもんがねえからだな!その……なんだ……」
おずおずと下を向く要。
してやったりのシャム。
「馬鹿は良いとして、本当に大丈夫か?」
要とカウラがそう言うと誠の背に手を当てて、起き上がろうとする誠を支える。
バランスが少し崩れて、誠の顔とカウラの顔が数センチの距離で止まる。
カウラのシャワーの後の石鹸の残り香が誠には心地よく感じられた。
しかし、すぐさまアイシャのニヤついた顔を見つけた誠は、それをごまかすようにカウラの手を借りてベッドから降りた。
「行きは時間がかかったのに帰りは亜空間転移かよ。まったく同盟法はどうなってるのかねえ」
二人のやり取りより、放心でもしているかのような雰囲気で彼らを見つめている嵯峨を気にしながら要はあてこするように言った。




