第8章 一分一秒が貴重だ
**第8章 一分一秒が貴重だ**
決断は下された。
ベンと友人たちは、ルルヴィに命を吹き込むことを固く決意していた。
残り時間はわずか一ヶ月。しかし、誰一人として諦める気はなかった。
ベンは拳を高く掲げ、熱を込めて言った。
「明日、ヨーク・ドロで集合だ!」
レイがうなずく。
「早く始めれば始めるほど、時間を稼げる」
ジョプリは遠くを見つめ、懐かしげな笑みを浮かべた。
「それでも、あそこへ戻るのは妙な気分になるな……」
後ろから、聞き慣れた声が響いた。
「準備もなしに本気で始めるつもり?」
一同が振り返る。
キムが立っていた。会話を聞き、すでに何かを考えていたようだ。
「私も手伝いたい。ベン、ジョプリ、レイ、マジー以外の誰も、販売の経験がないでしょ?」
メイが母親を好奇の目で見つめた。
「ママ……何を提案するの?」
皆がキムに注目する。
「コーチよ!」
キムは微笑んだ。
「販売技術の授業をします」
指を折りながら項目を数える。
「言うべき言葉……避けるべき言葉……顧客への正しいアドバイスの仕方……そして適正なサイズの見極め方まで」
マックスがすぐに眉を上げた。
「本当に?」
そして笑みを浮かべる。
「素晴らしいアイデアだ!」
グレイがうなずいた。
「同感だ。明日から始めよう」
メイが眉をひそめる。
「『私たち』って、誰のこと?」
キムは腕を組んだ。
「私立病院の新しい同僚たちよ」
グループを見据える。
「明日の朝九時に来て」
そしてベン、ジョプリ、レイ、マジーを指差した。
「あなたたち四人は除く」
「どうして僕たちだけ?」とジョプリが尋ねる。
「すでに販売経験があるから。直接ブティックの方を担当して」
一同はその知らせを熱狂的に受け入れた。
全員一致で出席を確認する。
「ありがとう、キム!」
ベンが笑った。
「すぐに済むさ、みんな!」
その後、それぞれが空路で私立病院を後にした。
メイが地上から手を振る。
「すぐ会おうね! 素敵なブティックを作って!」
「任せて!」
空中でグループが分かれていく。
ベンは体に残る傷を抱えながらも、なんとか飛んで自宅まで戻った。
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**眠る前に、もう一つだけ**
その朝、ベンは緊張した面持ちで家を出た。
夜、再びドアを開けたときには、心ははるかに落ち着いていた。
それでも、眠る前にもう一つだけやらねばならないことがあった。
ベンは自室に上がる。
クローゼットを開けた。
フィッシアーノのロゴが入った服に目が止まる。
一着ずつ取り出し、
階下のリビングへ降りた。
暖炉の前で、かつての自分が着ていた服を最後にもう一度見つめる。
そして炎の中へ投げ入れた。
火がそれらを呑み込んでいく。
ベンは数秒、静かに佇んだ。
そして低く呟く。
「もう二度と……」
最後の一着が炎に消えていくのを見守った。
「もう二度と、このブランドは着ない」
声に怒りはなかった。
ただ、決意だけがあった。
ベンは再び自室へ戻る。
ようやく眠る準備ができた。
終わりのないように感じられた二日間のあと、ようやく本物の眠りにつけるはずだった。
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**翌朝**
翌朝、SNSと報道に一本の記事が現れた。
その見出しは見逃しようがなかった。
「カイジェン家が崩壊:メリに続き、ベン・カイジェンが自らのブランドを創設!」
情報は急速に広がった。
人々はベンと両親の間に起きたことを、驚きをもって知った。
コメントが溢れ、記者たちはフェルナンドの本社前でメリの声明を求めようとした。
しかし警備はきっぱりと拒んだ。
「フェルナンド夫人は一切コメントしません」
その一方で、このニュースは近日中に開催される競技に参加する他のラグジュアリーハウスをも揺るがし始めていた。
その中に、すでにベンをよく知る者がいた。
イェッソだ。
前回のフィールドでの対決で、彼はこう言った。
「お前の目標は分かっている。俺も同じだ」
それは口先だけではなかった。
イェッソもまた、自らのラグジュアリーブランドを立ち上げようとしていた。
海を見下ろす崖の上で、彼はベンに関する記事を静かに読んでいた。
満足げな笑みが浮かぶ。
「復讐の時だ」
新聞をわずかに強く握る。
「フットボールではお前に負けたかもしれない……だがラグジュアリーの世界では違う」
視線を水平線へ向ける。
「待っているぞ、ベン・カイジェン」
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**授業開始**
その頃、私立病院では残りのメンバーが到着していた。
皆が教室に座っている。
グレイが周囲を信じられないといった様子で見回した。
「なんでだ! なんで教室なんだよ!?」
頭を抱える。
「もう学校に通う歳じゃないだろ!!」
ウェンが大笑いした。
「勉強になるさ。文句言うな!」
グレイがすぐに振り返る。
「もう一度言ってみろ!」
空気は和やかだった。
友人たちは冗談を交わし、笑い、再び集えた喜びを味わっていた。
そしてドアが開く。
「おはよう、チーム! 来てくれてありがとう」
皆が振り返る。
キムが入ってきた。
だが、一人ではなかった。
三人の人物が同行していた。
オヤヴェール、ポーラ、クリス。
三人とも、キムがまだフットボールチームのコーチだった頃に一緒に働いていた。
かつてはラグジュアリーハウス「リセス」に所属し、今は解散している。
グループは啞然とした。
「オヤヴェール! ポーラ! クリス!」
オヤヴェールが誇らしげに親指を立てる。
「ああ、そうだ! 俺たちだ!」
かつての教え子たちと再会できて、明らかに嬉しそうだった。
しかし、視線がリスツールとウェンに止まると表情が変わる。
「リスツール……ウェン……」
目を細める。
「タバコの臭いがするな!!!」
二人は顔を見合わせた。
オヤヴェールが厳しい顔になる。
「スポーツをするときは吸わない!」
リスツールが肩をすくめる。
「もうやってないんだから、再開してもいいだろ!」
ウェンがうなずく。
「吸うのも俺たちの生活の一部だ」
オヤヴェールが目を見開く。
「この生意気なガキどもが!!」
ローラの方を向く。
「ローラ! お前が二人を——」
言葉が途切れた。
ローラは窓際にのんびりと座り、
タバコを吸っていた。
灰皿がそばに置いてある。
オヤヴェールが固まる。
「お前も吸うのか!?」
ローラはただ肩をすくめた。
「私は彼らの母親じゃないし」
グレイ、ヴァロン、マックス、キズが、リスツールとウェンが叱られる様子を見て大笑いした。
だがリスツールは黙っていなかった。
すぐに四人の少年を指差す。
「オヤヴェール! この四人は勝利の後、五十本以上吸おうとしてたぞ!」
「何だと!?」
マックスたちが一斉に弁解する。
「試合の後だったんだ!」
「関係ないだろ!」
ポーラが口を挟む。
「試合の後でも前でも同じよ!」
腰に手を当てる。
「残念ながら決勝には立ち会えなかったのに、こんなことをして!」
クリスが拳を握りしめた。
「お仕置きが必要だな!」
グループに向かって突進する。
「うわあああ!」
たちまち教室は大騒動になった。
だが、本気の喧嘩ではない。
叫びと笑い声が混じり合い、皆がじゃれ合っている。
メイが大笑いした。
「これ、懐かしい」
ミナを見る。
「ミナもそうでしょ?」
ミナはもう笑っていなかった。
視線がキムに止まっていたからだ。
コーチの表情が完全に変わっていた。
目が大きく見開かれ、
視線は黒い。
「煙は禁止……」
全員が固まる。
キムが声を張った。
「そして何より、病院で喧嘩は禁止!!」
沈黙。
数秒のうちに、全員が席に戻った。
メイとミナが目を見合わせる。
冗談は終わりだ。
仕事の時間だ。
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**ラグジュアリーの世界の基礎**
オヤヴェール、ポーラ、クリスがグループの前に立った。
オヤヴェールが口を開く。
「まずは、優勝おめでとう」
かつての選手たちを見渡す。
「よくやった」
そして表情を引き締める。
「今日から、俺たちがよく知る世界に足を踏み入れる」
一拍置く。
「だが一つ覚えておけ。この世界は、今まで味わった何よりも容赦ない」
ポーラが言葉を継ぐ。
「簡単なアドバイスをするわ」
微笑む。
「あなたたちならすぐに飲み込むはず。大丈夫よ」
クリスがうなずく。
「集中して聞けば問題ない」
一人ひとりを見る。
「俺たちは君たちを信じてる!」
グループが姿勢を正した。
「やるぞ!!」
こうして彼らの学びが始まった。
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**ヨーク・ドロ**
その頃、ヨーク・ドロではベン、レイ、マジー、ジョプリが目的地へ向かって道を進んでいた。
ジョプリがスマートフォンを手にしていた。
ちょうど、ベンと両親に関する記事を見つけたところだった。
「あいつらがいたのに全然気づかなかったな」と彼は言う。
レイが画面を見る。
「潰しに行った方がいいかもな」
ベンが目を白黒させる。
「きっと俺のインタビューを狙うだろうし、俺の周りの人間にも接触してくるだろう」
ジョプリが彼の方を向く。
「お前はどうする?」
ベンはまったく動じない。
「大丈夫だ」
わずかに微笑む。
「話題になるのはむしろいい。バズが上がる」
両手をポケットに入れる。
「インタビューを求められたら、受けるかもしれない」
そして視線を水平線へ向ける。
「だが、すべては時が来てからだ」
四人は歩き続けた。
やがて目的地に到着する。
巨大な荒れ果てた建物が眼前に立ちはだかっていた。
というより……
その残骸が。
かつてのラグジュアリーハウス、カナチ。
かつてラグジュアリーの世界に属し、レイとジョプリの父親たちが経営していた。
今では建物はほぼ完全に破壊され、
かつての由緒あるブティックのわずかな断片だけが残っていた。
レイが立ち止まる。
「着いた」
ジョプリが廃墟を見つめる。
懐かしげな笑みが浮かぶ。
「本当に変な感じだ……」
深く息を吸う。
「でも、このブティックを再建できるのは嬉しい」
マジーが好奇心を持って場所を見回す。
「これがカナチなの?」
廃墟を観察する。
「服を専門にしていたかつてのラグジュアリーハウス……それにドラッグの販売にも関わっていた?」
レイがうなずく。
「ああ」
ジョプリが大笑いした。
「ずいぶん昔の話だな!」
ベンが面白そうに二人を見る。
「お前たちが俺の命を狙っていた頃の話だ」
マジーが急に振り返る。
「本当!?」
目を細め、興味津々だ。
「ところで、どうやって出会ったのか、一度も話してくれなかったよね」
ベンが口を開く。
「まあ、長い話なんだが……」
しかし続ける前に、レイとジョプリが遮った。
「知りたいのか、マジー? じゃあ——」
「待て、ベン!」
ジョプリが肩を軽く叩く。
「今じゃない。みんなが揃ったときに話そう。あははは!」
レイがうなずく。
「そうだな。長くなりそうだし」
マジーが疑わしい目で二人を見る。
「はいはい……そうね……」
結局うなずく。
「とにかく、始めよう」
ベンがリュックを下ろす。
中からノートを取り出した。
何ページかめくり、友人たちの前に置く。
「ブティックをこんな感じにしたいと思って、いくつかスケッチした」
ノートを開く。
「外観も内装も」
ベンがレイ、ジョプリ、マジーを見る。
「意見を聞かせてくれるか?」
ジョプリがすぐに身を乗り出す。
「それ……見せろよ!」
ベンが微笑む。
ページをめくった。
ルルヴィ計画が、正式に始まった。
続く……




