⭕ 天狗様の子 7
“ 天狗さん ” が聞かせてくれた内容は以下だ。
因みに “ 天狗さん ” 曰く、『 ≪ 里 ≫で暮らす同族以外の者に名前を名乗るのは固く禁じられている 』って事で、名前は教えてもらえなかった。
そんな訳で、天狗さんには “ 天狗さん ” と呼ぶ事を快く承諾してもらえた。
どうやら天狗さんは、子供の父親ではなく、父親天狗の兄弟らしい。
子供だった依頼主のピンチを助けたのは、天狗さんの義兄さんらしい。
義兄さんは幼い依頼主に一目惚れをした為、助けた状態のまま無断で連れ去ってしまったそうだ。
霄囹
「 おぃおぃ、誘拐犯じゃないか 」
マオ
「 そだな……。
助けて、そのまま連れ去るなんて完全にアウトだよな…… 」
幼い依頼主を≪ 天狗の里 ≫へ連れ込んだ義兄さんには、幼馴染みの婚約者が居たらしい。
婚約者が居るにも関わらず、一目惚れした幼い依頼主にゾッコン状態となった義兄さんは、婚約者を放ったらかしては幼い依頼主の世話を甲斐甲斐しく焼いたらしい。
霄囹
「 目も当てられない最低野郎じゃないか 」
マオ
「 シュンシュンが言うかな。
婚約者さんが可哀想で不憫だよ…… 」
幼い依頼主も何かと気に掛けて親切にしてくれる義兄さんに惹かれ、双方が両想いとなるには時間も掛からなかったようだ。
だけど、≪ 天狗の里 ≫では婚約者との婚姻は絶対だから、義兄さんは婚約者と祝言を挙げて夫婦になった。
それでも義兄さんは幼い依頼主にゾッコンで、何かと理由を付けては世話を焼いていたそうだ。
霄囹
「 クズってるじゃないか。
親は知らん顔か? 」
マオ
「 今のところ、被害者は誘拐された依頼主と義兄さんの夫婦になった奥さんの2人かな? 」
年長者達の話し合いの末、幼い依頼主の記憶を消して自宅に帰す事になったんだけど──、義兄さんは奥さんを放ったらかして幼い依頼主を連れて≪ 天狗の里 ≫を出てしまったそうだ。
数年後、義兄さんと成長した依頼主が発見されたんだけど、依頼主は義兄さんの子供を身籠っていた。
霄囹
「 ドロドロした昼ドラみたいな展開だな 」
マオ
「 誘拐した依頼主と子作りに励むなんて犯罪者も吃驚じゃないか? 」
霄囹
「 そうとも言えないぞ。
誘拐犯は誘拐した弱い子供を拉致監禁して玩具にして遊ぶ変態野郎が多いからな。
暴行されて孕まされるよりはマシだろ 」
マオ
「 両想いだもんな? 」
発見された義兄さんは捕らわれて、監禁される事になった。
身籠った依頼主の処遇についての話し合いが始まったけど、結論が出る前に “ 誰か ” が依頼主を≪ 天狗の里 ≫から追い出してしまったらしい。
依頼主が≪ 天狗の里 ≫から姿を消してしまった事を知った義兄さんは、ショックのあまり気が狂い正気も失い、壊れてしまったらしい。
能力を封じられた状態で、監禁場所から出してもらえぬまま、義兄さんは日に日に弱り、衰弱死してしまったそうだ。
霄囹
「 微塵も同情の出来ない奴だな 」
マオ
「 誘拐した依頼主を妊娠させちゃってるもんな…… 」
嫉妬に狂って依頼主を≪ 天狗の里 ≫から追い出した犯人は、義兄さんと夫婦になった奥さんだった。
自分は正妻なのに、夫には目をくれられず、放置され、人間の幼女に現を抜かし、人間の幼女を連れ去り≪ 天狗の里 ≫を出た後、成長した幼女に子供を孕ませていたと知り、怒りが抑えられなかったらしい。
無防備な状態で≪ 天狗の里 ≫を追い出せば、腹を空かせた怪異に喰われるだろうと思っていたそうだ。
現に今の今まで依頼主の事は死んでいると、誰もが疑っていなかったんだとか。
義兄さんが衰弱死した後、奥さんは義兄さんの亡骸を抱きしめたまま監禁部屋で自害したそうだ。
裏切られて浮気までされて、大事にされなかったのに、一途に義兄さんだけを愛していたらしい。
自害はしちゃ駄目だと思うけど、義兄さんの存在しない世界で生きて行くのに耐えられなかったんじゃないか──って言われているみたいだ。
奥さんは義兄さんに対して、相当ゾッコンだったらしい。
マオ
「 変わり果てて行く義兄さんの様を見て、奥さんは何を思ったんだろうな── 」
霄囹
「 態々≪ 天狗の里 ≫から追い出した事を伝える当たり、相当な鬱憤が溜まってたんじゃないか?
カミングアウトせず、黙っていたら、2人は今でも生きていたかもな 」
マオ
「 そだな。
監禁場所からは出してもらえない訳だから、依頼主と子供とは会う事は許されなかったかも知れないけどな? 」
そんなこんなが有って、≪ 人間界 ≫に出ていた仲間が、懐かしい面影を見付けたらしい。
それが今回、天狗さんが連れ帰る事になった子供だ。
義兄さんは居ないし、義兄さんと夫婦になった実姉さんも居ない。
それでも天狗の血を引き、神通力を扱える子供を≪ 人間界 ≫に残しておく訳にはいかないそうだ。
マオ
「 制御の仕方を知らないまま育って、神通力が暴走したら、どうなるんだ? 」
霄囹
「 さぁな。
良くない事が起こるのは分かるだろ 」
天狗(?)
「 …………神通力の制御が出来なければ……転身した姿で暴走する。
近くに居る人間を貪り喰らう事になる…… 」
マオ
「 人間を喰べるんだ?
セロと幻夢さんが知ったら喜びそうかも…… 」
霄囹
「 良いんじゃないか。
商売敵が減るなら僕にとってはラッキーだしな 」
マオ
「 シュンシュン! 」
霄囹
「 然し、マオの中でも幻夢は確り “ 危険人物認定 ” されてるって事が知れて、僕は嬉しいねぇ 」
マオ
「 なっ?!
オレはっ、幻夢さんを “ 危険人物認定 ” なんてしてないぞ!
変な誤解をしないでほしいな! 」
霄囹
「 どの口が言うんだかなぁ~~。
ちゃっかりセロフィートと並べてるじゃないかよ 」
シュンシュンはオレを見ながらニマニマと厭らしく笑っている。
マオ
「 違うって! 」
霄囹
「 必死になるなよ 」
ケラケラと笑い転けるシュンシュンに対して腹立たしさを感じるけど、このまま話をズルズルと脱線させる訳にはいかない。
オレは静かに息を吐いて気持ちを切り替える事にした。
マオ
「 天狗さんは子供が神通力を暴走させない様に制御の仕方を教えたいんだね。
その為に迎えに来たって事で良いんだよね? 」
天狗(?)
「 そう思ってもらえると幸いだ 」
マオ
「 ………………子供の気持ちはさ、どうなんだろうな?
母親家族と離れた土地で暮らしても良いと思ってるのか──、母親家族と離れて暮らしたくないって思ってるのか──。
先ずは子供から『 どうしたいのか 』って言う思いを聞いて、尊重するのが1番なんじゃないかな? 」
霄囹
「 子供の思いを尊重ねぇ?
仮にだぞ、子供が『 ≪ 天狗の里 ≫に行きたい。≪ 天狗の里 ≫で暮らしたい 』なんて言ったとしてもだ、欲深い依頼主家族が素直に子供の思いを尊重して送り出すと本気で思うか?
金の為なら悪魔に魂を売り払い、自分以外を犠牲にしてでも稼ごうとする意地汚いのが人間だ。
金の為なら平気で伝染病を撒き散らし、世間を混乱に陥れる事すら厭わない非道な事が出来る人間だぞ 」
マオ
「 幾ら何でも飛躍し過ぎだろ、それは。
間違ってはないけどさ──。
天狗さんに確認したいんだけど──、神通力の制御の仕方を教えるのは≪ 天狗の里 ≫じゃないと出来ないの? 」
天狗(?)
「 そんな事はないが── 」
マオ
「 ん~~だったらさ、子供を迎えに来た理由をちゃんと伝えて、神通力が暴走した場合の危険性も丁寧に話してさ、制御の仕方を覚える必要性を伝えたら良いんじゃないかな。
でさ、≪ 天狗の里 ≫に連れ帰らないかわりに、天狗さんには屋敷に住み込んでもらって、神通力を暴走させない為に制御の仕方を教える先生をしてもらう──って事を依頼主家族に提案してみたらどうかな?
そうすれば、子供は母親家族と過ごしながら神通力の制御方法を学べるから、揉めなくて済むんじゃないかな? 」
霄囹
「 そんなに上手く行く訳ないだろ。
甘ちゃんな考え方だな 」
マオ
「 天狗さんと依頼主家族の間に陰陽師と退魔師が入れば良いじゃんか。
キノコンだって居てくれるし、出来ない事は無いだろ 」
霄囹
「 キノコンへの依存度も半端ないな 」
マオ
「 な…何言ってるんだよ!
キノコンに依存してるのはシュンシュンもだろ!
それに『 一家に1体のキノコンを! 』の目的は未だ果たせて無いじゃないか。
これだけ広い屋敷ならキノコンだって大活躍が出来そうだし── 」
霄囹
「 そうだな。
スパイは必要だ 」
シュンシュンは悪巧みをする悪人みたいにニヤッと笑う。
マオ
「 スパイって──。
天狗さん、依頼主家族との話し合いの場は、シュンシュンとオレが作るよ。
だから── 」
霄囹
「 聞く必要なんか無いだろ。
主人が望むなら、それを叶える為に最善を尽くすのが眷属ってもんだ。
コイツに拒否権は無い! 」
マオ
「 シュンシュン……。
賛成してくれるのは嬉しいけど、天狗さんに強要するのは駄目だって 」
霄囹
「 仮に話し合いで揉めて交渉が決裂したとしても、セロフィートに記憶を改竄してもらえば済む事だ。
強要したって何の問題も無いねぇ。
だろ? 」
マオ
「 シュンシュン…… 」
確かにシュンシュンの言う通りだ。
オレが羞恥心を捨てて、セロに “ おねだり ” をすれば──、セロは天狗さんや依頼主と依頼主家族の記憶を改竄してくれるだろう。
だけど、可能な限り安易に記憶の改竄なんて事はしたくないって思っている。
これはオレの我が儘なのかな?
楽っちゃ楽なんだけどな~~。
◎ マオが良心を失いかけている事が判明しました。
人間的な良心は既に失っているかも知れませんが……。
良心って何だろう??




