表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この異世界転生はベタばかり  作者: 龍神慈樹
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/57

40 『アサヒがいいッ!!』




「妾には、何もなかったのじゃ」


「…………」


「知る者など誰もいない。誰かと話をすることもできない。一人でい続けることしかできない。そして、そのまま誰にも知られることなく消えるものと思っておった」


 声が震えている。


「寂しくて怖くて……誰かにそばにいてほしいと、どれだけ願ったことか……」


 アサヒは、カサネの言葉を黙って聞くことしかできない。


「そんな何もない妾を見つけてくれたのが、アサヒなのじゃ。あのとき、どれほど嬉しく思ったことか。話ができる。手を伸ばせば触れることもできる」


 言葉の節々から、カサネの想いが伝わってくる。


「確かに、良いことばかりではなかったかもしれぬ。アサヒとは言い合いもしたし、森で一緒に遭難もした」


 ぽたり。ぽたり。ぽたり。


「それでも、アサヒがそばにいてくれる。それが、妾にとってはとても…………嬉しかったのじゃ」


 息がかかるほどの距離。

 アサヒは、カサネの目から涙がこぼれていくのを、ただ呆然と見ていた。


「じゃからッ」


 カサネは額を離し、そんなアサヒを真っ直ぐに見つめて告げる。


「死なせてくれなどと、寂しいことを言うでないわ」


「ッッ」


 おもわず呼吸が止まる。


「アサヒが恐怖を感じているのはわかる。自らの無力感に打ちひしがれて、死なせてくれと言ったのも理解できる。じゃがッ、妾はアサヒを諦めることなどできぬよ」


 涙でぐしゃぐしゃになった顔で、それでも言葉は真っ直ぐで。


「妾を起こしてくれて、眷属になってくれて、動けなくなったところをおぶってくれて…………ふふ、手を握ってくれたりもしたのぅ」


 カサネが涙を流しながら静かに微笑む。


「妾は、その全てをけっして忘れぬぞッ」


「ぁ…………で……も……」


 声が出ない。

 口を開けて絞り出そうとするが、言葉になってくれない。


「ぉ……れは、な……に、も……」


 ……何か言えッ、早くッ、カサネにッ、何か……何かッ、早くッ!!


 なんとか、カサネの想いを拒もうとするが……


「でき、な——」


「妾の眷属は絶対にッ!! アサヒがいいッ!!」


 そんなアサヒの脆い抵抗を、カサネは再び真っ向から否定する。


「アサヒ以外は考えておらんッ!! アサヒとはまだやりたいことが沢山あるのじゃッ!!」


「ッッ!!!」


 まるで殴られたかのような衝撃が、アサヒの全身を震わせた。

 そして、アサヒは跪いたまま、力なくくずおれた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ