06.王太子妃教育からの開放
ユーディーンが帰国するまで、客人扱いとなったソフィアは、客室フロアへと案内され、そこで生活を始めた。
フロアは、魔塔の外からやって来た人が使用する場所のため、担当の使用人がいるだけで、魔塔の住人はいない。
ソフィアが案内された部屋は、狭くはあるものの、備え付けの家具とベッド、水回りも一通り揃っており、綺麗に整えられていた。
「あ~、自由だわ!」
ベッドに寝転んで、ぐぐっと身体を伸ばしながら思わずそんな声が出た。
長時間の睡眠を貪っても何も言われない。コルセットの締め付けもない。髪も結わなくていい。食事も制限しなくていい。甘い物もジャンクな食べ物もお願いをしたらすぐに用意してもらえる。好きな時間に好きなだけ食べても、誰にも注意されない。
「なんといっても王太子妃教育を受けなくていいのが、最っ高に幸せですわ! ああ~、一刻でも早くここの住人になりたいわ! ユーディーン様、早くお戻りにならないかしら……」
王宮での窮屈な日々から開放されたソフィアは、魔塔での自由な生活を満喫していた。
◇◇◇
一方その頃、各国代表の魔法使いが集まる重要な会議に、ユーディーンは王国の代表として参加していた。
重要な会議ではあるものの、大陸一の魔力量と魔法の才能を持ち合わせたユーディーンにとっては、会議の内容は退屈なものだった。
暇を持て余したユーディーンは、真面目に会議の内容を聞いているふりをしながら、手元の資料の空きスペースに新たに考案した魔法の術式を落書きしていた。
するとその時。
「――!」
ユーディーンが構築した、シグネシア王国の国土防衛システムに、今まで一度もかかったことのない魔力が出現した。
そのことに気を取られたユーディーンは、手元で落書きをしていた術式に思わず魔力を流してしまう。流れた魔力を受けて、術式は起動しはじめた。
異変に気が付いた隣席の魔法使いが、ユーディーンに小声で話し掛ける。
「ユーディーン殿、どうかなされましたか?」
その声にはっとしたユーディーンは、システムから意識を戻すと、手元の資料から発動しかけていた魔法を、軽く手で払い消し去った。
「ああ、いや……なんでもない」
隣席の魔法使いは、なおも怪訝な顔をしていたが、しばらくすると会議へと再び集中していった。
ユーディーンはその間も、システムがとらえた、未知なる魔力に心を奪われ続けていた。




