✒ 万引きGメン 4
幼い子供がスナック菓子を食べながら、買い物を終えた男の背後から声を掛ける。
???
「 あれれぇ~~~~。
お兄さん、レジに通してない商品が有るのに、お店から出ちゃうのぉ~~~~? 」
お兄さん
「 は?
何だよ、お前は! 」
???
「 ねぇ~~。
ちゃんと、お金を払わないと泥棒になっちゃうよぉ~~~~?
あっ!
もしかしてぇ~~、お兄さん、万引きする気なのかな~~?
最近、多いもんねぇ、万引きする人ぉ~~ 」
お兄さん
「 おい!
声が大きいぞ!
注目されるじゃないか! 」
???
「 どうして注目されたら困るのぉ?
何も疚しい事をしてないなら、注目されても構わないよね?
あっ、そっか!
店員さんに調べられて、お巡りさんを呼ばれたら困るような事をしたんだね! 」
お兄さん
「 だ…黙らないか!
俺が万引きだと!?
Gメンでもないくせに偉そうに言うな!
親は何処に居るんだよ、ガキ! 」
ガキ
「 あれれぇ~~~~?
何で怒るのかなぁ?
疚しい事をしてるって証明してるよねぇ? 」
お兄さん
「 っ──このガキ! 」
ガキ
「 1ミリも疚しくないなら、買い物カゴの中を店員さんの前で確かめれるよね! 」
お兄さん
「 おい!
勝手に買い物カゴを取るんじゃない! 」
子供は男からサッと引たくるとサッカー台の上へ置く。
子供は遠慮無く買い物カゴの中から商品を取り出しながら、商品の名前を読み上げていく。
男の顔は赤く染まっており、まるで茹で蛸を思わせる。
子供
「 あれれぇ~~。
おかしいね、お兄さん。
イヤホンとかモバイルバッテリーとかSDカードが入ってないね。
セルフレジを通す前には、買い物カゴの中に入っていた筈なのに、どうして無いのかなぁ~~?
値段の高い商品だけが見当たらないよ~~ 」
お兄さん
「 お前の見間違えだろ!
ちゃんと見ろ!
レシートにも載ってないだろ! 」
子供
「 でもね、お兄さん……僕、見ちゃったんだよねぇ。
お兄さんが、マスクの箱を開けて、値段の高い商品を入れてる所を見ちゃったんだよねぇ 」
お兄さん
「 な゛っ!? 」
子供
「 あっ、店長さんと店次長さんが来てくれたよ!
マスクの箱を開けて、確認してもらおうよ。
疚しい事してないなら、構わないよねぇ、お兄さん♥️ 」
お兄さん
「 くっ…… 」
店次長
「 これは一体何の騒ぎですか? 」
子供
「 店長さん,店次長さん!
このお兄さんが、値段の高い商品をレジに通さないで帰ろうとしたから声を掛けたんだよ。
万引きは悪い事だよ。
地獄の閻魔様に舌を抜かれたら痛いでしょ?
お兄さんも舌を抜かれるのは嫌だよね? 」
お兄さん
「 …………………… 」
子供
「 店長さん、これは──お兄さんが支払った商品が載ってるレシートだよ 」
お兄さん
「 何時の間に!? 」
子供
「 店次長さん、マスクの箱を開けてみて。
レジを通してない値段の高い商品が出て来るよ 」
お兄さん
「 ──や、止めろ!
触るな!
出て来る訳ないだろ! 」
子供
「 そっかぁ、箱を持ったら重さで分かっちゃうよね。
軽い筈のマスクの箱が重くなってるからさ── 」
お兄さん
「 っ── 」
店次長
「 た…確かに……マスクが入っているにしては重い……。
店長、箱を開けてみます 」
店長
「 私も、もう1つのマスクの箱を開けよう 」
お兄さん
「 止…めろ!
開けるなよっ!! 」
店次長
「 ──これは!
店長、4.000円するモバイルバッテリーが2点、入っていました! 」
群がっている野次馬と化した客達から驚きの声が上がる。
店長
「 此方からも出て来たぞ!
これは……2.000円相当のイヤホンと、3.000円相当のSDカードが4点だ! 」
再び野次馬と化している客達から驚きの声が上がる。
子供
「 うわぁ~~。
本当に高い商品ばかりだね!
これはちゃんとレジを通して買わないといけないね!
このまま、お店を出ていたら、お兄さんは泥棒になっていたね。
警察に現行犯逮捕されて、刑務所に入れられていたよ。
閻魔様からま舌を抜かれちゃうとこだったね!
お店を出る前に見付けてもらえて良かったねぇ 」
店次長
「 ………………マスクの箱の中に入っていた商品ですが、どうされますか?
このまま買われますか?
売り場へ戻されますか? 」
お兄さん
「 っ~~~~~~(////)」
子供
「 お兄さんは、TVで見た万引き犯の手口を真似したんだよね?
僕もTVを見ていたから知ってたよ!
世間って狭いよねぇ、お兄さん。
TVで見た手口を安易に真似しちゃ駄目だよ。
人生はリセット出来るゲームじゃないんだからさ。
これに懲りたら、万引きしようなんて思わないで、ちゃんと買おうよ。
──これ、お兄さんの共犯者がサッカー台に置いて行ったレシートだよ。
警察に指紋を調べてもらったら、共犯者が誰か直ぐに分かるよ。
明日のネットニュースは、お兄さんと共犯者さんがトップを飾る事になるだろうね!
全国デビュー、おめでとぅ~~★ 」
子供は手に持ったレシートをヒラヒラとさせながらニタニタと笑っている。
???
「 あっ!
シュンシュン!
何してるんだよ! 」
霄囹
「 マオか。
見ろよ、万引き犯を懲らしめてたんだ 」
子供の口調が変わると、晒し者にされた男の顔色が変わる。
マオ
「 万引き犯ってのは店から出て捕まえるもんだろ。
未だ店の中じゃんか 」
霄囹
「 常習犯にならない様に “ 未遂 ” にしてやったんじゃないか。
慈悲心だよ、慈悲心! 」
マオ
「 何が慈悲心だよ。
態と人集りの中でバンしといて── 」
霄囹
「 万引きに対して、払拭の出来ないトラウマを植え付けてやったんだ。
感謝してほしいねぇ。
これだけ大勢の前で要らぬ恥を掻いたんだ。
これで懲りずに万引きに走るなら、コイツの人生は汚物以下さ 」
マオ
「 “ 汚物以下 ” は言い過ぎだろ……。
未遂にしないで、現行犯逮捕してもらえば良かっただろ。
態々大勢の前で恥を掻かせる必要は無かったと思うけどな 」
霄囹
「 お前、善人の皮を被った鬼畜かぁ? 」
マオ
「 誰が鬼畜だよ! 」
霄囹
「 良いか、マオ。
未遂ってのは救済処置なんだよ。
コイツは天から与えられた救済処置に、一生涯を懸けて、報いる義務が出来たのさ。
見逃された恩に対して、裏切り行為をした時点で、コイツの人生は詰む。
天の信頼を裏切った代償は高く付くんだ。
これから見物だねぇ 」
マオ
「 シュンシュン……。
別に、この人の人生が詰もうがオレ達には関係無いだろ。
犯罪者になりたいなら、好きなだけならせてやれよ。
辛くて苦くて惨めな思いをするのは、この人なんだからさ。
自分で選択した人生なんだから、後悔はしない筈さ 」
霄囹
「 その通りだ。
仮にコイツが豚箱生活する羽目になっても、1000%コイツの過失だし、責任だ。
誰の所為でもない。
どうやら僕は、余計な事をしてしまったみたいだな。
佛心なんて出すもんじゃないな、マオ 」
マオ
「 佛心なんて出してないくせに!
帰るぞ 」
霄囹
「 分かった分かった 」
オレはシュンシュンの手首を掴んで引っ張る。
シュンシュンの暇潰しでバンされた不運な男が、この後 “ どうなるか ” なんて知らない。
きっと、これからオレ達の知らないドラマが展開される事になるんだろう。
お客用の出入り口から店を出たら、《 裏野ハイツ 》へ帰る事にした。




