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105/167

今日から僕は 105

 まだ夕食には早い。

 食堂はがらんとしていて、手が空いたばかりらしい整備員が三人、部屋の片隅で気まずそうに茶をすすっている。

 原因は要だった。

 牛丼、親子丼、カツ丼。

 これを目の前に並べながら不機嫌そうに三ついっぺんに口にかきこんでいた。

「要ちゃん!一緒に食べない?」 

 リアナがそう呼びかけると箸を止め、一瞬リアナの方を見たが、また視線を落として牛丼からカツ丼にどんぶりを持つ手を変えただけだった。

「誠ちゃん!何がいいの?」 

 備品購入用のカードを持ちながら、リアナは後ろについてきた誠に語りかける。

「そうですね。じゃあ焼肉定食で」 

「お姉さんの奢りだとずいぶん豪華なもの食べるじゃねえか」 

 要がワザと四人の耳に届くぐらいの声で独り言を言った。

「要ちゃん。そんなにすねなくてもいいじゃない!あなた直結操縦じゃなかったんだから、慣れていなかっただけじゃないの」 

 一言リアナがそう言うと、少しばかり要の表情が緩んだ。

「そうですねえ。まあ直結操縦だったら瞬殺だな」 

 ようやくドンブリを手放して要が誠達を眺めた。

 だがそこにアイシャがいることに気づいて、まるで子供のように頬を膨らませると、今度は親子丼を食べ始める。

「じゃあ誠ちゃんはこの食券ね。私は野菜炒め定食にしようかしら?それとアイシャちゃん!ちゃんと謝らなきゃだめよ!」 

 ワザと要が視界に入らないように後ろを向いているアイシャを諭すように、リアナが珍しくきつい調子でそう言った。

「さっきはお姫様のお気に入りの新人君といちゃついてすいませんでした!」 

「んだとこら!誰が誰のお気に入りだ!」 

「アイシャちゃん!」 

 リアナがテーブルを叩いた。

 その音で要とアイシャが正気に戻る。

「分かりました!お姉さんがそこまで言うのなら。でも先生はあげないけど」 

「別にアタシは新入りの事で怒ったんじゃなくて……。そうだお姫様扱いは取り消せ!アタシはオヤジの話をされるのが嫌いだって知ってるだろ?」 

「分かったわよ!要ちゃんは要ちゃんだと言うことで」 

「それでいい。新入り!とりあえず席とってあるから、ここ座れ」 

 ようやく機嫌を直した要が、殆ど空席だらけだというのに左側の席を叩いてそう言った。

「本当に素直じゃないのね、要ちゃんてば」 

 ようやく和やかになった食堂の雰囲気に満足したように、リアナはそう言うとカウンターに向かった。

 誠もまた二人の上官がようやく落ち着いたのを見計らってリアナの後に続いてカウンターに向かう。



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