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王太子に失恋をした公爵令嬢は、毒杯回避のために入った魔塔で、激重感情を向けてくる泣き虫な塔主の初恋を成就してあげる   作者: 水路


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07.再会

 ソフィアが魔塔での自由な日々を満喫して数日が過ぎた頃。


「ユーディーン様が塔にお戻りに?」


「そうなんです、ソフィア様!」


 ノヴァが嬉しそうに、ユーディーンが帰国したことを知らせてきた。


「確か、ユーディーン様が帰国されるのは、二か月後というお話ではなかったかしら?」


「ええ、いつもは会議が終わってからも、その国で視察や調査に回られるので、帰国されるまで時間がかかるのですけれど、今回はなぜか急に帰国を早められたのです! ソフィア様にもお会いされたいそうなので、ユーディーン様の執務室へ僕が案内します」


 できるだけ早く正式な魔塔の住人になりたいと考えるソフィアにとっては、その権限を持っている人物に早く会えるのなら、それに越したことはなかった。さっそく二人は、ユーディーンの元へと向かった。


◇◇◇


 ユーディーンの執務室は、塔の最上階にあった。

 魔道具を使い最上階まで登り、長い廊下を歩いて行くと、目の前に重厚な扉があらわれた。


「こちらがユーディーン様の執務室です」

 

 ソフィアへそう言うと、ノヴァは扉をノックする。


「ユーディーン様、ソフィア様をお連れしました」  


「入れ」


 中から声がした。その声を聞いたソフィアは、意外と若い声だなと思った。


 扉を開けたノヴァが、ソフィアを中へと促す。


 執務室の中は、天井まで高さのある本棚にぐるりと囲まれていた。中央には重厚な机。机の上にはいくつかの書物と、おそらく不在の間に溜まったであろう書類が、積み重ねられていた。


 椅子に座り、積み重ねられた書類の一つを読んでいる、長髪の男性が、おそらくこの部屋の主、魔塔の塔主ユーディーンだろう。


 前髪が顔にかかっているため、容貌はあまり分からない。けれども、先程聞いた声と姿勢を見る限り、かなり若いようだった。

 

 長い白鬚の老魔法使を想像していたので、ソフィアは意外に思った。そうして様子を伺っていると、椅子に座るその人物が、ゆっくりと顔をあげてきた。

 

 その顔を見て、ソフィアは思わず息を呑んだ。


――なんて美しいのでしょう。


 顔を上げた男性は、恐ろしく顔が整っていた。

 緩く後ろで結ばれた青みがかった銀灰色の長い髪。高く綺麗な鼻筋に、整った輪郭と薄い唇。長い睫毛に縁取られた、紫の瞳。左の目尻には泣きぼくろがある。


 王太子ダリウスも美形ではあったが、精悍なダリウスに対して、こちらは中性的な美しさをもつ美形だなと、ソフィアは思った。


 中性的な顔立ちをしてはいるけれども、そのしっかりとした体格と姿勢から、椅子に座っていても、かなりの長身であることが推測された。


 あまりの美しさに見惚れていると、その人物はおもむろに立ち上がり、ソフィアの前へと近づいてきた。


 黒色の長いローブを着たその人物は、予想どおりに背が高くて、ソフィアは自分より頭二つ分は背の高い、目の前に立つ人物へと顔を向けた。


「ソフィア様、こちらが魔塔の塔主、ユーディーン様です」


 ノヴァにそう教えられたソフィアは、頭を下げて挨拶をしようとした。


 その時。


「その魔力……あん時の魔力に間違いねぇ……。あんた、今までどこにいたんだよ?」


「えっ?」


 睨むような表情のユーディーンから、絞り出されるように発せられた言葉の意味が、ソフィアにはさっぱり分からなかった。

 

「今までどこに、とは? わたくしユーディーン様にお会いするのは、本日が初めてだと思いますけれども……」


 これだけの美形なのだ。どこかで会ったことがあれば、まず忘れるはずはないだろう。


 困惑しているソフィアに対して。


「十年だ、十年! 俺はあんたを探し続けてたんだ! それが何で今ごろ魔塔にあらわれたんだよ?……ここに来たってことは、まさか……あんた王国内にずっといたのか?」


 信じられないという顔をユーディーンはしているが、やはりソフィアには、ユーディーンに会ったという記憶はない。


「ずっと? ええ、わたくしは生まれた時からずっとシグネシア王国に住んでおりますわ」


「嘘だろ……」


 噛み合わない会話を続ける二人の間に、ノヴァが割って入ってきた。


「えーっと、ユーディーン様とソフィア様は以前からのお知り合いなのですか?」


「いいえ、初対面のはずですわ?」


「違う、初対面じゃない! ほんと、あんた今までどこで何してたんだよ!」 


 声を荒げるユーディーンに、やはり身に覚えのないソフィアは困惑し続ける。


「どこで何をと言われましても……わたくし、魔塔へ来る前の身分は公爵令嬢で、王太子殿下の婚約者として、王宮で王太子妃教育にはげんでおりましたわ」


「はぁ?」


 ソフィアのその発言を聞いて、呆然となるユーディーンに、ノヴァが横から補足説明を入れる。


「ユーディーン様、ソフィア様はローレイン公爵家のご令嬢で、ダリウス王太子殿下の婚約者だそうです」


「あら、婚約者ではなく、元婚約者ですわ」


「は? 兄上の元婚約者だと? 王宮にいた? 何だよそれ、ありえねーだろ……」


 絶望したような顔をするユーディーンを見ながら、ソフィアは手にした情報を整理する。


――兄上、とはダリウス様のことだろうか? ということはユーディーン様は王族? そういえば、魔塔入りした王族がいると、ダリウス様から聞いたことがある。わたくしが王宮にあがった時には、その方は既に魔塔に入られていたので、会ったことはなかったけれど。確か、とても魔力量が多くて、珍しい瞳の色をしていると……。


「あら? もしかしてあなた、あの時の泣き虫ちゃんではなくて?」


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