47 『任せてくれ!』
「えっ」
「え?」
「え、うそ、だろ……」
……あれ、無自覚なのかよッ!?
カサネは何もわかっていなさそうな顔で、こちらを見上げている。
アサヒはなんとも言えない気持ちになった。
……めちゃくちゃ熱かったんだぞッ、お前の想いがッ!!
「やけどとは、どういうことじゃ?」
「………………いや、なんでもないよ」
「そ、そうか? なら、よいのじゃが——」
クシャクシャッ!
「んにゃーーッ!? ま、またかーーッ!?」
カサネの頭をこれでもかってくらいに撫でまわす。
ほんのちょびっとだけ、あのやけどしそうな熱への仕返しがしたくなった。
やっぱり、カサネの髪は触り心地が良かった。
「ふぅ、よしッ」
カサネの頭から手を離す。
「よしッ、じゃないわッ! あーもぅッ、妾の髪がぁ……」
「ごめんごめん」
恨めしそうに見上げてくるカサネに言葉を返し、アサヒは自分の手のひらを見つめる。
震えは、止まっていた。
そんなアサヒの様子に気づいたのだろうか。
カサネが静かに問いかけてくる。
「では、そろそろ時間を動かすぞ。よいな?」
「あぁ、大丈夫だよ」
「うむッ」
カサネは満足そうな顔で頷いた。
そして……
「アサヒならやれるッ! 妾は信じておるぞッ!」
堂々と断言した。
……俺の何を信じてんだか……。
あいかわらず根拠がなくて、説得力のかけらもないなと思った。
でも……
「そうだな……」
カサネに言われると、本当に何でもできそうな気がしてくる。
それこそ、ラキシアを助けて、そのまま世界もサクッと救えてしまいそうなくらいに。
だから、こう答えた。
「任せてくれ!」
「おぉッ!」
カサネは目を見開き、声を上げる。
「それでこそッ、妾のアサヒじゃッ!!」
その声は、とても嬉しそうだった。
すぐ横で、カサネが両手を合わせている。
灰色だった世界が色を取り戻していくのがわかる。
木の根の隙間から、ラキシアとグラムガンドを見る。
「…………」
勝負は一瞬だ。
グラムガンドはラキシアを鷲掴みにして、巨大な口を開けている。
それが閉じられる前に、ラキシアを助け出さないといけない。
……待っててくれ、ラキシア。すぐ助ける。
頭の中で、どう動くかイメージする。
ハッキリ言って、今浮かんでいる動きはどれも人間離れしたものばかりだ。
でも……。
……今の俺ならできるッ。この信仰心があればッ!
カサネの想いと、ラキシアの祈りを信じる。
そして、世界が色を完全に取り戻して——
「いまじゃッ!!」
「ッッ」
アサヒはおもいっきり地面を蹴った。
さっきまでびくともしなかった木の根が、まるでアサヒの意志を尊重するかのように開く。
アサヒは開いた木の根のあいだから飛び出し、グラムガンドの足元まで走った。
……借りるぞッ!
アサヒは地面に転がるラキシアの剣を掴み、そのまま真上に跳ぶ。
そして——
一閃。
ブシュッ!!
血飛沫が舞った。




