42 『指切り』
カサネは驚いた表情のまま固まっている。
「カサネ?」
「……………………はっ!! ララ、ラキシアをッ、た、助ける方法じゃなッ!!」
なんともぎこちない反応だ。
「あ、あぁ。……大丈夫?」
「だだ、大丈夫じゃッ。しょ、少々アサヒの言葉に面食らっただけ、じゃよッ。ま、まったく問題ないのじゃッ」
目が泳いでいる。
「ア、アサヒよ……や、約束ッ、忘れるでないぞッ!」
「わ、わかったよ」
アサヒはその問いかけに頷いた。
覚悟、というほど大層なものではないが、カサネのそばにいると決めた。
あいかわらず、こんな自分に何ができるのか自信はまったくないが……それでも、必要だと言われたからには、やれることはやろうと思う。
カサネの期待に応えられるように。
「そのかわり、カサネも約束守ってくれよ?」
カサネはプイッと顔を逸らす。
「ふ、ふんッ、神である妾がッ、嘘をつくわけがなかろぅッ」
「…………」
……いや、めちゃくちゃ嘘ついてたじゃん。あの白い空間で。
「カサネ」
「な、なんじゃ?」
「今度、針を千本飲んでもらうから」
「なにゆえッ!?」
声を上げるカサネ。
「え、ちょ、はり……え!?」
意味がわからないという顔で狼狽えているカサネに向かって、アサヒはニコリと微笑みながら告げた。
「嘘ついたときの罰だよ。……必要だろ?」
「なっ!?」
これでもかというくらいに、目と口を開いている。
「なな、な……なにも、そそ、そこまでしなくても、よよ、よいのでは、ないかのぅ? う、嘘をついた者が、ちゃ、ちゃんと反省をすれば、そ、それで——」
辿々しく言い訳を並べるカサネに、アサヒは右手の小指を差しだす。
「ん」
「……アサヒ?」
そのアサヒの行動を見て、カサネはポカンとした顔をした。
「指切り」
「ゆびきり?」
「そっ、指切り。約束を守るためのおまじない……儀式?みたいなもんだよ」
指切りを知らないカサネに、簡単に説明する。
「お互いの小指を絡めて、必ず約束を守るって誓うんだよ」
「おぉッ」
「こういうのがあった方が、約束守れそうな気がするでしょ?」
「そうじゃなッ! ではッ、さっそく!!」
お互いの小指を絡める。
「妾はッ、ずっとアサヒのそばにおるッ!!」
「俺も、ずっとカサネのそばにいるよ」
「そしてッ、必ずラキシアを助けるッ!!」
「あぁ!」
小指を離す。
カサネは自分の小指を静かに見つめていた。
「ふふ、指切り……」
その小さく呟いた横顔は、どこか嬉しそうに見えて、まるで神様ではなく幼い少女を見ているようで……。
「はっ!! も、もしやッ……指切りと、針を千本飲むこととは、な、何か密接な関係が……?」
「さぁ、どーだろーねぇ」
「なぁッ!?」
とりあえず、指切りの細かい内容に関しては、しばらく黙っておこうと思った。




