今日から僕は 145
「新入り!どうした!新入り!」
サイボーグ用のモニター付きヘルメットを脱ぎ捨てた要が、今にも泣き出しそうな調子で叫んだ。
「安心しろ。法術の本格使用は初めてなんだ。ただ寝てるだけだ」
サラミソーセージを咥えたヨハンの巨大な顔がモニターに映る。
「なら安心ね。私が救援に向かいましょうか?」
アイシャは淡々とそう言った。
「オメエは来るな。カウラ!手を貸せ」
それだけ言うと、要は漂っている誠機にカウラと共に寄り添う。
「それよりカウラちゃん。海って何の話?」
あっけらかんとたずねるアイシャ。急に顔を赤らめ俯くカウラ。
「海だ?カウラ!いつそんな約束したんだ!」
噛み付く要。さらに『那珂』の制御室からのシャムの映像が届いた。
「カウラちゃん!海行くの?ずっこいなー」
「誠の奴も命知らずだねえ。本当に菰田のアホに殺されんぞ」
整備班控え室からの通信に島田の声が響く。
「妬いてるの?要ちゃん?」
妙に余裕のある態度でアイシャが肩を震わせながら怒りを抑えている要と言う火に油を注いだ。
「うるせえ!誰がこんな役立たず!」
「助けてもらってそれはないんじゃない?それに今回の出動で彼もエースよ。しかもはじめての実戦でこの戦果は役立たずとは言えないんじゃないの?」
当然のことを言っているに過ぎないのだが、要には無性に腹が立つ言葉に聞こえた。
大きく深呼吸を三回ほどして、落ち着くととりあえずアイシャの言葉は無視することに決めた。
「去年も行ったとこ行こうよ!」
能天気なシャムが口を開く。
「良いですねえ。吉田少佐はどうします?」
不必要に軽い調子で島田が吉田に尋ねた。
「俺は、絶・対・行かない!」
「またルアー代わりに簀巻きにして海を引き回されると思ってるんですか?」
パーラが突っ込む。
「島田とシャムと西園寺が行かないってのなら考えてやっても良いが?」
ようやくシステムの完全制圧が終わり吉田の顔が画面に映った。
「ひどいよ!俊平!一緒に行ってくれなきゃ嫌だよ!」
シャムが慌てて叫ぶ。
「誰がなんと言おうと行かないからな!それとシャムのスクール水着と一緒に歩くのは俺のプライドが許さん」
「言うねえ。まあ安心しな、今回の件の事後処理で夏一杯は吉田には休暇の許可は出すつもりねえから」
部下達のじゃれ合うさまを見ながら、嵯峨は満足げにタバコを取り出した。
「この船は禁煙のようですが」
そんな嵯峨の行動を制するマリアが居た。




