第5章:フットボール戦士
対峙が始まろうとしていた。
ベン・カイジェン対彼の父、カモティ・カイジェン。
周囲の木々が、二人の闘士から放たれる圧力に揺れ始める。
地面がわずかに震える。
ベンは集中を保っていた。
視線を父から離さない。
彼は最後まで戦い抜く決意を固めていた。
一方、カモティは完全にリラックスしたままだった。
まるでこの戦いが、まだ真の脅威ではないかのように。
彼はわずかな笑みを浮かべて息子を観察する。
「その眼差しが気に入った。やる気と決意が感じられる。私が助けてやろう……」
カモティはエネルギーを伸ばした。
「レム!」
巨大な結界がベンとカモティの周囲に形成される。
ベンは驚いて周囲を見渡した。
「何をするんだ?」
「この結界を張った。これで誰も我々のレムを感知できなくなる。誰も……母さんさえも、我々が戦っていることを感じ取れない」
カモティは戦闘態勢を取った。
「さあ、来い、息子よ!」
ベンは彼の意図を理解した。
「なるほど……ありがとう。誰にも知られずに、お前を倒してみせる!」
二人は戦闘姿勢を取った。
圧力が著しく高まる。
少し離れた高台の岩場から、ジョプリとレイがその光景を見守っていた。
二人とも友人の身を案じて緊張している。
ジョプリはレイに向き直った。
「自信あるか、レイ?」
レイは視線をベンとカモティに固定したまま答える。
「全くない。衝動で挑んだんじゃないだろうな。相手は恐らく世界最強の男だぞ」
突然、背後から女性の声が響いた。
馴染みのある声だ。
「相変わらず分析が的確ね、レイ。一緒に仕事ができればいいんだけど」
レイは凍りついた。
信じられない。
ゆっくりと振り返る。
全く予想していなかった人物が立っていた。
ララ。
疎遠になっている彼の姉だ。
しかし彼女は一人ではなかった。
隣には恋人のビネルシー……
そしてジョプリの元恋人、ユリアがいた。関係が最悪の形で終わった相手だ。
レイとジョプリにとって衝撃は即座だった。
最悪の敵たちが現れたのだ。
しかも三人ともフィッシアーノの一員である。
「ララ……ビネルシー……」
ジョプリは続いてユリアを見つめた。
「ユリア……」
彼女の視線は怒りに満ちている。
ジョプリが他の女性と浮気した件で、今も深い恨みを抱いているのだ。
声は氷のように冷たかった。
「黙れ。まだ生きてるの? 私が自分の手で殺してやる」
ジョプリは彼女の反応に驚かなかった。
「まだ相当恨んでるみたいだな」
レイは姉に向き直った。
「ララ、何しに来たんだ?」
ララは微笑みを浮かべて答える。
「休暇から戻ってきたの。近くで用事があって来たら、何と? ボスのカモティが息子にボコボコにされるところじゃない! アハハ!」
ララの嘲るような笑い声が、すぐにレイとジョプリを怒らせた。
ベンへのいかなる嘲りも許せない。
「黙れ! ベンを過小評価するなよ、分かったか、ララ?」
ビネルシーがレイの前に立ちはだかる。
二人は長年のライバル関係にあり、会うたびに争いを起こす。
「俺の妻を侮辱するな、生意気な小僧が」
レイは一歩も引かない。
「お前には関係ない、手先め」
ビネルシーは微笑む。
「相変わらず生意気だな、レイ。完璧だ。ボスがベンを潰した後、俺がお前を相手してやる」
レイは拳を握りしめた。
「何を待ってる? 今すぐ決着をつけようぜ」
ジョプリはレイをよく知っている。
彼が本気で戦闘を仕掛ける可能性を十分理解していた。
だが今はその時ではない。
優先すべきはベンだ。
彼は友人に向き直った。
「レイ、抑えろ。今はその時じゃない。ベンを支えなきゃ」
ララも介入した。
「やめなさい、二人とも。私は戦闘を認めないわ。私たちは家族よ」
レイは怒りを飲み込み、再びベンとカモティの方を向いた。
「分かった」
そして視線を戦いに固定する。
「レム!!」
ベンはレムを発動し、父に向かって突進した。
最初の一撃はパンチだ。
カモティは肘でそれを受け止める。
ドォォン!
衝撃で地面が揺れた。
しかしベンは相手に一瞬の隙も与えてはならないと分かっていた。
即座にパンチを連打する。
カモティは容易にそれらを受け流す。
そして今度は彼が攻撃に転じた。
膝がベンの腹を打ち抜く。
「ガァァッ!」
ベンが痛みに叫ぶ。
カモティは止まらない。
膝蹴りに続いて頭へのキックを繰り出す。
ベンは後方へ吹き飛ばされた。
だが倒れはしなかった。
地面に着地し、すぐに父へ向かって跳びかかる。
その瞬間、カモティはベンの視界から消えた。
次の瞬間、彼は背後に現れる。
バァン!
後頭部への一撃。
今度こそベンは倒れた。
カモティは息子を見下ろす。
「これだけか、ベン? サッカーのせいで訓練を怠ったな」
レベルの差は歴然としていた。
ジョプリとレイも、深い失望とともにそれを認めた。
一方、ララ、ビネルシー、ユリアは状況を見て喜んでいた。
ジョプリは友人を心配そうに見つめる。
「お前の言う通りだ、レイ。レベルの差が大きすぎる。介入しないと約束したけど、これじゃ……」
レイは答えなかった。
戦いに見入ったまま固まっている。
表情がすべてを物語っていた。
二人のうち最も心配しているのは彼だ。
彼にはきっと計画があるはずだ……今の結果がどうであれ、ベンは……
カモティは息子に容赦しなかった。
「レムの威力と最初の一撃だけで、お前が太刀打ちできないのが分かった」
視線を厳しくする。
「今のお前では何かを要求する立場にない。フィッシアーノにいる資格もない!」
ベンはゆっくりと起き上がった。
口元の血を拭う。
だがこの状況にもかかわらず……
彼は微笑んだ。
切り札を使う覚悟ができたのだ。
「その通りだ。今のおれは失格だ」
ベンは目を上げて父を見つめる。
「だが、サッカーのせいで緩んだと思ってるなら……それは違う」
拳を握りしめる。
「サッカーのおかげで、おれはより強くなった!」
エネルギーが体から放たれ始める。
地面が震える。
足元に小さな亀裂が走る。
ジョプリが目を見開いた。
「何をするつもりだ!?」
ベンは叫びを上げた。
「フットボール戦士!!」
体から放たれるオーラがますます強くなる。
徐々に体に模様が浮かび上がる。
草の模様と、サッカー場のタッチラインのような白い線が顔に描かれる。
オーラが緑色に変わる。
目も同様に。
これがベンの秘密の奥義だ。
彼が自らの力を確信できるもの。
レイは驚きをもってその変化を見つめた。
「信じられない! いつからこんな変身をマスターしたんだ!?」
そして見たものを分析し始める。
「肉体と精神のレムで、現在の自分と反対の存在になれる。それに他のレムが伴う」
彼は続ける。
「構築のレム。攻撃を想像し、無から物を作り出すもの……この三つを同時にマスターするのは難しいが、彼はそれを確信を持ってやっている」
ララも感心した様子だ。
「わぁ……なかなかやるわね」
ビネルシーもベンを見た。
「そんな力があるとは知らなかった」
一方、カモティは余裕を保ったままだ。
「分かった。力は増したな。だが何も変わらない。動きを見せてみろ」
ベンは再び姿勢を整える。
「よし」
彼は走り始めた。
しかしその走り方は独特だった。
ボールをドリブルするサッカー選手そのものの動きだ。
ゆっくりと始め、
徐々に加速し、
ゆっくり……
中くらい……
そして非常に速く加速する。
数秒でベンはカモティに到達した。
キックを放とうとする。
カモティはかわす。
しかし何かが彼を乱していた。
ベンの速度だ。
若者はすでに父の動きを予測していた。
カモティが背後に回ることを知っている。
ベンは草に覆われたレムの球を放つ。
カモティはそれを手のひらで破壊する。
だが掌を見ると……
わずかな擦り傷がついていた。
カモティは微笑む。
「悪くない……悪くないぞ」
ベンは決意の笑みを浮かべた。
「まだ何も見せてない。言ったろ……おれがお前を倒す!!」
再び攻撃に転じる。
「電光ステップオーバー!」
ベンは再びドリブルの走り方で駆け出す。
カモティの前に到達し、ステップオーバーの動作を真似る。
ステップオーバーとは、素早く足をボールの周りに回して方向転換をフェイントする技術だ。
ベンはカモティの前でそれを使い、左へ方向を変える。
しかしあまりに速く、すぐに元の位置に戻った。
父の正面に戻り……
腹に拳を叩き込む。
今度はカモティはかわせなかった。
受け止めもできなかった。
ドォォン!
「当たった!!」
レイとジョプリが即座に喜ぶ。
カモティは後方へ吹き飛ばされた。
だがベンは止まらない。
今度はシュートの動作を真似る。
レムの球が足から放たれる。
ベンは父を見据える。
「これで勝った!!」
彼は蹴った。
攻撃が一直線にカモティへ向かう。
衝撃の威力は、戦闘開始時に張られた結界を破壊するほどだった。
ベンは勝ったと思った。
だが同時に、その結果を忘れていた。
結界を壊したことで、レムが感知可能になってしまったのだ。
今や誰もがそれを感じ取れる。
メイ、マギー、ミナ、マックス、ヴァロン、リスター、ウェン、グレイ、キズ……
友人たち全員が、解き放たれたベンのレムの力を感じ取った。
だがそれだけではない。
メリ……
ベンの母もまた、何が起きているかを理解した。
表情が変わる。
激しい怒りに満ちる。
メリは椅子から勢いよく立ち上がり、事務所の窓を開けた。
「ベンとカモティが戦っているのを感じる……」
信じられない様子だ。
「冗談でしょ!?」
メリはリソナに向き直る。
「リソナ、少し席を外すわ!」
それ以上待たず、メリは窓から飛び出し、戦闘地点へ向かった。
⸻
戦闘の場では、煙が岩を包んでいる。
ベンは息を切らしていた。
その攻撃にすべてを注ぎ込んだのだ。
ジョプリとレイは、戦いが終わったと確信していた。
「よくやった、ベン! あの攻撃の後で意識を失ってないわけがない!」
「勝利だ!!」
彼らは歓声を上げる。
だがララがすぐに現実を突きつけた。
「相手が誰か忘れてるの?」
煙を見つめる。
「カモティ・カイジェンよ。世界最強の男。誰も彼を倒せないし、意識を失わせることなんてできない」
煙が晴れ始める。
人影が現れる。
徐々に……
カモティの姿がはっきりした。
彼はまだ立っていた。
無傷に近い。
わずかな擦り傷と、わずかに破れたジャケット以外は。
ベンは固まった。
カモティは息子を見つめる。
「よくやったな、息子よ。さっき言ったことは謝る」
ベンは目を疑った。
「ありえない……」
カモティを見る。
「ありえない! 何ともないだと!?」
顔に驚愕が浮かぶ。
ベンはその攻撃にすべてを賭けていた。
そして今、息も絶え絶えだ。
カモティが歩み寄る。
「ベン……」
視線が変わる。
「お前には、宇宙を征服する男の力を少し見せてやる価値がある!」
黒と白のオーラがカモティを包み始める。
ベンは即座に理解した。
父が本気を出すつもりだ。
ベンはどうやって切り抜けるのか?
続く




